「平和問題ゼミナール」
旧ユーゴ便り
Masahiko Otsuka Presents
-since 1998-
(Since 98/05/31)
   
最終更新 2005/07/22
「落書き帳」を再開しました!

第82回配信
少し化粧し始めた首都


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ベオグラード中心部の新しい紳士靴・婦人靴店スフェーラ。夏休み前のセール期、5000ディナール(約8000円)以下で「中の上」階級を十分集めている(このページの写真は以下全て吉田正則氏、大塚真彦の共同撮影による)
    一年間無断休筆をしてしまいましたが、久しぶりに本文更新を再開することにします。読者の皆さん、本当に申し訳ありませんでした。聞き苦しい言い訳をしても仕方がないのは承知していますし、筆者多忙なのも一つには(今後は毎月更新とは気取らず、不定期更新とさせて頂きます)あるのですが、わがベオグラードとセルビア=モンテネグロは、ハーグ戦犯法廷協力問題、モンテネグロ・コソヴォ独立問題などが進展しないまま経済失速感を強める中、十年一日のごとき状況で、筆者の「やる気」もかなり右下がり状態が続いていたことは認めざるを得ません。しかし今2005年に入ってこれらの問題にやや進展のきざしが見え、経済面では輸出、政府収入に大幅な増加を記録。去る6月30日には米経済制裁も完全解除されるなど、セルビアの手詰まり状況が少しずつ打開に向かい始めています。読者の皆さんもよくご存知の通り、このHPは「セルビア便り」ではなく旧ユーゴ圏全てを対象にしていますし、広くスロヴェニアからマケドニアに至るまで、再びどん欲に話題を拾ってはご紹介する作業を、筆者の可能な範囲で続けて行きたいと思っています。

友人の存在は有難いものです。フリーカメラマンだった吉田正則さんは日刊ヴェチェルニー・ノーヴォスティの嘱託カメラマンとなり、ベオグラード大学大学院で南東欧の政治・経済を研究する宮崎泰徳さんも健在。今までも「便り」にいろいろ協力を頂いていたベオグラード在留邦人仲間の二人が、一年間の更新ストップに業を煮やして(?)、筆者を励ましに来てくれました。

吉田:結構更新止まってることを気にしている読者も少なくないみたいですよ、また書くこと出てきてるじゃないですか。大塚さんが再開することに決めたのなら、宮崎さんと私で出来ることは協力しますから。
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二人の在留邦人仲間、宮崎泰徳さん(左)と吉田正則さん(右)の励ましで、「便り」を再開します。まずは首都ベオグラードの散歩から
大塚:われらが住む町ベオグラードを中心テーマにして第82回配信としてみますか。前からやろうと思っていた、2000年10月の政変以降、いや特にこの2、3年かな、装いを新たにする首都、ということでは。無論セルビア経済の現状が、まだ他の国に較べて決して褒められた状況ではないのは確かだけど、少なくとも表面ではきれいになり、整備された部分も増えているわけだし。
吉田:むろん新しい店が出来、町の外観がきれいになったからと言って、「中の中」「中の下」クラスの暮らしが良くなっているとは思えません。でも豊かならざるセルビアの首都も、化粧するくらいの余裕は出てきたのかな、数年後にはそれが本質的な底上げに結び付くのなら結構だな、ということですよね。
宮崎:いいですね。マクロ経済の状況は大塚さんも「便り」でずいぶん言及されていますが、経済学的、統計的な理屈づけより、まず目に入る路上の観察からスタートしてみませんか。
大塚:政変の頃にこちらに来た宮崎さんが在住5年弱、吉田さんも4年を過ぎて、もう短くはないわけだけど、私のような16年の古ダヌキの目には慣れてしまって入らないところでも皆さんの方が気が付くことはあるのではないでしょうか。

