Clochette カミカゼ☆エクスプローラー shortstory
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・カミカゼ☆エクスプローラー! sideshortstory                  「おっぱい☆エクスプローラー!セカンド」 「遅くなっちゃった、早く寮に帰らないと夜ご飯に間に合わなくなっちゃう」  学園でのちょっとした用事で遅くなった私は日が暮れて暗くなった道を小走りに進む。  このままだと入浴時間もぎりぎりになってしまうかな、それはイヤだなぁ、お風呂はゆっくり入りたいな。  そう思いながら寮が見える所まで帰ってきたとき、異変が起きた。 「え、なに?」  制服の胸のリボンがするするっとほどけた。  上着のボタンが一つずつ綺麗にはずされていく。 「え、え!?」  私はこんな路上で制服を脱ごうとしているわけなんかない、今だって右手に鞄を持ったままだし、  片手じゃボタンをこうも素早くはずす事なんてできない。 「きゃっ!」  気づくともう制服の上着ははだけさせられて、下着が露わになっていた。 「なんで、どうして!?」  頭は混乱しているけど、羞恥心がまさったのか両手が胸を隠し抱くように動かすことができた。  でもそれも一瞬の事、まるで誰かに腕をつかまれたかのように私の腕は開かれた。 「や、やだっ!」  そうした瞬間、フロントホックのブラははずされ、私の胸が露出させられた。 「んっ!」  秋口の少し肌寒い風に私の胸が撫でられる。急激な温度変化のせいか、胸の先が膨張し固くなる。 「ど、どうして、いやっ!」  その瞬間、突然私の腕をつかんでいた力が無くなった。  私は胸を隠しながらその場に蹲った。 「ぐすっ・・・どうして・・・なんで?」  着崩れた制服を直しながら周りを見回す。  日が暮れた道、周りに誰もいない。なら見られてない? 「じゃぁ、なんで? ・・・うぅ」  涙が出てきた。  学園の帰り道に突然襲われたようなものだった、いや、襲われたのだ。  何らかの手段で私は胸を見られたのだ。その手段・・・この都市で考えられる事は一つしかない。 「メティス・・・」  確証は無いけどメティスで胸を見られたとしか考えられない。  そう思うと背筋が寒くなって来て身体が震えてくる。  すぐに警察に届けなければ、でもなんて言えばいいんだろう?  道を歩いてたら突然制服がはだけて胸を見られた? でも、それならば誰に?  混乱した思考は袋小路に落ちていく。このままだと何も出来ずにまた襲われるかもしれないって、  びくびくしながら生活するしかないの? 「あら、どうしたの?」 「え?」  女の人の声に私は振り向く。  そこにいたのは燃えるような赤い髪の女の人・・・あぁ、そうだった。  少し前、盗撮されてるという噂だけで調査してくれて、その犯人をすぐに見つけだし  事件を解決してくれた人たち。 「アルゴノート・・・あの、お願いがあるんです!」  きっとこの人達なら解決してくれる、いつ何処で胸をさらされてしまう事に怯えなくてすむ! 「わかったわ、でもまずは食事にしませんか? 私もお腹がすいてしまってるの」  そう言って微笑む女の人の顔に安心したのか、私のお腹が鳴った。 「あっ」 「ふふっ、その後お風呂に入ってから、私の部屋でお話を聞きましょう」 「はい!」 「祐天寺さんが私たちを呼び出すなんていったい何なのかしら、また悪巧みをしてなければいいのだけど」 「さすがにそれはないと思いますよ、沙織先輩」 「そうだといいんだけど」  放課後、俺達はアルゴノートに呼ばれていた、とある依頼の件で聞きたい事があるそうだ。 「早く用事を済ませましょ、けーくん」 「はい」  手をつないで中庭を歩いて行く、異変はその時に起こった。 「え?」 「どうしたんですか・・・なに?」  気づいたときには沙織先輩の胸のリボンがほどかれていた、そして丁寧にボタンがはずされつつある。 「え、なんで、どうして?」  何が起きたか解らず混乱してる沙織先輩、俺はその状況に今何をすべきかを即座に判断し実行する。  幸い、手をつないでいたので俺のジョーカーはコピーしている状態になっている。 