Clochette カミカゼ☆エクスプローラー shortstory
*このページに直接来られた方へ、TOPページはこちらです。


・カミカゼ☆エクスプローラー! aftershortstory                     「おっぱい☆エクスプローラー!」 「それではアルゴノートの活動を始めます!」  いつもの祐天寺のかけ声でアルゴノートの活動が開始される。 「……あの、一ついいか?」 「何かしら?」 「俺、アルゴノートのメンバーじゃなくなったはずなんだけど?」  先に起きた警備会社「CSC」のとある部署が起こした事件の前に俺は  アルゴノートから除名されたはずだ。  そしてその後沙織先輩の指揮する新生風紀委員会に所属している。 「速瀬、忘れたのか?」  近濠先輩が会話に割り込んでくる。 「あの事件の時、風紀委員は活動停止になり解散しただろう?」 「はい」  黒幕が風紀委員の背後に居たために、あのときの風紀委員会は解散している。 「そのとき、速瀬とさおりんはアルゴノートへ所属した。  その後二人を除名してはいない」 「つまり、二人ともアルゴノートに所属したままなのよ」  嬉しそうな声の祐天寺。だけどもそれって…… 「都合良く俺たちを使いたいだけじゃないんですか?」 「そんなことはありません!」 「そんなことはないよ!!」  祐天寺の否定の声と、黙って聞いていた姫川の声が重なった。 「私はね、速瀬君を友達だと思ってるんだよ?  友達をそんな風に使うだなんて、悲しすぎるよ」 「あ……」  俺は言い過ぎたことに気づいた。 「ごめん」 「あ、うん、私の方こそ言いすぎたかも、ごめんなさい」  二人で頭を下げた。 「そろそろいいか?」  近濠先輩の言葉に二人で苦笑いした。 「私だって否定したのに……」  そんな近濠先輩の横で祐天寺がしゃがみ込んでのの字を書いていた…… 「覗き?」 「えぇ、生徒からそう言う話の依頼を受けてるの」 「女子寮を覗くのか、不届き者もいたもんだな」 「速瀬、残念だが違う」 「違う? それじゃぁ何処で覗きなんて起きてるんですか?  まさか学園の校舎内?」 「ぽち」 「はい、速瀬さん。被害者からの証言を元に資料を作りました」  景浦から手渡された資料に目を通す。 「……何これ? 場所がばらばらじゃない」  俺の横から資料を盗み見したまなみが言う。  確かに、覗きの被害があった場所はばらばらで、時間もまちまちだった。  それ以前におかしな場所がありすぎる。 「先輩、これって明らかに覗かれる場所じゃない場所で被害がありますよね?」  この資料にある被害を受けた場所と時間。  昼休みの中庭、屋上、朝夕の通学時の道路、さらに街中や女子寮の前。  澄之江の学生の行動範囲すべてが入っていると言ってもいいくらい被害箇所が広い。 「気づいたか、速瀬」 「え? 何かおかしい所あった?」 「まなみ、この被害を受けた場所だけどさ、ここでどうやって覗かれるんだ?」 「あっ!」 「普通こんな所で覗かれるような事は無いし、しているはずもない」 「その通りだよ、速瀬。こんな所で覗きの被害を受けるような場所では無いし  万が一覗かれるような格好をしているとしたら、それは露出趣味以外の何物でも無い」 「いや、趣味はおいといて……というか、こんな場所で覗かれたっていう証言が  出ることが不思議なんですけど?」  覗かれるような格好をしている場所は一つも無い。  制服か私服かは別として、ちゃんと服を着ている屋外なのだから。  敢えて言うなら、スカートの中を覗かれた、という被害だろうか? 「速瀬さん、みんなが覗かれた場所なんですけどね、その……」 「祐天寺?」  顔を赤くしてなんだか言いにくそうにしている。 「お嬢様、その先は私が説明致します」  近濠先輩が話を引き継ぐ。 「速瀬、被害者は全員、胸を覗かれたと証言しているんだ」 「……胸?」  