初めてハンググライダーの機体を持ったとき、なんて重いのだろうかと思うかもしれません。こんなものを持ち運び、そしてこれを持って走れるのかと。しかし何事も経験で、同じ重さでも扱いに慣れてくると随分と軽く感じるようになります。 次に、平地または平地に近い斜面で機体を持って走る、グランドハンドリング(略してグラハン)の練習に入ります。風に正対させ揚力の生じた機体は急に軽くなり、すこし走るだけで体を上へと持ち上げようとします。 でも順調だと思ったのも束の間で、ゆっくりと傾き出した機体は必死の操作にもかかわらず傾きを増し、走る経路が右または左へと大きく逸れてしまいます。自分の意思に反して言うことを聞いてくれない機体に向かって何故だと叫んでも、答えは返ってきません。 しかしこれも経験を重ねてテクニックを習得すれば、だんだん上手に、楽に、無意識にできるようになります。では最初に習うこのグラハンについて、私が苦労したこと、気付いたことを書いてみます。 |
|
![]() ![]() |
1.構えかた○手順
2.動き出して、次第に加速○手順
|
![]() ![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() |
3〜4.順手への持ち替え○手順
|
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
|
5〜9.機体の水平維持○手順
|
|
| |
![]() |
10.飛び出し準備○手順
|
| |
![]() |
11.飛び出し○手順
|
| |
![]() |
12.フレアー○手順
|
○修正操作について平地でのグランドハンドリングで何が難しいかといえば、翼を水平に保ち、目標に向かって真っ直ぐ走ることだと思います。なぜそれが難しいのか。原因は主に二つあると思います。
従って、そうなる前の、まだ傾きが少ない段階でそれを察知することが必要不可欠です。その段階でなら、修正操作も簡単です。しかしその理屈は分かっていても、私の場合、傾きを早期に感じるのが難しかったです。
視線はあくまで正面を向いたまま傾きを早期に察知するにはどうすればよいか。それは、コントロールバーから伝わる感触から「感じる」しかありません。でも感じると言っても、具体的にどうすれば出来るようになるのか。
この左右に振る動作は、チョキの持ち方で走り出すときから始めます。最初の一歩目から、さあどっちだ、どっちかなーと、ソロリソロリと四股を踏むような左右の動きを入れながら探るのです。特に最初が肝心で、大きく傾くときは、スタート時からすでに傾いていることが多いからです。 なお、カラビナを繋げずにグラハンすると機体がどんどん上へと上がってゆきますが、この感触を体で覚えておくのも大切です。なぜなら、ハンググライダーの事故で最も恐ろしい”フックアウト”を早期に察知する訓練になるのでは、と思っているからです。(もちろんフックアウト自体を未然に防ぐのが一番大切ですが、万一の事態でも、早期に気付いて手を離せれば最悪の結果を防げるかもしれませんので)
しかし操縦桿やハンドルなら腕を動かせば良いだけですが、ハングの場合は体全体を使った体重移動が必要で、これが思ったよりも難しいのです。本人は左に体重移動しているつもりでも、傍から見れば体を捩って頭を寄せただけの姿勢になっていて、全然体重移動していないということがよくあります。人間の体の重心は腰(または尻)にありますから、腰の位置をいかに左右にずらしてやるかがポイントです。スキーでストックを突くような、または杖を突くような腰を曲げた姿勢ではダメで、頭から足まで一本の軸線を通したまま、腰を移動させてやります。 |
![]() ![]() |
A.走るレールを乗り替える
グラハンは予め定めた方向へ一直線に走ってゆくわけですが、これを一本のレールに見立て、一本隣のレールに乗り替えるイメージで体重移動をする方法です。
注意すべき点は、上体(頭、肩)を左に傾けないこと。上がっている側に体重移動しようとすると、どうしても上体を傾けて体重移動したつもりになってしまいがちです。体を捩らず・傾けず、上体は地面に対して垂直を保ち、腰の位置を変えるのが大切です。 |
| |
![]() ![]() |
B.体はそのままで、アップライトのみを左右に動かす
体全体を目標に向けてまっすぐ走らせたまま一切の修正操作は行わず、代わりに腕でアップライトを左右に動かし、コントロールバーの三角の中において、自分の場所を左右に変えてやります。自分が動くのではなく、アップライトのほうを動かすイメージです。(翼はすぐ動かないので、実際は自分が移動していることになるのでしょうけど)
注意すべき点は、常に上体をアップライトよりも前に出しておくこと。左右の修正に気をとられると、体が遅れがち(アップライトより上体が前に出なくなる)になります。すると余計に左右の修正操作が効かなくなるので気をつけてください。 |
A,Bいずれの方式とも、修正を中途半端で終わらせないことも大切です。単に傾きを直せばよいのではなく、変化した風に合わせた、新しいバランスを作ってやる。あるいは、翼をとられる前にそれを予測し、新しい風の条件でのバランスを先に確立してやる、くらいの気持ちで臨みましょう。
なお、一連のハンググライダーの左右方向の修正操作は、パラグライダーとは逆になります。パラグライダーの場合、傾いて低くなった方に足を進めれば、振り子の揺り戻しのように傾きは直りますが、ハンググライダーはますます傾くだけ。傾きを直すためには、パラとは逆方向に体を動かしていかなければなりません。パラグライダー出身者にとっては、まずこれが戸惑う一因です。 |
ページ最終更新:2010/9
もどる