というわけで、吉田さん、宮崎さんと3人の共同作業で更新を再開することにし、上記の「編集会議」のあとベオグラード在留邦人3人組で町を歩くことから始めました。

宮崎:5年前の首都と比べて、目に見えて便利になったのは市内交通ですよね。
大塚:経済制裁中は大混雑が当たり前だったバスでしたが、便数も増えて普通の市民の足に戻りましたね。
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(左)日本のODAによる市バスは市民からも好評だ(右)利権絡みの話で政敵からの評は芳しくないボグダノヴィッチ市長だが、インフラ、緑地整備などを堅実に進めている
吉田:2年前の03年春以降、日本の政府開発援助(ODA)でバス93台が入り、きれいで乗り心地も良いと評判ですよね。もっとも引渡し式の記者会見に出席した時、大塚さんが「日本のODAと他国の類似援助の違いは」と聞いたら、N・ボグダノヴィッチ市行政局長(当時)は「中古じゃなくて新車だというところです」と答えズッコケてしまった覚えがありますが。
宮崎:去年からそのボグダノヴィッチ(民主党)が市長になりました。
大塚:ベオグラードは首都だけに利権も集中しているわけだし、ボグダノヴィッチ自身、ジンジッチ共和国首相暗殺後の民主党の集金役、日本で言う党幹事長のようなことをやっているのもあって、政敵からは泥棒呼ばわりされたり、それこそ日本のODA以上に毀誉褒貶のある政治家ですね。でも市長就任後もインフラや緑地整備などが進んでいて、それなりに評価はすべきだと考え始めています。
吉田:彼自身ビジネスマン出身らしく、相当やり手だという噂を聞きますね。そう言えば市議会の真ん前に市営地下駐車場が出来て、市長もオープニングの時には顔を出していました。駐車場そのものは普通なのですが、その手前には案内板があって、空き台数がデジタル表示される仕組みになっています。これはセルビアでは他にないと思うのですが。
大塚:先進国では当然のものでもこのセルビアの首都にはなかった、そういう案内板のような「便利モノ」が確かに増えていますよね。
宮崎:道案内の看板も最近はずいぶん増えて、しかも英語と二カ国語表示です。ずいぶん5年前よりは整備されました。中心部のミハイロ公通りなど、数ヶ月に一つは新しいブティックや化粧品が出来ている感じですね。このスフェーラという靴の店も去年くらいに開店しました(本文冒頭写真)。
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(左)新設市営地下駐車場の案内板は空き台数をデジタル表示(右)古くてもきれいなクルマが増えた。洗車率(?)は明らかに上昇している
大塚:ブランドものの高級ブティックが本当に回転するにはまだ購買力が不足している感は否めないと思うのですが、ここなんかは高級感はあるけれどもメチャ高ではない、まあ夏休み前の安売りの時期ですが5000ディナール(8000円)以下でほどほどの婦人靴を売っていますね。少数富裕層だけではなく、多少余裕のある層なら普通に集められるレベルです。こういう「中の上」をターゲットにした新しい店が繁盛しているようです。
吉田:ボロ車は相変わらず多いですが、ほこり・泥まみれの自動車を目にすることが少なくなりました。
宮崎:洗車場が増えましたね。300ディナール(約480円)くらいから洗車出来るそうです。まあそれだけを見てセルビア経済が上昇気流に乗っているとはとても結論できませんが、「衣食足りて何とか」ではないけど、洗車をするくらいの経済的余裕は一般に出てきたとは言えるかも知れませんよね。

大塚:ところで吉田さんが日刊ヴェチェルニェ・ノーヴォスティ紙の嘱託カメラマンになって、もう一年近くが経ちますね。何度も一面トップの写真を飾ったり大活躍しているプロに、今日は取材のお手伝いをしてもらえて嬉しい限りです。
吉田:写真部長がなかなか厳しい人で、毎日勉強の繰り返しです。最近はスポーツ部からも声を掛けられて、バスケやバレーの撮影もやっています。自分の宣伝で恐縮ですが、ネット版ノーヴォスティのサイトには時々私の「作品」も掲載されますので、「便り」の読者の皆さんもご興味があったらアクセスして頂けると嬉しいです。
宮崎:じゃあ今日のノーヴォスティを買ってみましょうか。そこでこのページの次のテーマに入っていくわけなんですが、今年1月1日からセルビアでも付加価値税、つまり日本で言う消費税18%が導入されましたね。
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キオスクで新聞を買うだけの客に対しても18%の付加価値(消費)税を明記したレシート発行が義務付けられるようになった。宮崎さんがV・ノーヴォスティ紙とともに手にしている小片がそれ
大塚:一般店舗はもちろん、キオスクでタバコや新聞を買うだけで、税額をこれこれだけ払いました、と明記したレシートが発行されるわけだから、日本より徹底しているとも言えますよね。
宮崎:去年からこうしたレシートが印刷できるレジスター(NECなど日本製を含む)を数種類、政府で指定して全ての事業者に設置させた、セルビアとしてはかなり大規模な制度改革です。売り子のおばさんに聞いてみましょうか?
大塚:付加価値税の方はうまく行ってますか?
店員:私のほうはレジを打つだけで面倒はありません。レシートもすぐ出てくるのに、待ち切れないで去ってしまうお客さんがいてレシートだけ残ってしまうことがあります。
大塚:では付加価値税導入半年をどう評価するか、共和国政府諮問コンサルの関係者に話を聞いてみましょう。