胸って、おっぱい? 「いや、それこそおかしいでしょう? スカートの中ならともかく、しっかりと服を  着込んでいるこの場所で胸を覗くだなんて……っ!」  普通にあり得ない覗き、だがそれを可能にする力が存在する事を思い出した。 「メティス、ですか?」 「まだ確証はとれてない、だがその可能性はあると思う」 「そうですね、メティスを使うという前提で考えれば可能でしょうね。  無機物の透過のメティスとか、遠見のメティスとか、色々と考えられます」 「遠見?」 「はい、まだ理由はわかりませんが被害者はすべて胸を覗かれてると証言しています。  しかし、覗かれてるのはわかるのに犯人は近くにいないんでしょう?  いるならそれらしい報告があるはずです」 「あぁ、被害者の近くに不審人物は居なかったそうだ」 「つまり、犯人は遠くからおっぱいを透けてみているっていうこと?」 「まなみさんの意見が一番現実的ね」 「……」  祐天寺に肯定されたまなみは俯いて震えだした。  そりゃそうだろう、女の子がどこからともなく素肌を盗み見されるだなんて  恐怖以外の何物でも無いもんな。 「……許さない!」 「まなみ?」 「ぜーーーーったいっ! 許さない!! 女の子の肌を覗く変態は成敗する!!」  まなみは袖口から鉛筆を取り出す。 「どんなに遠くだろうと、視線を感じたら私のペネトレイターで貫く!!」 「それは駄目だ」 「お兄ちゃん?」  俺はまなみの肩に手を置いた。 「まなみの気持ちはわかる、けど視線だけで鉛筆を放つのは危険過ぎる。  ペネトレイターでは無関係の物まで貫いてしまうからな」 「……そう、だよね。ごめんなさい、お兄ちゃん」 「わかれば良いんだよ、まなみ」  俺はそっとまなみの頭を撫でる。 「まなみ、どうせやるなら犯人を見つけてからにしよう」 「うん!」 「……」 「ん? どうしたの、みんな?」  何故か周りが疲れた顔をしていた。  この事件に対してアルゴノートは警戒を強化しつつ、被害ポイント周辺を巡回することとなった。 「どうしたの、慶司」  部室からの帰り道、一緒に歩いてた琴羽に聞いてみることにした。 「一つだけ疑問が残るんだけどな……どうして洋服を着ている女子が素肌を覗かれたって  わかるんだ?」 「ふふっ、慶司。女の子は視線に敏感なんだよ?  いつも慶司がおっぱいばかり見てるのも相手にはばれてるんだからね」 「なにっ!?」  俺はいつも沙織先輩のおっぱいばかり見てるわけじゃないのだけど、動揺してしまう。 「あははっ、慶司も男の子だよね」 「……当たり前だよ。それよりも琴羽は女の子なんだから注意しろよ?  と言ってもメティス相手じゃ注意しようにないだろうけどな……?」  隣を歩いてる琴羽の反応が無かった。 「琴羽?」 「あ、え、なんでもない。忠告ありがと、それじゃねっ!」  なんだか琴羽は慌てて立ち去っていった。 「けーくん!」 「遅くなってごめん、沙織先輩」  本来所属してる風紀委員の部室にやっとついた。 「ちょっと近濠先輩に捕まってたんだ」 「祐天寺機関に? また何か企んでるの?」 「それについて俺から先輩に話すことがある」  アルゴノートでの出来事を沙織先輩にも説明した。 「確かに風紀委員に報告は無いですけど見逃せないですね。  それに放っておくと私だって被害者になっちゃうかもしれないですし」  沙織先輩の言葉に、俺はぞっとした。  そうだ、沙織先輩だって覗かれてしまうかもしれないんだ。  あのすばらしい手のひらサイズの沙織先輩のおっぱいも…… 「けーくん、今何を考えてるのかな?」  先輩から恐ろしいほどのプレッシャーを感じた。  だが、今の俺にそのプレッシャーは感じない、なぜなら俺は怒ってるからだ。 「許せない……」 「え?」 「許せないんです、沙織先輩」 「きゃんっ!」  俺は興奮したまま、沙織先輩の両肩をつかむ。 