「平和問題ゼミナール」
旧ユーゴ便り
Masahiko Otsuka Presents
-since 1998-
(Since 98/05/31)
   
最終更新 2008/06/30

第93回配信
第1回配信を発表してから10年が経ちました。これからもよろしくお願いします!野球やろうぜ!    2008年6月中旬


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一回裏ベオグラード96、一死三塁から五番ヴチェヴィッチが右越えの二塁打、三点目が入った(5月3日、ベオグラード市アダ・フィールド)
    いつもは日本から遠く離れた旧ユーゴ圏の、結構マニアックな話題で読者の皆さんを煙に巻いている(?)「便り」ですが、今回は日本の皆さんのほうが旧ユーゴ圏の大半の人よりお詳しい話題です。国内リーグで他チームを圧倒する戦いぶりを見せるセルビア最強クラブ、ベオグラード96が、格上と目されるクロアチアほかのチームと戦う地域国際リーグが始まりました。5月3日、その開幕戦がベオグラードで行われると聞いて、見に行ってみることにしました。何の話ですって?筆者が生まれ育った国の(事実上の)国技、野球ですよ!

    ベオグラード96は、その名の通り96年創設、昨年まで国内リーグ5連覇中です。今年も4月には昨年2位のドッグズを23対3、27対4と粉砕。同4位のヴォイヴォデ・ベオグラードには6対2、21対1と連勝していますから、秋の順位決定プレーオフで6連覇を決めることが確実視されています。
    今年の目標はセルビア初の地域国際リーグ優勝です。残念ながらザイチュキ・リュブリャーナ(スロヴェニア)が財政難を理由に今年の同リーグ参加を辞退、ブルガリアの各クラブも参加を見送りましたが、セルビアからヴォイヴォデが初参加。ハンガリー2、クロアチア4、セルビア2の計8チームで6月中旬までの毎週末に行われることになりました(クラブの財政事情などを考慮してホームアンドアウェー方式は取らず、週末の二日間同一カードを一つの会場で行いますが、本拠地試合ばかりにならないようバランスが配慮されています。入場無料)。この春のリーグ戦で4位以内に入れば、1位通過のチームの本拠地で9月上旬に行われる最終順位決定戦ファイナル4に出場する権利を得られます。  
    ベオグラード96の緒戦、第二戦での相手は、遠路クロアチアのスプリットからマイクロバスでベオグラードに乗り込んだナーダ・スプリット・シップマネージメント(以下、ナーダSSM)。近隣国最強のクロアチアリーグで、元読売の門奈哲寛投手(92年ドラフトで松井秀喜に続く2位指名〜99年まで読売に在籍。現福岡ソフトバンク打撃投手)を擁し05年に優勝。06年以降は3位、4位と低迷していますが、昨年優勝のオリンピヤ・カルロヴァッツからイギリス代表の右腕G・タング投手が移籍し復活を狙っています。

    国内随一の野球場アダ・フィールドはベオグラード市中心部からも遠くないアダ・ツィガンリヤ公園にあります。
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ベオグラード96二回裏無死、クームズが二盗成功し追加点のチャンスをつかむ
もっとも、旧ユーゴ圏では超マイナースポーツですから、セルビア随一と言っても球場に関して過大な期待は禁物。ネット裏と一塁ベンチ後ろの観客席が満員になって100人というところでしょうか。今回の試合の観客は、セルビア野球連盟やベオグラード96、ドッグズ関係者などを中心に20名ほど。ヴォイヴォデ・ベオグラードと第二試合で戦うザグレブのメンバーが試合途中から一塁ベンチ裏観客席を占領し、ユニフォームに着替えるのに使う、という実にのどかな雰囲気です。公式記録員はセルビア北部ノヴィサド市のクラブの青年が当番でした。スコアボードはありませんから、「今5対3だっけ?」「いや6対2だよ!」と観客と記録員が大声でやり取り。それを審判も耳にしながら確認する、といった感じです。三塁ベンチのすぐ後方はミニゴルフのコースになっています。雑草とやぶ蚊をかき分けて、座席のない三塁ベンチ裏まで行ってカメラを構えても誰にも咎められませんが、ゴルフボールに注意しないといけません。球場の柵を高く飛び越すファールが上がると、客の何人かがゴルフ場やサイクリングコースに向かって「気を付けろー!」と声を掛けます。残念ながらイレギュラーバウンドが多く、また時折強風が吹いたこともあって、実際の両軍守備力よりも失策数が多い試合となりました。  
    というわけで、グラウンドとその周辺だけを観察していると、失礼ながらいかにも草野球という感ですが、野球そのものは決して低レベルではありません。バットはシンに当たらないと飛ばない木製。三塁コーチから打者に対して詳細なブロックサイン。捕手は内野ゴロの際は一塁カバーに走ります。
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ナーダSSM三回表二死二塁、ベレツカが左前安打し一点を返す
全体としては日本の大学下位レベルより上、速い投球や打球に慣れればベオグラード96、ナーダSSMとも大学中位レベルとそこそこの試合をしそうだというのが筆者の印象でした。