    ディロイット・セルビア=モンテネグロ社は経営・会計コンサルの世界的大手DTTグループ(本拠地:英)傘下の民間企業ですが、昨年来事実上の政府諮問機関として、共和国大蔵省に対し付加価値税導入に様々な提言をしてきました。新税制導入後の現在も企業の経理相談、セミナーなどを積極的に行っています。同社付加価値税業務部のT・ウングラン上級顧問に会うことが出来ました。

宮崎:日本では89年に消費税3%が導入され、現在は5%です。このページの読者でも18%と聞くと驚く方がいるかも知れませんが、ドイツが16%、デンマークが25%だそうですから、欧州水準としては普通の率なんですね。導入6ヶ月の現状をどう評価されますか。便乗値上げなどでインフレに影響するのではないかというのも気になりますが?
ウングラン:確かに導入前後の時期は便乗値上げも多少ありましたが、昨年後半から共和国大蔵省、各地方自治体の税務局が一丸となって各事業者や一般消費者向けに宣伝活動をしていました。これがいい効果を生んだと思います。企業には大きな混乱もなく定着しましたし、一般のクレームも当初だけで、今は問題なく機能しています。予想を大幅に上回る円滑な導入だったと思います。中小企業や自営業者では確かにキャッシュフロー、つまり流動性が少し圧迫されて障害が出ていることはあります。しかし従来の流通税20%の時はいわゆる課税仕入れという概念がなく、国が流通段階で二重に課税してコスト高につながっていました。こうした問題が現在はなくなった分営業がしやすくなっています。共和国政府収入は今年4月時点で160億ディナール(約256億円)の黒字を記録しましたが、このような「黒字経営」は近年の財政史上で初めてのことです。インフレに関しては今年の予想値は18%(昨年は13・8%)で、まだセルビア経済があまり褒められる状態ではないのは承知していますが、付加価値税の導入がインフレに大きく影響するとは思っていません。
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ディロイット社は経営コンサルの世界的大手DDT傘下の民間企業だが、共和国議会に隣接する建物に政府系機関と同居。共和国政府の事実上の諮問機関として活動している
宮崎:セルビアの国民所得に占めるグレーエコノミーは30%弱とも言われていますね。税収につながらないヤミ商売を潰す、という効果はありますか?
ウングラン:現時点ではグレーゾーンの統計がないので明言は出来ませんが、付加価値税とともに政府指定レジスターを導入したのは、各事業者の経理がやりやすくなるという他にヤミ営業防止、徴税管理の意味もあるわけです。結果としてグレーエコノミー減少は期待出来ます。
大塚:付加価値税で増えた財源を、政府は何に使うべきか、あるいは使わないべきかお考えはありますか?
ウングラン:私たちは民間企業ですので、提言は出来ても実施するかどうかは政府次第ですが、やはり短期的、近視眼的な政治利用をしてほしくないですね。公共投資増大も問題はあるわけですが、何か長期的、間接的に国の状態を良くする方向での財源になればと思います。
宮崎:ただドイツの例を見ると消費税の国内総生産に占める率は、導入直後の70年に5・6%、31年後の2001年でも6・6%にとどまっています。消費税は万能薬ではないと言うか、どこまでも付加価値税だけに頼るのは無理があるのではありませんか。 所得税、法人税などの財源もきちんと徴税していかないと健全財政とは呼べないと思うのですが?
ウングラン:付加価値税の特徴は、富裕層からも低所得者層からも平等に18%を取ってしまうところにあります。平等であるがゆえに公平ではない、とも言えます。その意味で現在も国会で基本食料品などの消費税を8%に下げる改正法案の審議が進められていますし、宮崎さんもご指摘の通り、他の税収源をしっかり押さえるとか、低所得者の不公平感を減らす政策を取る必要があるでしょうね。将来的に法人税などを上げる方向に向かっていますが、まだ政府歳入にこれらの占める率は非常に低いものです。
宮崎:一方で税収が拡大すると政府が大きくなって国が「大型経営」になってしまう、すると歳入だけでなく歳出も増えるから財政赤字減・黒字増にはつながらないどころか、消費税も含めた増税になりやすいというジレンマもいくつかの先進国では見られていますが?
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付加価値税の導入は健全財政への良きスタートと評価するウングラン上級顧問
ウングラン:原則論としてはその通りですが、それは長期的、マクロ経済的な話で、今うんぬんする段階ではないでしょう。一国の財政には様々な財源がありますし、国の健全な「経営」は法人税など他税収源もきちんと管理し、歳出として無駄なく運用できるかどうかにかかっていると思います。付加価値税そのものは健全財政に向けてプラス効果の大きいものですし、ぜひ続けるべきだと思います。上記の8%グループ対象品を増やすなどして税率は少し下げるべきだ、というのが私たちの提言です。
大塚:欧州連合(EU)だけでなく、ヨーロッパは来年導入予定のボスニアを除く全ての国で付加価値税を導入したことになるんですね。
ウングラン:その通りです。EU加盟はセルビアの国家目標ですから、異論はあるかも知れませんが財政・税制などシステム面でEU先進国の制度を導入するのは私は当然だと思います。付加価値税に関してはヨーロッパで最後から二番目の実施国になりましたが、今まで導入しない方が不思議なくらいでした。ディロイットは経営・会計コンサル企業として外国投資家に税制の説明をして来ましたが、従来の流通税はとても古いタイプの直接税で説明がとても大変でした。付加価値税で経理の具体的な現場では帳簿管理などが複雑になったことは認めますが、慣れてしまえばモデルはEU型ですし、これからセルビアで事業を興す企業家にも入りやすいシステムです。私自身もこういう過渡期のコンサルの仕事が出来てとても面白いと言うか、やり甲斐を感じています。