「俺の沙織先輩の肌を覗くだなんて、絶対に許せないんですよ!!」 「けーくん……大丈夫だからおちついてね、けーくん」 「あ」  俺は沙織先輩に抱きしめられた。 「私はけーくんだけの……お、女だもの。他の人になんて絶対見せないから  安心して」 「でも……」  もし透視と遠見のメティスなら沙織先輩だって…… 「ふふっ、大丈夫だよ。アンブラ!」  沙織先輩がメティスを発動する、けどディーオ達は出てこない。 「ほら、こうしておけば大丈夫だよ」  そう言って沙織先輩は制服の胸元を広げて見せた。  誘われるようにそこに見ると 「あ!」  そこに見えるはずの肌は見えず、黒い闇が広がっていた。 「こうすればメティスに対抗できるでしょう? だから安心して、けーくん」 「……」 「けーくん?」 「すごいです、さすが先輩です!!」 「きゃっ!」  今度は俺の方から先輩を抱きしめる。 「アンブラもすごいですし、先輩もすごいです!」 「け、けーくん……そんなに褒めても何もでないよ?」  メティスに対抗するためにはメティスしかない。  その対抗手段をすでに見つけている沙織先輩はやっぱりすごい先輩だ。 「これで沙織先輩は安心ですね」 「うん、でも風紀を乱すメティスパサーなら捕まえないとね」 「はい! 絶対捕まえましょう。そして沙織先輩の肌を覗こうとした報いを  受け手もらいます!」 「まだ見られてないんだけど……」  ジト目の沙織先輩だった。  それから数日が過ぎた。  巡回を強化しているにも関わらず、被害者は増えていった。 「よほど敵は用心深いようだな、だが相手が悪かった」  近濠先輩はアルゴノートの部室で宣言した。 「確かに近濠先輩相手には分が悪いですよね」 「速瀬は私の事をどう思ってるのかあとで問い詰めるとして……ぽち」 「はい」  景浦がホワイトボードに資料を張り出した。  以前より被害箇所が増えているが、やはり被害箇所の一貫性は無い。 「流石に敵はやり過ぎた。ここまで被害情報が増えれば、それだけ相手を  特定しやすくなる」 「そう、ですね……」  確かに一貫性は無いように見えるが、ここまで情報が増えれば見えてくるものもある。 「このポイントだと……ここですね」 「その通りだ、被害箇所は確かにばらばらだが、視線を通すポイントは自ずと限られてくる」  被害箇所を直視出来る場所に印をつけていく。 「時間がばらばらなのは犯人が単独犯だからだな、こればかりはどうしようも無い」 「それじゃぁこのポイントを全部探すんですか?」  ぽちの疑問も当然だから肯定する。 「それしかないだろうな……でも近濠先輩。相手を特定出来ると思いますか?」 「難しいだろうな」  メティスの発動はそのメティスによって様々だ。  祐天寺のプロミネンスは炎を生み出すから見た目で発動がわかる。  だが、姫川のアイギスは見た目では全くわからない。  尤もわかりづらいのは汀先生のディスカバリーがある。あのメティスは発動してるかどうか  全然わからない。 「それでも、やるしかないだろうな」 「そうね、学園の生徒の、女性の平和を脅かす覗き魔は絶対に捕まえなくてはならないわ!  アルゴノート、出動よ!」  不安を残しつつも動くしか無いアルゴノート。  その不安は杞憂に終わった。 「マニアの仕業?」 「そうだったんです」  風紀委員会の部室で沙織先輩手作りのクッキーを食べながらのお茶会。  アルゴノートの活動に強制参加させられて遅くなったお詫びをしてから、今日あった  出来事を報告していた。 「遠距離からの望遠レンズによる盗撮、ご丁寧に赤外線付きカメラでした」  盗撮できるポイントのいくつかに当たりをつけて行った場所に居た不審者。  明らかに怪しい装備をしていたので追求しようとしたら逃走した。  しかし、祐天寺のプロミネンスの威嚇の前に不審者はあっさり投降したのだった。  幸い、というのも変だがマニアの犯行ででディスパサーではなかった。 