「アンブラ・ゼロ!」  俺はあえて精神集中をせずにアンブラを完成させる前の状態で起動する。  浮かび上がった影はいつもの兎型にならず、周囲を煙幕のように漂う。 「けーくん?」 「沙織、ごめん!」 「え、きゃっ!」  俺は先輩を抱き掲げて、校舎の影になる方へと走った。  抱きかかえられてる沙織先輩の制服のボタンはすべてはずされており  可愛いブラジャーが見える状態になっていた。 「やだ、どうして?」 「とりあえず逃げますから、沙織先輩はその間にボタンだけでも」 「う、うん」  校舎の中に逃げ込んだ時には沙織先輩はもう服を整えていた。  事情が事情じゃなければ、残念だったなぁ・・・ 「けーくん・・・いま何を考えてるのかな?」 「えっと、今回の事件のことについて、かな?」 「けーくん」 「・・・」 「・・・」 「・・・ごめんなさい、沙織先輩のおっぱいのこと考えてました」 「けーくんのえっち」  事実なので反論できなかった。 「見たいなら誰もいない所にしようね、けーくん」 「是非!!」  思わず即答した俺を見る沙織先輩の目はちょっとだけあきれてた。 「遅かったな、速瀬にうさみん」 「菜緒、私は宇佐美です、うさみんじゃないです!」 「それはおいといて、お嬢様」 「えぇ、アルゴノートの会議を始めます」 「だから、私はアルゴノートに所属した覚えはありません!」 「何度も言わせるな、沙織。CSCの事件の以下略だ」 「以下略ってなんなの!」 「その辺空気を読め」 「・・・近濠先輩、話を進めてもらって良いですか?」 「ちっ、これから面白くなるところだったのだがな、まぁよかろう。さおりんいぢりは部屋でする事にしよう」 「菜緒!」 「今回は昨日の夜起きた事件が発端です」  祐天寺が語った昨日の夜起きた事件、その内容はついさっき沙織先輩に襲った件と全く一緒だった。  そのことを話しておく。 「アルゴノートへの依頼報告は昼休みの件をあわせてまだ3件ですが、速瀬さんの話を聞く限り  今現在も被害が増えている可能性がありますね」  景浦の説明に、アルゴノートの面々がぞっとした。 「許せない、乙女の胸を無理矢理のぞき見するなんて!」 「まなみ、落ち着け。貫くのは犯人をみつけてからだからな?」 「うん、わかってる! 見つけたら私が貫く!」 「がんばれよ、まなみ」 「がんばる!」  俺達のやりとりに周りは何故かため息をついていた、何か俺はおかしいこと言ったか? 「それで、速瀬。前回の件をふまえて今回の件、どう思う?」  前回の件、それは以前謎の意志があるメティスの事件のことだ。  どこから来たのか解らないそれは、俺のルームメイトである航平の身体を乗っ取り活動していた。  その能力はただの透視、それも女子のおっぱい限定で、透視して見たおっぱいを記憶するだけのメティスだった。  おっぱいエクスプローラーを名乗ったメティスは俺のジョーカーの力で再現したペルセポネにより消滅した。 「・・・間違いなくメティスでしょうね、俺もその場に居たけど周りには誰もいなかった。  ということは今度こそ念動系のメティスでしょう」  沙織先輩の制服を見る、いまは乱れなど無く綺麗に制服を着ている。 「気になるのは、制服、衣服を強制的に排除するのではなく、綺麗に脱がしている事ですね。いくら念動系とはいえ  そこまで精密に物体を動かせられるのでしょうか?」 「メティスは未だ研究過程の技術だ、そう言うメティスがあってもおかしくない」 「遠隔操作の念動系、やっかいだな。でも対処方法が無い訳じゃない」  そう言って俺は姫川の方を見る。 「速瀬君?」 「もしそれがメティスであるのなら、姫川のアイギスで防げます、排他的覚知範囲内なら遠隔系のメティスは  そこで防げます」 「なるほど、確かにな」 「後は・・・そうですね、難しい話ですけど汀先生のメティスがあれば感知できる」 「そうか、薫子に協力を依頼するのもいいが、あれは多忙だからな、難しいな・・・だが」 「俺がそれを変わればいい」  そう、俺はそれが出来るのだ。 「速瀬、おまえはディスカバリーの経験はあるのか?」 「無いですけど、何か問題あります?」 「初めてのメティスを長時間起動しっぱなしにして負担はないのか、と訪ねてるのだよ」  その問いに俺は答えられなかった。  