B級生のためのサーマルソアリング



 ソロフライトするようになってしばらく経ち、少しは操縦にも慣れてきた頃、サーマルに乗って上昇することが目標の一つになると思います。先輩パイロットが頭上を飛んでいるのを見ながら、自分もあの高さに行ってみたいと憧れ、挑戦するのは当然の成り行きです。

 が、いざ自分が飛んでいるときにサーマルらしきものを感じたからと旋回してみても、なかなかその上昇が続かず、1周か2周回しただけでランディングしてしまいがちです。
 ここはそんなサーマル初級者のために、初級者に少し毛が生えた程度の私がアドバイスしてみるという、無謀というか僭越なコーナーです。従って内容が間違っている可能性がありますし、ていうか間違ってる可能性が大きいし、私の上達につれて内容が変わるかもしれません。いや上達しない可能性の方が高いかも?…
 以上をご了承のうえご覧ください。あくまで初級者限定ということで、役に立つかはともかくとして、何かヒントを掴んでいただければ幸いです。


その1:道具に頼るべし

 まずは機体です。もし今乗っているのが10年近く使い続けているボロ中古機だったりすると、性能が悪すぎてソアリングには向いていない可能性が考えられます。 高高度フライトの経験本数が十分なら、この機会に機体を新調しても良いかもしれません。どういった機体が良いか等については私はコメントできる立場にないので、イントラに相談してみてください。

 次に頼るのはバリオです。持ってない人はこの機会に買ってしまいましょう。人間の感覚では意外と上昇・下降は分かりづらいからです。バリオはメーカーによって音の鳴り方に違いがありますので、慎重な人は先輩方のバリオを借りて、気に入った音の出方をするメーカーのバリオを買うのも良いでしょう。
 バリオなしでソアリングするのは感覚を磨く練習になるかもしれませんが、その練習はソアリング経験を十分積んでからのステップアップ用にとっておきましょう。まずは機械の力でも何でも借りて、ソアリング確率を上げ、経験を積んでゆくのが先決です。
 さらに対気速度計とGPSを装備すれば上空の風向・風速まで分かって便利ですが、初級者にはGPSなど見てる余裕はないので、無くても構いません。が、家に帰ってGPSログの解析をして復習・反省できるようなマメな人なら、ぜひ使ってみることをお勧めします。


その2:旋回を鍛えよ

 例えば速度をつけた急旋回をした後に直線飛行に戻ると、機体は浮き上がりバリオの上昇音が鳴ります。俗に言うスティックサーマル(飛行機等で急に操縦桿[スティック]を引き起こした時に一時的に上昇する状態)というもので、自身の飛行速度を高度に変換しているだけなので、当然サーマルとは違います。自分の雑な操作で生じた上昇をサーマルと勘違いしてセンタリングを始めてしまっては、さらにその操作が上昇・下降を生み出し、状況は悪化するばかりです。

 これを防ぐためには、スピードをだいたい一定にして飛ぶ必要があります。具体的には、あまり雑な動き(過度な速度変化やハイバンク)をしないで旋回できるように何度も繰り返し反復練習するのが大事です。女性は最初からスムーズな旋回ができる方が多いようですが、私のような、まあそれほど若くもなく運動神経が良いとは言えない男性は、雑で無駄な体重移動をする傾向があるようです。
 それと同時に、スティックサーマルに惑わされてセンタリングを始めない状況判断力を身につけることも肝要です。


その3:サーマルの形状をイメージせよ

 サーマルの形や大きさはその度に違います。あなたが出会ったサーマルがAのような形状だったとしたら、バリオ音の変化や機体姿勢の変化からより強い上昇があると思った方向に旋回をずらしてゆきます。特に難しく考える必要はなく、1周回してみて最も強い上昇を感じた方向へ旋回の中心をずらして「センタリング」してゆくだけです。 全周にわたってバリオが鳴り続けるよう、より強い上昇を感じる側に間延びさせてゆくようにしてゆきます

 でももし、そのサーマルがBのような形状だったら...何回か回しても上昇が連続しない場合、このようなサーマルなんだと諦めて、早めに別のサーマルを探しましょう。


その4:上空の風向きを意識せよ

 これ、結構重要なことです。上昇を感じて360度旋回を始めてみても、何回か回っているうちに外してしまい、サーマルがどこにあるかわからなくなってしまう原因の多くが、機体が風に流されることを計算に入れてない点にあると思います。

 まずは、いま自分が飛んでいる場所の大まかな風向きとその強さを常に把握することが必要です。これはテイクオフする前に周囲のパイロットに聞いてもいいですし、偏流の角度や旋回時の機体の流され具合である程度判断できるはずです。そしてその風に流されないような旋回をするのです。

 ここで左の簡略図を見てください。地表を離れた暖かい空気塊は風に流されながら上昇してゆきます。このとき上昇気流の速度を5m/s、水平方向に流される速度を3m/sとします。
 次に、あなたは高度Aの場所でこのサーマルの中に入って、旋回を始めたとします。バンクをつけて回っている機体の沈下率を2m/sとすれば、機体は差し引き3m/sの速度で上昇していきます。同時に水平方向に3m/sで流されていきます。

 そしてこのまま旋回を続けていくと... 高度Bに達する前に、サーマルの風下側に大きく外してしまうことがわかります。これは何故かというと、機体とサーマルの上昇速度が違うため、流され具合に差がついてしまうからです。この傾向は上昇気流が弱いほど顕著になります。

 この風下側に外してしまうことを防ぐ対策はただ一つ。旋回中に風上側に向かう時、旋回を間延びさせて風上側に行くようにすればいいのです。風の強さやサーマルの大きさによって変わりますが、時にはしばらく直線飛行を入れる感じになることもあります。バリオが鳴ってるうちは大丈夫です。
 そして風下側へ向かうときは少し多めにバンクをつけ、流されないうちにすぐに180°向きを変えて再び風上側に向くようにします。風が強い時は、風下に向き出したらベースバーを押し出して一気に回してしまいましょう。(あるいは風下側に流されるのを計算して、予め十分風上に出てから風下側への旋回を始めるようにしてもよい) そして風上に向かいながらバンクを緩め、高度を稼ぐ。この繰り返しです。

 要するに、サーマルで回すときは最初から真円を描こうとするのではなく、風上に間延びさせた楕円をイメージしながら回すというわけです。このように、上空でも常に風向きを意識するのが大切です。

(なお図ではサーマルはそのまま場の風に流されていますが、上空や平地のサーマルでは、それほど流されずに真っ直ぐ立ち上がっている感じのときもあります。またその形状も柱状ではなく曲がっていたり太さが変わったり所々切れていたりする感じで、よくわからないことも多いです。そもそもサーマル内部でも空気がグルグル攪拌されているし場所によって上昇率も違います。従ってこの図はあくまで簡略なイメージだと捉えてください。)




ページ最終更新:2010/9

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