「これでこの事件は解決だね、けーくん」 「……」 「けーくん?」 「沙織先輩、恥を忍んで質問してもいいですか?」 「え、恥ずかしい質問?」  沙織先輩の顔が真っ赤になる、だがきいておかないといけない。 「女の人は視線に敏感だって聞きました」 「うぇっ? あ、うん、そうだけど……けーくんの視線がいつも何処に向いてるか  わかってるし……」 「……我慢できずにごめんなさい」 「謝るの早いよ!?」 「えっと、本題に戻しますけど、遠距離からの赤外線付きカメラで撮影された場合って  視線って感じる物でしょうか?」 「ん……多分、わかると思うよ」 「……それは何処を見られたかってのもわかるんですよね」 「それは……人それぞれかも。でも見られてるっていうのはわかると思う」  沙織先輩の言葉に、俺の疑問は確信となる。 「犯人は別に居るな」 「本当?」 「あぁ、普通の盗撮犯の犯行と思えない箇所があるしな」 「けーくん、どうするの?」 「とりあえず今日は帰りましょう、時間も遅いですし」 「そうだね、それと犯人捜しは私も協力するからね」 「ありがとうございます、沙織先輩」 「けーくんは放っておくと危ないことするから、心配なの」 「そんなことは無い……」 「あのときのセカンド」 「……」 「けーくん?」 「善処、します……」 「もぅ、けーくん。ここは嘘でも、はいって言うところでしょう?」 「先輩相手に嘘はつきたくないですから」 「もぅ、けーくんったら……でも、なるべく危ない事はしないでよ?」  俺は頷いた。 「けーくん、信じてるからね」  先輩からの信頼を、その想いの重さを忘れないように心がけた。 「とは言っても手詰まりなんだよなぁ」  寮に戻ってから風呂に入りながら考える。  あのときの近濠先輩の資料では不確定要素は多すぎる。今回不審者が見つかったのは  良くも悪くも偶然なのだ。  警察の取り調べで余罪などの情報がこちらに来れば、少しは捜査の幅を狭められるかも  しれないが、そう言う情報が学生にもたらされると言うことは無いだろう。 「犯人は別に居る……取り越し苦労なら良いんだがな」  脱衣所で服を着て廊下にでる。 「お、航平」  入れ違いに大浴場に航平が入って来た。 「よ、慶司はなんだかお疲れ様だな」 「まぁな、ちょっとした事件に巻き込まれてるだけだ」 「相変わらずだな、まぁがんばれよ」  そう言うと航平は俺の肩を叩いて…… 「っ!?」 「どうした?」 「あ、いや、なんでもない」 「そっか、じゃぁまた後でな」  航平は大浴場に消えていった。 「……まさか、な」 「どうしたんだ、慶司。こんな所に呼び出すなんて」  翌日の放課後、俺は航平を校舎裏に呼び出した。 「単刀直入に聞く、お前は誰だ?」 「何言ってるんだよ、慶司のルームメイトの浜北航平だろう?」 「そうか……なら航平。お前はいつ、メティスパサーになったんだ?」 「な、なんでそんなことを聞くんだよ? 俺が一般生徒だって知ってるだろう?」  あっさり動揺する航平を見て、俺は確信した。だからトドメの一言を伝える。 「なぁ、航平。汀先生が帰ってきてるんだ。その意味、わかるだろう?」  俺の一言に航平の顔つきが変わ……ったように見えた。 「なんだ、もうばれてたのか。なら隠す必要なんて無いな!」  そう言って片手を額にあて、片目を隠すポーズをとる。 「俺はメティスパサーになった! もう脇役なんかじゃない。これからは俺が  主役なんだ! いつも沖原にびくびくする毎日は……」  そこで身体を震わせる、片目を隠すポーズからそのまま、目頭を覆う。 「ほら、これを使えよ」  俺はハンカチを渡す、そのときの一瞬のふれ合いを利用する。 「すまないな」  ハンカチで涙を拭う、それほどまでに琴羽に恐怖感を植え付けられてたのか…… 「さんきゅ、慶司」 「あぁ、それで続けるか?」 