汀先生のディスカバリー、それはメティス波を視覚して見ることが出来る。  今回の犯人がメティスパサーなら、その現場に居合わせてしまえば犯人の特定が簡単に出来るだろう。 「それにな、残念ながら薫子は今この都市にいない」  居ないのなら俺はメティスのコピーが出来ない。 「・・・」  アルゴノートも風紀委員も今夜から見回りを強化するしか対策はなかった。 「ねぇ、けーくん。なんでそんなに焦ってるの?」 「・・・わかります?」 「もちろん、だって私はけーくんの彼女さんだもん」  そう言って手をぎゅっと握ってくれる沙織先輩、だが今はメティスのコピーはされない。それがちょっと残念でもある。 「だいじょうぶ?」 「はい、大丈夫だと思います・・・いや、やっぱりダメかも」 「ダメ?」 「恥ずかしい話ですけどね、さっき沙織先輩への被害を止められなかったのが悔しいんです」  不可思議なメティスの攻撃を受け、俺はとっさに逃げることを選択した。  それはあの時の判断としてはベターだったが、ベストではない。  もう少し状況を理解し観察すれば、敵の情報をつかめたかもしれない、そう思うと悔しくなってくる。 「私は嬉しかったな」 「沙織・・・先輩?」 「だって、けーくんが私の為にしてくれたんだもん、おかげでお・・・」  そこで声が途切れる。一呼吸置いてから改めて沙織先輩は言い直す。 「私のおっぱいを見て良いのはけーくんだけだから」 「・・・ならばこそ、犯人・・いや、敵を捕まえないといけないですね。他の女子ならともかく  沙織先輩のおっぱいを見られる訳にはいかないですから」  俺の言葉に顔を赤くしながらも、沙織先輩はちゃんと注意してきた。 「けーくん、他の女の子の為にも、だよ?」 「そうですね、なら言い直します。メティスの悪用を防ぐため、他の女の子の被害を防ぐために」 「うんうん」 「そしてなにより、俺の女の為に! 敵を、悪を倒す!!」  俺の宣言に沙織先輩は何故か複雑そうな顔をしていた。  結局この日の夜の見回りでは何も発見できなかった。 「ただいまって、航平はもう寝てるのか」  ルームメイトの航平はベットでいびきをかいている。 「いい気なもんだよな」  そう思うが、もう相当遅い時間でもある、この時間まで巡回する必要はなかったのだが、  沙織先輩と一緒に居たために別れにくく、結局遅くなってしまった。 「俺ももう寝るか・・・」  着替えた俺はそのままベットに倒れ込んだ。 「被害が増えてる?」  昼休み、急遽アルゴノートの部室に呼ばれた俺は、景浦からの報告に驚いた。 「はい、同じ手順で女性の胸をはだけさせるだけの被害、昨夜にも確認されています」 「俺達が見回ってたのに・・・」 「見回りのコース外や見回ってない時間帯の女子が狙われてる」 「にゃお、以前のように当たりをつけられないのかしら?」 「盗撮犯ならいくつかのポイントが絞り込めます、ですが今回はメティスの覚知範囲の広さが  解らないため絞り込むのは難しいかと」 「どうすればいいのかしら」  さすがの祐天寺も答えを出せないでいるようだ。 「近濠先輩」 「なんだ?」 「この学園で俺みたいにスカウトされたメティスパサーで、まだメティスが発現していない生徒ってどれくらい居ます?」 「それなりの人数は居るはずだが、すべて調べたぞ」  俺が聞きたい事の先をすでに調査済み、さすがは近濠先輩、だが 「実際に発動できて隠している場合は?」 「うむ・・・それは調べようにないな」 「そこをすべてあたっていくしかないのでしょうか?」 「現実的に難しいな、調べる方法が速瀬のジョーカーしかないのではな」  メティスが発現しているメティスパサーに触れれば俺のジョーカーはそのメティスを完全に再現する。  しかし、一度記憶するとそのメティスを発現させなければ他のメティスをコピーできないし、  発現した本人がメティスネームを隠した場合俺はメティスを発現出来ないおそれがある。  そうなればメティスの保持期限が切れるまで俺は完全に無力となってしまう。 「手詰まりだな」  その時アルゴノートの部室の扉が開き、まなみと姫川が部屋に入ってきた。 「お兄ちゃん!」  