宮崎:なるほど流通段階でのコストは新税制でむしろ下がっているから、値上げにはあまりつながらないわけですね。面白い話だったと思います。
大塚:常にインフレ傾向があるセルビアで、それほど値上げがなくて新制度が定着したことは私も評価すべきだと思いますね。
吉田:取材して少し腹も減りましたし、今日の最後は日本レストランに行ってみませんか?私もノーヴォスティで開店の取材をして以来です。
大塚:高級住宅街セニャックにあったベオグラード二軒目の日本料理屋がなくなってしまった後の史上三軒目、現在二つあるうちの一つということですね。私は初めてなので、ちょっと取材も兼ねて行ってみましょう。この「便り」は個人の非商用サイトなので吉田さんや宮崎さんに取材協力料は出せませんが、その分ポケットマネーでメシでもおごらせて下さいよ。

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閑静な住宅街に開店した韓国・日本料理のジュジュは団地の一階にある
    韓国・日本料理レストラン・ジュジュはベオグラード中心部に近いクルンスカ(王冠)通り80番地、閑静な住宅街の一角にあります。メニューには寿司、刺身もありましたが、私はシーフード+野菜いため、宮崎さんはトンカツ、吉田さんがエビフライ。味はみな十分合格点でした。内装は機能的ながら、日本の障子を連想させる壁面などが凝っていて、首都のレストランらしいモダンでオシャレな雰囲気です。値段はセルビア一般の水準から見れば必ずしも安くはないのですが、日本料理以外も含めた同じベオグラードの高級レストランほどではないという程度。またランチタイムには定食が800ディナール(約1300円)程度から楽しめるそうです。吉田さんが調理場を覗いてみると、ベオグラード市内の別の日本レストランでお仕事をされていたはずの調理師、椛沢清光(かばさわ・きよみつ)さんの姿がありました。

吉田:別の日本レストランをお辞めになったとは聞いていたのですが、今はこちらでしたか?
椛沢:12月に開店したジュジュに4月から移りました。ベオグラードの日本レストランには三軒全て勤めていることになりますね。早いものでもうベオグラードに来て3年半になります。
大塚:道理でメニューに寿司、刺身があるわけですね。そうと知っていれば寿司をオーダーしておけばよかった(笑)。ちょっと椛沢さんのこともHPで紹介したいのですが?
椛沢:日本で板前をやって、自分の店も京都と東京で持ったりしたのですが、まあ外国にいらっしゃる日本の板前さんにはよくあるパターンで、私も外国でやってみよう、と。一念発起して行ったところがロシアのカムチャツカでした。
宮崎:え、カムチャツカですか!?
椛沢:海だから魚がいい所だと思われるでしょう?ところがロシアでは魚料理がそれほど一般的ではないんですね。それで水上げも感心するほどではなかったです。で、いろんなことがあって今度はベオグラードへ来ることになりました。
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お弟子さんを厳しく指導しながら手際よく調理を進める椛沢清光さん
大塚:しかし寿司、刺身を看板にするには鮮魚の仕入れに大変なご苦労があると思いますが?
椛沢:そうなんです。実はマグロをアドリア海で養殖しているというのを最近知りまして、明日からクロアチア海岸の方へ視察に行く予定なんです。