「そうさせてくれ」  航平はコホンとわざとらしい咳払いをしてから、また片目を隠すようなポーズになる。 「俺はメティスパサーになった、この力で世界制服するために!」 「……」 「……」  航平の言葉にあたりが沈黙に包まれた。 「あのー、慶司さん? つっこみとかないのかなー?」 「あ、あぁ、澄まない。ついに残念な人になったのかなぁ、って感慨深く思っただけだ」 「俺残念な子じゃないよ!?」 「わかったわかった、それで航平。お前のメティスってなんなんだ?」 「よくぞ聞いてくれました!!」  航平は胸を張り手を変な角度に上げて、よく解らないポーズをとる。 「ほんの一瞬でいい、女の子をみただけで俺の脳内ライブラリーに鮮明のその女の子の  おっぱいが記録されるのだ!!  その名も”おっぱいエクスプローラー!”!!」  そういってポーズを変える航平。 「……」 「……あの、慶司くん? つっこみとか合いの手とかないのかなぁ?」 「あぁ、すまん。残念だなぁって以下略」 「だから残念な子じゃないよ!それに以下略ってなんだよ!?」 「わかったわかった、じゃぁ一つ質問、いいか?」 「おう、ばっちこい!」 「そのメティスでどうやって世界中の制服を集めるんだ?」 「……」 「お前の言う世界征服って征服するほうじゃなくて着る制服の方なんだろう? 「……」 「それに、胸の部分を透視しちゃうんだろう? 制服姿の意味が無いと思うんだけど」 「……しまったぁ!!」  その場でしゃがみ込む航平。こうしてみると航平のままなんだけどなぁ……  俺はその光景をみながら合図を送る。 「アンブラ! 急に目隠しされて振り返ったら誰も居ないの刑!」 「なに、おわっ!」  航平にアンブラがまとわりつく、それを振り払おうと立ち上がる。 「続いてアナタの知らないサスペンションの刑!」 「のわっ!」  航平は倒され、アンブラに拘束された。 「これで良し、と」  とりあえず逃げないようにロープで拘束した。 「くっ、まさか伏兵がいるとはな」  縛られてもなお妙なポーズをとる航平。 「沙織先輩、メティスに目覚めると人格って変わることはあります?」 「な、慶司! 俺の格好良い台詞を無視するな!」 「はいはい、残念残念」 「だから残念な子じゃないー!」  騒ぐ航平を無視して、沙織先輩の答えを促す。 「過去にそう言う礼が無かった訳じゃ無いけど……まだメティスにはわからない事の  方が多いからね」 「そうですよね……もう一つ聞きたいんだけど」  こっちの質問が本題だ。 「危険なメティスが発言した場合、メティスパサーはどうなるんですか?」  俺の質問に騒いでた航平がびくっとして静かになった。 「メティスは人の欲求だから、押さえつけるといつかは暴走しちゃうかもしれない。  だから訓練や教育でメティスを制御出来るようにするんだけど……」  そこで一区切りをつける沙織先輩。 「それが出来ない場合は?」 「……しかるべき機関で制御が完全にできるまで幽閉されるかもしれない」 「え? 俺が幽閉!?」  俺の予想通りの答えだった。  制御出来ないメティスは危険だ。それを防ぐにはメティスを使えない環境、または  発言しても被害が起きない環境にメティスパサーをおき矯正するしかない。 「お、俺はやだよ? おっぱいの無い所にいくなんて絶対に嫌だよ!!」  真剣な表情で訴える航平。 「自業自得、なんだけどな……」  航平が好きこのんでこのメティスを発言させたかはわからない。  だが、それを実行させて被害報告が出たというのなら…… 「やるしかない、か」 「けーくん?」 「沙織先輩、先に謝っておきます。ごめんなさい」 「けーくん! 何をするの!」  俺は沙織先輩の方に向いて、今俺の中にあるメティスを解き放つ。 「おっぱいエクスプローラー!」 「なっ!?」  後ろで航平の驚く声がするが、無視する。 「け、けーくん? やだ、何処見てるの!?」  