まなみは俺の胸に飛び込んでくる。 「どうした?」 「うぅ、怖かったよぉ、お兄ちゃん」  俺はまなみが落ち着くまで頭を撫でながらまなみの言う意味に、気づいた。 「姫川、まなみが襲われたんだな」 「うん、アイギスで防げたから良かったんだけど、やっぱりあれは怖いよね」  確かに夜だけではなく昼間の外でいきなり胸を露出させられるのは女性としては怖いだろうし何より屈辱だろう。 「・・・こうなったらなりふり構ってられない、近濠先輩。未発現のメティスパサーすべてにあたりましょう」 「・・・」 「近濠先輩?」 「形振り構ってられない、か・・・速瀬、なんでもするって事だよな」 「もちろんです、沙織だけじゃくまなみまで襲われたんですよ?  もう犯人を、敵をのさばらせて置くわけには行かないですから」 「そうか・・・なら、一つ案がある」 「案?」 「あぁ、アルゴノートの非常勤メンバーを招集する」 「非常勤メンバー?」  祐天寺が不思議そうな顔をしながら聞き返す、アルゴノートのメンバーで祐天寺が知らないって訳は無いはず。 「ぽち。あれを」 「あぁ、なるほど。すぐに用意致します」 「・・・なんだか嫌な予感がするんだけど」 「おぉ鋭いな、さすが速瀬。だが速瀬の出番はここで終わりだ」  ・・・あぁ、やっぱりか。 「非常勤メンバーの、小早川恵子を招集する」 「ようするに囮作戦という訳・・・なのね」  澄之江学園の女子の制服をきた俺、いや、私は夜の学園から寮に向かって歩いている。 「もし相手がおっぱいを目的としてるのなら小早川も狙われるだろう」  近濠先輩の言葉を思い返す。妙に楽しそうな表情だったことは思い出さないでおこう。 「・・・」  自分の胸を見下ろす、そこには大きな二つのふくらみがあった。  以前も確かにパッドで詰め物はした、けど今回のパッドは見事な物だった。  肌に直接つけるタイプのパッドは、骨格さえ気にしなければ間違いなく女性のおっぱいだった。 「・・・はっ」  思わず見とれてしまった事にものすごく落ち込む。  よりにもよって自分自身の偽物のおっぱいに見とれたなんて・・・ 「・・・ふぅ」  顔を上げて周りをそれとなく見渡す。人の気配は感じられないがそれは今までと同じ。 「早く帰らなくっちゃ」  実際には女子寮に帰るわけにはいかないのだが、もし何事もない場合はまなみの部屋へ行くことになっている。  そうはならないで欲しいんだけど、と思いながらゆっくりと俺・・・私は歩き出す。 「っ!」  来た、獲物がかかった!  メティスによる念動の力が俺、じゃなかった、私の制服のリボンをほどく。  私は手に隠し持ってたスイッチを押す。そして今は成り行きに任せる 「・・・」  制服のボタンがはずれていくのを他人事のように眺めながら、確かにこれは女性にとっては怖いものだろうな  と理解する。  それと同時に、私という囮に釣られた事に別な意味で衝撃を受ける。  俺の女装ってそんなに見た目ばれないものなのかよ・・・  以前女子寮に潜り込んだ時も全く気づかれなかった事もあった。それって男としてどうなのだろうか・・・  ばさっと、制服の前がはだける、夜の冷たい風が身体にあたる。  そして最後にブラジャーまではずされようとしたそのとき。 「アイギス!」  私の周りに空圧の楯が張り巡らされた。 「ケイちゃん、だいじょうぶ?」 「姫川!」  駆けつけた姫川はすぐにアイギスを展開してくれた。その結果私のブラジャーは脱がされずにすんだのだけど。 「・・・ケイちゃん、胸大きいね」 「・・・言わないで、ちょっと色々と複雑なんだから。って違う!」  ついほのぼのとしてしまうのは姫川のせいだろうな。 「敵は恐らく向こう側だ!」  私は・・・あー、もういいか! 俺は向いていた方向を指さす。  念動系のメティスであっても、それを見るためには俺の方を見なくちゃいけない。  さらに相手の目的が胸であるなら、絶対真正面の方にいるはずだ。 「プロミネンス!」  横合いから聞こえてきたかけ声、それと生み出された炎が俺の正面を照らす。 「いけ、愛と恨みと憎しみの、ペネトレイター!」  反対側から駆けつけたまなみの声と共に鉛筆は放たれた。愛ってなんだ? 「っ!?」  ペネトレイターで強化された鉛筆の放たれた先で声が聞こえた。