    一回裏、ベオグラード96はナーダSSM先発タングの立ち上がりを突いて無死一、二塁から三番クコレチャ弟が中前安打で先制。アランジェロヴィッチの内野ゴロで追加点、さらにヴチェヴィッチが右越えの大二塁打を放って早くも3点を先行しました。二回には安打で出塁の指名打者クームズが二盗。一死三塁となった後、打者パンテリッチは三振しましたが振り逃げを狙い、捕手と一塁手の緩慢なプレーの間にクームズが生還。三回裏は主砲アランジェロヴィッチの右柵越えの一発で5対1とリードを拡げました。  
    ベオグラード96の先発はドミニカ共和国出身で米3Aにも在籍経験のある主戦モレノですが、毎回走者を負う苦しいピッチングで、筆者が見ていても「打ちごろ」の球なのが分かりました。ナーダSSMは三回に三番ベレツカの左前安打、五回にもシュプラハの二塁打で1点ずつを返し、六回には一死満塁のチャンスを迎えます。
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試合終了後は両軍ハイタッチの交換
ベオグラード96はモレノをあきらめ、指名打者だったクームズが登板(野球好きの筆者も指名打者が投手に入るというのは初めてのケースだったので、後日確認しましたが公認野球規則六・一〇に基づき可能です)。このピンチを1点に食い止めました。  
    後半は立ち直ったナーダSSMのタング(後日筆者が撮影した写真で見るとツーシームを多投していました)をベオグラード96が打ちあぐみ、6対4までじりじりと追い上げられました。ベオグラード96側から見ればイヤな展開でしたが、八回裏失策で出塁したクームズをクコレチャ兄が確実に送り、内野ゴロで二死三塁、打者イフコヴィッチの時タングが暴投(公式記録は捕逸)。待望の追加点が入り7対4となりました。ここまでは三回を除き、表裏の攻撃でどちらかのチームが得点するというカーリングのようなスコアでした。最終回ナーダSSMは先頭のベレツカが右前安打、次は四番のダボという反撃機でしたが二塁ゴロ併殺打となり、続くタングも三振でゲームセット。ベオグラード96が逃げ切り、地域国際リーグで幸先のいいスタートを切りました。  
    試合終了後は写真のように両軍ハイタッチの交換。まだサッカーやバスケットでは考えにくい、マイナースポーツならではの光景ですが、それでもセルビアとクロアチアが敵国どうしだった90年代が遠くなりつつあることを実感しました。