沙織先輩は両手で胸を隠す。  しかし俺の脳裏には沙織先輩の小さなおっぱいが鮮明に焼き付けられた。 「やっぱり俺は沙織先輩の胸が……おっぱいが一番だと思います」 「やだ、けーくんったら何いうの!?」  沙織先輩のおっぱいを堪能したら、孝平〜コピーしたメティスを終了させる。  これで俺本来のメティスが起動状態となる。 「沙織先輩、俺を信じてくれるんですよね」 「もちろん! でも胸を見られた今はちょっと不安だけど……」 「それは、その……ごちそうさまでした」 「けーくん!?」 「……沙織先輩」 「え?」 「必ず帰ってきますから」 「あっ」  俺は沙織先輩に口づけした。 「……んっ」 「沙織先輩、では行ってきます」  俺は沙織先輩に背を向けた。 「航平、俺はお前を友達だと思ってる。だから……助ける」 「慶司? 何をする気だ?」  俺は力ある言葉、メティスネームを唱える。 「ペルセポネ!」 「けーくん!?」  二度と使えない、使えたとしても使うことは無いと思った、あのときのメティスを  起動させる。予想通りジョーカーはアンブラの完全なコピーを行っている。  それ故に、ペルセポネも起動できた。 「ペルセポネ! 航平のメティスだけをすべて喰らえ!!」  生まれ出た影の腕が、航平をとらえ、そして身体の中に入っていく。  それと同時に俺自身もその影の中に取り込まれて……ペルセポネとともに、闇に墜ちた。  気がつくと前と同じ、漆黒の空間に…… 「って、おい!?」  思わずツッコミをいれるほどの場所に居た。  足下が見えず浮かんでいるような沈んでいるような、ただ立っているだけのような。  そんなペルセポネの漆黒の空間の中にいるはずなのだが。  何故か漆黒ではなく桃色の空間だった。 「航平の思考って年がら年中桃色ってことなんだろうな……あれ?」  ふと気づく、前の時はすぐに大量に流れ込んできた、相手の記憶が全く無い。  と、いうことは…… 「上手くいったのか? 航平のメティスだけ喰らえたのか?」  俺がそうつぶやいた瞬間、周りの景色が変わる。 「なっ!?」  景色が変わる、というか桃色の空間に女性の胸の部分をアップしたような映像が  所狭しと浮かび上がってくる。  そういえば航平が言ってたっけ、一度見たおっぱいを記憶してるって。  つまりこのメティスは鮮明に見た物を記憶する能力もあるということだな。  ……それがおっぱい限定っていうのが航平らしくて残念だな。 「しかし、結構きついな」  周りに浮かんでいるおっぱいの映像、それはあまりにリアルだ。  立体感もあり、手でつかめそうな、柔らかいってわかるその揺れ。  見えるのがすべておっぱいだけ、俺はこんなのでは何も感じなかった。 「何を言う!」  俺のつぶやきにが答えた者が居た。 「誰だ?」 「私は、この世界そのものだ!」 「……」 「あのー、もしもし? つっこみとか反応が欲しいんですけど?」 「あ、すまん。やっぱり残念だったんで」 「俺は残念じゃないよ!?」  この反応、間違いなく航平だ。やっぱりペルセポネは航平の記憶も取り込んでしまったのだろうか?  いや、違うな。  航平の意思に近いものは感じるが、航平の記憶は感じない。  俺が確認をしてると、自称世界は話を続けてきた。 「貴様はこの世界の良さをわからないようだな」  俺に反応しろと言っておいて反応しないと無視ですか…… 「ここはおっぱいの楽園! おっぱいのおっぱいのためにあるおっぱいなのだ!」 「理解できん」 「なら理解させてやろう、この世界が集めた思考のおっぱいを! すべて見るのだ!」  その瞬間、俺の脳裏に恐ろしいほどの映像が流れ込んできた。 「つぅっ!」 「どうだ、すばらしいおっぱい達だろう!」  映像として流れ込んでくるのはおっぱいだった。  揺れるおっぱい、震えるおっぱい、おっぱい、おっぱい……  無理矢理流し込まれてくる映像は脳に負担を掛ける、酷い頭痛がするのだけど。 