犯人はそこにいるのか? 「アンブラ! 犯人を確保!」  駆けつけてきてくれた沙織先輩のアンブラが犯人を取り押さえにいく。 「みんな、気をつけて!」 「琴羽は何もしないんだな」 「私のメティスはここじゃ何の役にも立たないでしょ? それとも貴方の髪のケアでもしようか? 恵子ちゃん」 「・・・ごめんなさい」  とりあえず脱がされた制服のボタンをはめることにした。  アンブラが確保してきた犯人。  その姿を見た俺達は、驚きは半分。そして残り半分は想像通りという感じだった。 「航平・・・」 「ふっ、俺をその名で呼ぶな」 「なら貴方は誰なのかしら? おっぱいエクスプローラーさん?」 「何故俺の名前を知っている!?」 「・・・ここまで想定通りだと逆にあきれてくるわね」  祐天寺のあきれ顔に航平は悔しそうな顔で答えていた。  制服や着ている衣服を脱がし、胸だけを露出される変態メティス。  もう最初からあのおっぱいエクスプローラーだという事はすでにみんな確証を得ていた。  ただ、今回誰のメティスとして発現したかが解らなかった。  航平は以前の事件で完全にMWI値を失っており絶対発現しないと思っていたのだが  まさかまたも航平にとりついていたとは。 「いや、ある意味予定調和なのかもしれないわ」 「ぷ、ぷぷぷっ!」  後ろで近濠先輩が笑ってるのがわかる。  制服をちゃんと着たことで俺は、私はまた小早川恵子に戻っていたようだ。 「それでどうするの?」 「学園側に事情を話して引き渡すしかないわね」 「一応、こんな残念なやつでも航平は私のルームメイトだから、あまり悪くはしたくないのだけど」 「なに!?」  私の言葉に航平、いや、おっぱいエクスプローラーが反応した。 「この娘がルームメイト、だと? ならば今ここで俺が掴まるわけにはいかない!」  そう言うと航平はアンブラをふりほどいた。 「え、なんで!?」 「ふっ、俺をただのおっぱいエクスプローラーと思うなよ? 俺は進化したんだ!」 「メティスの進化だと?」  それは沙織先輩のペルセポネと同じように進化したのだというのか? 「セカンド・・・お嬢様、お気をつけ下さい」 「えぇ、そうね・・・」  セカンドの恐ろしさを知ってる私たちは、このメティスに対して警戒する事しかできな・・・ん? 「あの、ちょっと聞いていいですか?」 「何かな、ルームメイトの美しいお嬢さん!」 「・・・」  俺、こんなルームメイトと一緒で良いんだろうか・・・ 「いくら俺が美しいからって照れることなどないだろう?」 「質問なんですけど、貴方の進化したというお名前は何というのかしら?」 「聞いて驚け!」  そう言うとその場で仁王立ちになる航平。 「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!   おっぱいを見ろと、俺を呼ぶ! 我が名はおっぱいエクスプローラー!セカンド!」 「・・・残念な所は変わらないのね」 「残念っていうなよー!」  相変わらず残念なメティスだった。 「でも凄いわ、進化した貴方は何が出来るの?」 「教えてあげよう、可愛いお嬢さん」 「・・・」 「進化した俺が出来ること、それは透視でもなく実際におっぱいを見て記憶すること!   そして脳内再生では脳内に限り触れることも可能になったのだ!」 「・・・」 「あれ? どうしてみんなそんな顔してるのかなー?」  進化したというおっぱいエクスプローラー、だがその基本理念は進化前と変わっていなかった。 「なら、後は簡単だな」 「えぇ、そうね」  私を含めた女性陣が、航平を取り囲む。 「・・・馬鹿な」  今俺は、私を含めた女性陣、と自分で認識してしまったことに凄く落ち込んだ。 「ふっ、女に対してだけ無敵のこのおっぱいエクスプローラー!セカンド ただでは死なん!」  あ、死ぬこと前提になってる。 「今こそ我が力すべてを解き放つ! おっぱいエクスプローラー!セカンド!!」  その瞬間、航平を中心に恐ろしいほどの力が放たれた。 「え?」 「っ!?」 「きゃん!」 「うそ!?」 「だめっ!」 「・・・」  私を含めた6人の胸がこの場にさらされた。 「覚えたぞ!あーははははっ!」  