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    筆者も存在すらほとんど知らなかったセルビア野球ですが、上記の試合がなかなか面白かったので、練習を見学させて頂くことにしました。試合翌日の月曜こそ自主参加での基礎トレーニングですが、水曜、木曜は実戦形式も含めた真剣な練習が夕方の3時間程度を使って行われます。打撃練習はペッパーが2面。並行して内野陣を中心にノックがじっくり続けられていました。
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ドミニカ共和国出身モレノ投手は90年代後半3Aロチェスター(ボルティモア傘下=当時)などに在籍した実力派
最後は主戦モレノがマウンドに上がり、けん制と一二塁間挟撃の練習です。  
    このクラブの生みの親、前監督(現在は監督をゾニッチ捕手に譲っていますが、実際には集団指導制です)で現在はコーチ兼三塁手、さらにセルビア野球連盟総書記も務めるというヴチェヴィッチさんに話を聞きました。  
    「旧ユーゴ圏では米海軍が1935年に野球をスプリットで始めたのが最初でしたが、なかなか定着せず、スロヴェニアで最初のクラブが発足したのが74年。80年代前半にクロアチアのザグレブ、スプリット、ヴァラジュディンなどでもクラブが出来、セルビアではパルティザン・ベオグラードが87年に野球を始めています。ですからスロヴェニア、クロアチアがこの地域の野球をリードする力関係だったのですが、最近はスロヴェニアが停滞、クロアチアだけが五輪予選を兼ねた去年の欧州選手権でも本大会出場を果たしています(8位で北京行きならず)。  
    私はクロアチアのヴァラジュディンの生まれですが、たまたま自分の部屋から野球場が見えるようなところだったので、子どもの頃から野球に馴染んでいました。父親がユーゴ連邦軍の仕事をしていたので、91年の紛争でクロアチアに住み続けることが難しくなり、家族でセルビアに移ることになりました。紛争を巡る混乱や国連の経済制裁で、せっかく立ち上がっていたパルティザン・ベオグラードの野球は立ち消えたも同然の状態だったのですが、残ったメンバーと私が一緒に96年にベオグラード96を創設することになりました。今では若手メンバー中心の姉妹クラブ、ドッグズと併せて30人ほどの選手数になっています。セルビア全体で現在はクラブが10、競技人口約200人ですから、もっと盛んにしたい気持ちはやまやまですが、少しずつ拡大していることは確かですね。最近の私は連盟役員としてリトルリーグの振興にも力を注いでいます。  
    ゾニッチ監督兼捕手は喫茶店経営、辰巳内野手は日本の独立行政法人勤務。他のレギュラーは学生が多いですね。先日の試合で好リリーフを見せたクームズ選手は、チャチャク市(セルビア中部)を拠点に活動するアメリカ人のプロテスタント宣教師です。現在国内リーグに参加しているチャチャクのチームは、私たちの要望で彼が立ち上げました。チャチャクではアメフトチームのQBもやっていますよ。私とモレノ投手が連盟所属の、言わば『専業』です。彼とは3ヶ月単位の契約で、住居、食費とドミニカ共和国往復の航空券を支給しています。私は会費やスポンサーからの連盟収入をベースに暮らしています」。

    スペイン語は
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ナーダSSM戦九回表、ベテラン辰巳、若手のホープ・アランジェロヴィッチの二遊間コンビで4−6−3の併殺完成
昔かじったけど全然モノにならなかったなあ、と筆者がたじろいでいると、モレノ投手はきれいな英語で話しかけてきました。「広島東洋にはドミニカ共和国からたくさん選手が行っているだろう?カープアカデミーがあって国内でも有名だよ。広島からMLB(米メジャーリーグ)に行ったA・ソリアーノ(現シカゴ・カブス)は国の英雄だね」。
    チームメートみなが成長株一番手と推す主砲のアランジェロヴィッチ内野手は「バスケットをやっていたけど、偶然友人に誘われて野球に触れることになった。始めてみたら面白くてたまらない。自分に合ったスポーツを見つけられたと大いに満足しているよ。去年までは外野と二塁をやっていたが、今年から遊撃にコンバートされたので猛練習中だ。自分が成長株?コーチのおかげだよ」と笑います。

    ヴチェヴィッチさんは「今年は地域国際リーグ初優勝のチャンス」だと言います。「クロアチアの4チームはみな世代交代が進んで若くなっていますが、チーム力は少し落ちています。ウチのチームは 入れ替えが少なく、ベテラン揃いのところに若手も伸びてきていてチームワークでは最高じゃないでしょうか。
    クロアチアに大型ワゴンで遠征すれば一回1000ユーロ(約16万円)くらいは掛かります。セルビアの経済水準から言えば安くはありませんが、それで得るものの大きさを考えれば捻出を続けなければならないと思いますよ。
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「ベオグラードとキリル文字で書いてあります。似合ってますか?」と辰巳内野手
今年からヴォイヴォデ・ベオグラードも地域国際リーグに参加していますが、セルビア全体のレベルアップのためには貴重なことです。
    ボールはスロヴェニアで入手できますが、グローブ、バットなどその他の道具は、アメリカに行く機会があった人に買ってきてもらうという文字通りの『直輸入』です。スロヴェニアやイタリアでも買えますが、ヨーロッパではどこでもマイナースポーツですから高価ですし。辰巳選手にも日本に帰国した折には買ってきてもらったりしています」。

    99年からセルビアと接点を持ち、国連コソヴォ暫定行政機構(UNMIK)などを経て一昨年から日本の独立行政法人(在ベオグラード)に勤務している辰巳知行さん。大阪府立の名門、北野高校時代は捕手でしたが、ベオグラード96では遊撃、二塁などで守備の「技術移転」に努めてきました。
    「7年前にこのクラブに関わり始めた頃は、グラウンドは今よりもっとボコボコでイレギュラー続出でした。それがこの数年でかなりきれいになりましたし、アランジェロヴィッチのように、ひ弱な印象だった若手選手が成長したのを見るのは嬉しいですね。私は現役最年長(39)になってしまいましたし、そろそろ引退してもいいかなと思っています(苦笑)。
    スロヴェニアのクラブと合同練習を開催してみると、マイナースポーツの選手同士ならではの和気藹々としたムードがあるのですが、エラーをすると国民性が見えて面白かったですよ。スロヴェニア人はもっと技術を向上させたい、と謙虚な感じの選手が多いのですが、セルビア人だと頑迷に自分のミスを認めなかったり。なかなか自己流から脱却できなかったウチのクラブも、練習の成果と持ち前のパワーがうまくかみ合って、この1、2年で本当に実力を伸ばしています」。