    お客さんが入って椛沢さんもお仕事をしなければならないので、その撮影は吉田さんに任せて、宮崎さんと私で食後のコーヒーを飲みつつ、若い共同経営者のB・ロミッチさんにお話を伺います。

ロミッチ:むかし柔道をやったりして、私自身が日本フリークなところもあったわけです。レストラン経営は初めてなのですが、共同経営者の松岡さんと話をした時にもう二つ返事で開店を決めていました。昨年12月にオープンしたときは日本人調理師はいませんでしたから、韓国焼肉としゃぶしゃぶ、すき焼きなどの抱き合わせを予定していたのですね。それで日本製の業務用ガスレンジ付きテーブルも輸入したのです。総出力1700パスカルと、この近辺のレストランでは例のないような大掛かりなシステムだったわけです。ところが格好悪い話なんですが、一般の団地の一階にあるので、セントラルモーターがうるさい、という苦情が出てしまいまして、ベオグラード市当局の検査の結果焼肉などが出来なくなってしまいました。これは困ったな、と思っていた時にちょうど椛沢さんと出会うことが出来たわけです。
宮崎:それで寿司、刺身を始められた、と?
ロミッチ:その通りです。今は従業員10人、席数36(パーティーなどでは56まで拡大可)でやっていますが、椛沢さんは調理師の若いセルビア人だけじゃなくてウエイターなどにも細かい指示をしてくれています。毎朝4時には起きて仕入れに行くそうです。自分の店員を褒めても仕方ないところはありますが、本当に自分のことよりも店のことを考える献身ぶりが従業員の模範になっていると思いますね。彼あってのジュジュになりそうな感じです。寿司、刺身がこれからはウチの看板料理になると期待しています。
大塚:しかし本格的な鮮魚ベースの日本料理となると、仕入れも安くはないでしょうし、値段に反映しますよね。営業面では焼肉よりご苦労されるのではありませんか?
ロミッチ:以前からシーフードと言えばセルビアでは高いものという常識がありましたが、今ではモンテネグロでクロダイ、スズキ、貝類なども養殖していますし、実際ベオグラードで暮らされていて、最近は皆さんも海の魚を眼にする機会が増えていますでしょう。鮮魚の仕入れ価格は以前に比べ若干下がっていますよ。無論セルビア人一般を広く迎えられる値段のレストランに出来ないことは承知しています。むしろ外国のお客さんを含む準高級という位置付けですね。現在は外国と地元のお客さんが半々というところです。国連代表部、ブラジル、ベルギー大使館などが近いこともありますし。常連さんとは言いませんが、もう何回か来て頂いているお客さんも出ています。結果的にはほぼ無駄な投資になってしまった焼肉用テーブルも含め、1年とか1年半をかけて回収することを目標にしています。今のところお客さんが一番入るのは木曜なんですね。花金、土曜(日曜は休業)ではないということは、確かに少し宣伝が足りないところがあったかも知れません。今後も営業戦略をさらに練って行くつもりです。
宮崎:具体的に今後の営業拡大アイディアはありますか?
ロミッチ:ビルボードなども出して行きたいと思いますし、秋以降は何らかのチャリティーイベント参加を考えています。大塚さんのHPをお読みの方がベオグラードにいらした時はぜひお寄り頂けると嬉しいです。
一同:ロミッチさん、椛沢さん、お忙しいところ私たちの取材に応じて頂きどうも有難うございました。

    宮崎さん、吉田さんの多大な協力、そして今回の取材に応じて頂いた皆さんのおかげで、楽しい散歩と更新再開が出来ました。次は8月中に第83回配信を発表できる見込みです。読者の皆さん、改めましてよろしくお願いします。

(2005年7月下旬)


宮崎泰徳、吉田正則両氏に謝意を表します。このページの権利は全て両氏及び大塚真彦に存します。本文、写真とも無断転載をお断りいたします。なお「旧ユーゴ便り」は非商用サイトであり、特定の法人、店舗等の営利宣伝を目的とするものではありません。


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