覚えられた瞬間、力の解放は終わり体は自由になる。俺をのぞいた女性陣はその場で蹲って胸を隠している。  その光景を見た俺は、自分の中で何かが切れる音が聞こえた。 「許さない・・・」 「そこまで堂々と胸をさらしたままでいられるとはな・・もしかしてそう言う趣味あるの?」  場違いな台詞のおっぱいエクスプローラーに対して、俺は静かに伝えた。 「おっぱいエクスプローラー!セカンド」 「な、なに?」 「おまえに一つ聞きたいことがある、そして一つ伝えることがある」 「えっと、順番に聞くけど、聞きたいことって何?」 「おまえは本当にあのおっぱいエクスプローラーなのか?」 「そうとも言えるし、そうとも言えないな。って、なんか格好良い台詞だな、これ」  何処までもふざけたメティスだった。 「それで、教えてくれる事ってなにかな? あ、バストサイズなら記憶してるからオッケーだよ。  今回は貧乳もとれたし満足だよ、それでは俺は次の記録を取りに行かせてもらおう」  その言葉を聞いた瞬間、俺は怒鳴り返す。 「先輩は貧乳じゃない!」 「・・・けーくん」  制服をなおしながら沙織先輩はあきれた声で俺を呼んだ。  その言葉を聞き流しながら、俺は姫川の手に触れる。 「ケイ・・・ちゃん?」 「借りるよ、アイギス!」 「な、に!?」  航平の逃げる先にアイギスを展開、そのまま航平の身体を俺達の方へと押し戻す。 「祐天寺!」 「はいっ!」  俺の声に緊張した返事をする祐天寺の手をとる。 「借りる、プロミネンス!!」 「なん・・だと?」  航平が驚く声が聞こえた。さすがのおっぱいエクスプローラーでも、俺のメティスの特性まで知らなかったようだ。  プロミネンスの炎で航平の逃げ道をふさぐ。 「まなみ!」 「はい、お兄ちゃん!」  まなみから鉛筆を手渡される、それと同時に流れ込むメティスの力。 「ペネトレイター!」  鉛筆を硬化する、およそ30秒間持つだろうその鉛筆を構えながら 「琴羽!」 「え、私!?」  驚く琴羽の手をとる。 「マーメイド!」  マーメイドの力を解放し、俺は航平に向かって走る。  以前マーメイドの力の話を聞いたとき、その水流操作は、体内でも出来るのではないかと推測した。  それが出来るなら、一時的に身体能力のブーストが出来るはず。  そしてその考えは正しかった、恐ろしい早さで航平との距離を詰めるが、身体中がその早さについていけない。  にわかマーメイドではこれが限界だろう。 「ちょ、ちょっとまって! それ、何か危険だから! おっぱいエクスプローラー!セカンド」  慌ててメティスを起動するおっぱいエクスプローラー、だが胸をはだけさせるだけのメティスなら今の俺に効果は無い。 「しまった! 露出狂の相手には効果がないのか!」 「俺はそんな趣味は無い!」  えんぴつを航平の目の前の空間で薙ぐ、ペネトレイターは強力すぎて人に直接あてるわけにはいかないからだ。 「ひぃっ!」  その風圧の鋭さに、倒れ込む航平。 「まだ伝えることを伝えてなかったな、おっぱいエクスプローラー」 「・・・」 「おまえの敗因は、俺を怒らせた、それだけだ」  俺の近くで待機してくれたアンブラ、これはディーオだろうか。そのディーオの頭を軽く撫でる。 「それじゃぁ行こうか、黄泉路への旅へ」 「イヤだっ! おっぱいの無い世界なんて行きたくない!」  慌てて逃げようとする航平の背中に向かって、俺は力ある言葉を叫ぶ。 「ペルセポネ!」 「けーくん!」  沙織先輩や皆の声を聞きながら、俺は航平を喰らったペルセポネに、俺自身が喰われていった。 「・・・喰われたはずだよな、おまえ」  目の前はピンクの空間、そしてそこに浮かぶはおっぱい。 「おっぱいエクスプローラーは無敵だ、そこにおっぱいがある限り、おっぱいを求める声があるかぎり  姿を、名前を変えていくらでもよみがえる!」 「・・・あ、そ」 「何その残念な子を見る目は!」 「いや、そのまんま事実だけど」 「俺は残念な子じゃないよ!?」 「で、このままだとおまえはまた復活するのか?」 「そうだ、求める心がある限り、我は不滅だ! もう次の名前も決めて居る」 「名前?」 「あぁ、単にサードでは面白くないだろう? 