    筆者が少年の頃は、野球はオリンピックと無縁なのが「常識」でしたが、84年ロス五輪の公開競技で日本が優勝。92年バルセロナからは五輪正式競技としてすっかりお馴染みになりました。セルビアでは北京からの野球のTV放送は見られないと思いますが、インターネットなどで筆者も星野ジャパンの戦いぶりをフォローしたいと思っています。
    05年の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、12年のロンドン五輪以降、野球は正式競技から外されてしまう決定が下されました。しかし国際野球連盟(IBAF)は、来09年秋に開かれるIOC総会で16年五輪以降の復活を目指しています。IOC側は米MLBがIBAFに加盟しておらず、プロトップクラス参加の見通しが立たないことがネックの一つとしていますが、IBAFはアメリカ人実業家のシラー氏を07年新会長に選出。MLBとの交渉、さらにIOCへの働きかけに期待を寄せています。無論欧州野球にとって五輪は大歓迎。W杯、インターコンチネンタルカップだけではなく、五輪でも欧州代表がアメリカ、アジアの強豪国と戦い、揉まれていくことが欧州野球の普及とレベルアップにつながることは言うまでもないでしょう(昨年日本が優勝を飾った第一回ワールドベースボールクラシックでは、キューバ参加の是否やドーピング検査問題などを巡り、IBAFと主催者MLBとの間で軋轢がありました。両組織間、そして両組織とIOCとの間の政治力学は、かなり興味深いテーマだと思われますが本稿の趣旨からは逸脱しますので、これ以上深入りしないでおきます)。

    欧州野球選手権5連覇、
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オランダは欧州野球を圧倒的にリードする強豪。イタリアとともに国内リーグも活発だ(画像提供:DDOR Neptunus/Eye of The Tiger Productions)
ヨーロッパではオランダが王者の座を守り続けています。競技人口約4万。伝統的にオランダ領カリブ地域出身のパワーヒッターを代表に召集することが多いオランダ代表は、アテネ五輪でD・ジョンソン氏(現役時代は読売などに在籍、86年に監督としてNYメッツをワールドシリーズ優勝に導いた)を監督に招聘したほか、近年もアメリカから強化コーチを招くなど、世界レベルでも力を付けています。04年のオランダは、アテネ五輪前哨戦となった地元大会ハーレムベースボールウィークで能見篤史(大阪ガス、現阪神)擁する日本社会人選抜を5対3で破りました。五輪本番では全員プロで編成した日本と対戦、先発の岩隈久志(大阪近鉄、現東北楽天)を3回途中でKO。結果的には3対8と逆転で敗れたものの、途中まで日本に冷や汗をかかせました(日本は銅、オランダは6位)。4年後の今年、北京五輪では8月15日の第三戦でオランダと星野ジャパンが対戦することになっています。
    かつてオランダの覇権に挑み続けたイタリアは、国内リーグこそ今もほどほどの活気があるものの、国家代表の地盤沈下が目立ち、替わってこの数年はスペイン、ドイツ、フランスなどが欧州上位を窺っています。チェコはそんな「中の上」クラスの一角に過ぎませんでしたが、昨夏のプレ五輪で大場翔太(東洋大、現福岡ソフトバンク)、坂本勇人(読売)ら若手中心で臨んだ星野ジャパン相手に延長11回2対3と大善戦したのは記憶に新しいところ。欧州野球はもはや「完全に格下のカモ」ではなくなっているように思われます。
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念入りなけん制・挟撃練習。「ベオグラード96の技術向上はそのままセルビア国家代表の実力アップにつながる」とヴチェヴィッチ・コーチ兼内野手(左から二人目)
多国籍化傾向にある米MLBにもこの認識が浸透し始めているようで、一昨年まで大家友和(現シカゴWソックス傘下3A)が在籍したミルウォーキー・ブルーワーズは、欧州地区トライアウトを昨年英国で初めて実施。今年は(7〜8月)英独ハンガリーの三カ国に拡大するとのことです。