次はおっぱいリコレクションにしようと思う」  リコレクション、その意味は記憶・回想・回顧・想起。 「確かにおまえに似合ってる名前だと思う」 「そうだろうそうだろう、ならお前が我を継ぐのだ、おっぱいリコレクションを!」 「いや、その役目は俺じゃない」 「ならお前は何だというのだ!」 「おっぱいエクスプローラー、お前を終わらせるのが俺の役目だ。もういい加減消え去れ!!」  俺の背後からペルセポネの力の奔流が流れてくる、そして桃色の空間が黒に浸食されていく。 「いやだ、だめだ! おっぱいを消さないでくれ! あーーっ!」 「・・・ふぅ」  今度こそおっぱいエクスプローラーは消え去ったのだろうか。  喰らったのであれば、俺の中におっぱいエクスプローラーの保存した記憶があることになるのだが 「・・・良かった、思い出せるのは沙織先輩のだけだ」  それもすべて俺自身の記憶の中にある、沙織先輩のおっぱいだった。  どうやら今回もペルセポネのコントロール、上手くいったようだ。 「けーくんのえっち」 「え?」  振り返るが、そこに誰かが居ても見ることは出来ない漆黒の空間。  でも、居るのが解る。 「さ、沙織先輩!?」 「もう、けーくんっておっぱい星人だったんだね」 「ち、ちが・・・」  ここまで言いかけて、言うのをやめる。ペルセポネの空間の中では隠し事は出来ない。  だから本当のことを言う。 「沙織先輩のだけです、俺が好きなおっぱいは」 「うん、知ってる。だって、私はけーくんのだけの、女ですもの」 「沙織先輩!」 「さぁ、帰ろう」  こうして今回の事件も終わりを告げた。  航平はというと、今回も記憶が無く、MWI値を測定しても検出されなかった。  内密に処理したい学園側と俺達の利害の一致から、航平は今回も不問とされたが、  定期的に汀先生のカウンセリングを受けることとなった。  航平自身は逆に喜んでいるので問題はないだろう。  そして俺と沙織先輩はあのとき、アルゴノートに呼ばれた為に出来なかったデートでプールに来ていた。 「けーくん、もう無茶な事しないでね」 「ごめんなさい、沙織先輩、俺あのときカッとなって自分でも抑えられなくなったんです」 「あのとき・・・ねぇ、けーくん」 「ん?」 「あの、ね・・・けーくんは私の胸・・・おっぱいはやっぱり小さいと思う?」 「・・・」  水着姿の沙織先輩の胸を見る、そしてすぐに目を反らす。 「やっぱり小さいのかな」 「違います、平均だと・・・じゃない、サイズなんて関係ないんです!」 「けーくん?」 「俺にとって沙織先輩が一番なんです!」 「じゃぁなんで目を反らしたままなの?」 「・・・」 「けーくん!」 「・・・沙織先輩は自覚がなさ過ぎるんですよ」 「どういう・・・あ」  プールということはお互い水着姿なわけで、そうなると女性より男性の方が反応したことが  はっきりと解ってしまうわけで。 「・・・けーくん、もうプールから上がろうか」 「まだ来て間もないじゃないですか」 「うん・・・だから、更衣室には誰もいないと思うの」 「・・・」 「けーくんが好きだって、私の身体でそうなってくれたんだもん、お礼してあげないと、ね」 「・・・」 「ね、もうあがろっか」  デートに出発したのは午前中、プールに着いたのも午前中。そしてプールを出たのも午前中。  学園に帰ったのは夕暮れ時、その間のこと・・・まぁ、企業秘密ということで。  ただ・・・あんなに激しい沙織先輩は初めてだった。 「私だけそう言う風にいわないの! けーくんだって私がダメっいくら言ってもやめなかったくせに!」 「止めたらダメって言ったじゃないですか!」 「だから、ダメだって言ったの!」 「若いっていいねぇ」 「菜緒さんと宇佐美先輩は同い年のはずですけど・・・」  遠くで二人のあきれた声が聞こえた。 「ところで速瀬、なぜお前はあのときメティスを連続してコピーしたんだ?」 「・・・何故なんでしょうね」  理由は自分でも解っている、だが近濠先輩にあえて弱みを教える必要は無いので黙っておく。 「そうか、速瀬も男の子だというわけだな」  ・・・ばれていた。
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