    遠い強豪オランダに少しでも近づこう。欧州各国の共通目標は、もちろん旧ユーゴでも同じです。前述の北京五輪予選を兼ねた昨年の欧州選手権では、クロアチアはオランダに13対0で7回コールド負けを喫しています。連盟役員を兼ねるベオグラード96のヴチェヴィッチさんは、クロアチアには先を越されたものの、やがてはセルビア代表もオランダと大きな大会で対戦できるようになることを夢に、まずは予選突破の実力を付けて行きたいと考えています。
08地域国際リーグ
(6月15日時点。総当りリーグ14試合、上位4チームが今秋のファイナル4進出)
チーム名
ベオグラード96SER12111
オリンピヤ・カルロヴァッツCRO1284
ザグレブCRO1284
ナーダSSM・スプリットCRO1284
ヴィンディヤ・ヴァラジュディンCRO1266
スリープウォーカーズ・センテンドレHUN1037
アンツ・ナジカニジャHUN1028
ヴォイヴォデ・ベオグラードSER12012
もちろん代表の中核となるのは、国内リーグで圧倒的な強さを誇るベオグラード96です。
    「地域国際リーグが一段落した7月には、クロアチアで2010年欧州選手権の予選(クロアチア、リトアニア、ブルガリア、イスラエルと同組)が行われます。短期契約で米からコーチを招き、ベオグラード96と国家代表の両方を鍛えてもらう予定です。今のレベルでは予選突破は難しいのは承知していますが、出来るだけのことはして頑張ってみようと思いますよ。それが必ず次のステップにつながるでしょうからね」。

    地域国際リーグではその後もベオグラード96が負け知らずの快進撃を続け、5月第4週末には昨年の覇者オリンピヤ・カルロヴァッツと敵地クロアチアで対戦しました。第一戦、6対8と接戦を落としリーグ初黒星を喫したものの、第二戦はアランジェロヴィッチの満塁ホーマーなど打線が爆発。先発モレノも13三振を奪う力投で11対1と圧勝。続く2節もスリープウォーカーズ・センテンドレ(ハンガリー)とヴォイヴォデ・ベオグラードに問題なく連勝しました。この間にクロアチアではオリンピヤとザグレブが1勝1敗で星を潰し合ったため、ベオグラード96が最終節を待たず春の一位通過決定、9月上旬のファイナル4を本拠地アダ・フィールドで行う権利をみごと獲得しました。
    同リーグ雨天中止分の日程を消化する間もなく、ベオグラード96は6月16日(月)からブルガリア・ブラゴエフグラード(首都ソフィアの約100キロ南方)で行われる欧州野球連盟クラブカップ(CEB杯)予選参加のため遠征に出発です。ブルガリア、ルーマニア、ギリシア、オーストリア、スロヴァキアのクラブを相手に平日5連戦。さらに上位2位に入れば土曜の6日目にプレーオフという、アマチュアクラブにとってはかなりきつい日程です。「ここまで取材させて頂いたんだから、今後はファンとしてベオグラード96を応援させてもらいますよ。地域国際リーグ春の1位を取った勢いに乗ってほしいけれども、欧州選手権予選に国家代表として出場する主力が調子を落とさないようにして下さいね」と電話で話したところ、ヴチェヴィッチさんは「ブルガリアでは初顔合わせのチームばかりでどこが強いか分からないけれど、いい経験になりますよ。私以外は若いし、欧州選手権までは2週間ありますから疲れを引きずることはないでしょう。ウチのHPで結果はすぐに発表しますから応援していて下さい」と落ち着いた口調でした。

    セルビア野球、前進を続けています。

(2008年6月中旬)


執筆に協力して頂いたベオグラード96の皆さん、画像を提供して頂いたDDOR Neptunus / Eye of The Tiger Productionsに謝意を表します。画像・本文とも無断転載はかたくお断りいたします。本稿執筆に当たっては、主に以下のサイトを参考にしました:国際野球連盟、欧州野球連盟、セルビア野球連盟、ベオグラード96、ヴォイヴォデ・ベオグラード、クロアチア野球連盟、スリープウォーカーズ・センテンドレ、Mr.Baseball.comGary Tongue Baseball、ウィキペディア・フリー百科事典各国語版、スポーツナビ、野球規則 2007 Online (2004,2005-2007update) Ver.0.962
Due to the kindness of Mr. J. Van der Sande & DDOR Neptunus (Rotterdam) / Eye of The Tiger Produtions. All rights for the photo "neptunus.jpg" reserved by DDOR Neptunus / www.eott.nl. Unauthorized use is prohibited.


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