「この頭痛は脳の負担なのか、それとも頭が痛くなる内容だからだろうか」  ……うん、間違いなく後者だな。 「どうだ、このすばらしいおっぱいの数々、貴様にもわかろう?  そして世界を受け入れるのだ! 貴様は新たなおっぱいエクスプローラーの  使い手になるのだ!!」 「ったく、馬鹿じゃないか?」 「何?」 「見るだけのおっぱいに何の意味がある?」 「なん……だと?」  俺の言葉に世界が揺れる。 「俺にはな、大好きな先輩がいるんだ。もちろん、おっぱいだって見放題だし  さわり放題だぞ!」 「なにぃぃ!!」  俺の言葉に世界は羨ましそうな意思を見せる、ってかどんな世界だよこれ。 「こんな世界でじっとなんてしてられない。俺は、沙織先輩の所へ帰る!  だからっ!」  そして俺は力を込める。 「おっぱいエクスプローラーよ、ペルセポネの闇と共に消え去れ!!」 「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」  俺の言葉と共に、桃色の空間は漆黒に染まっていく、いや、浸食していった。 「……ふぅ、終わったな」  目に優しくない桃色の空間は、今は闇一色となった。 「目には優しいけど……あのときと一緒で何も見えないな」  それでも周りを見渡す、どこかに出口があるはず。 「見えないな、出口」  必ずあるはずの、出口が見えなかった。  俺一人じゃ見つけられないのだろうか? 「参ったな……」  このままじゃ帰れないかもしれない。  ずっとずっとこの闇の中に閉じ込められたままでは? という不安が押し寄せてくる。 「……帰る、俺は帰るんだ! 沙織先輩の……沙織の所へ帰るんだ!」 「けーくん……」 「沙織先輩!?」  姿は見えないけど、確かに声は聞こえた。  俺はその声の方に向かって歩く。 「こっちだよ、けーくん」  どれくらい歩いたかわからない、少しかもしれないし長かったかもしれない。  気づくと目の前に沙織先輩が浮かんでいた。 「あんまり遅いから、来ちゃった」 「沙織先輩……」 「でも迎えに来て良かった、けーくん、迷子になってたでしょう?」 「そ、それは……」 「くすっ」  ペルセポネの空間の中ではお互いの意識は丸見えで、隠し事は出来ない。 「もう、けーくんったらえっちなんだから」 「沙織先輩? 何を見たんですか!?」 「言ってもいいの?」 「ごめんなさい」  俺はすぐに謝った。 「さぁ、けーくん。帰ろう? 私達の世界に」  赤外線スコープを使った盗撮犯は逮捕され、警察で事情聴取を受けているそうだ。  その影に隠れたメティスパサーによる事件は、名密に処理されることになった。  CSC事件の直後ということもあり、メティスの関わる事件の公表はメティスパサーへの  不安を煽る事となるが、今回は特例中の特例となった。その理由は 「メティスに意思があったのか? そして浜北航平はそのメティスの意思に  乗り移られていたということになるのか?」  近濠先輩の報告書にはそう書かれていた。  これはこの事件のあった間の航平の記憶が所々失われている事が理由だった。  その航平は、と言うと記憶が欠けている事以外は至って正常だった。  検査の結果、MWI値は検出されず、今は依然と変わりない生活を送っている。  そして俺はというと、ペルセポネによる大きな影響は受けて無く平穏に過ごせていた。 「だからって、またペルセポネを使うなんて良い訳ないでしょう?  心配したんだからね!」 「ごめんなさい、でも約束通りに帰ってきましたから許してください」 「うん……そう言われちゃおうと……でも、けーくん?」 「……」 「けーくん、私のおっぱいは見放題だからって、そんなに見られちゃうと……」  影響は完全に無かったわけじゃないのかもしれない。  あの事件以来、俺は沙織先輩を今まで以上に愛おしく感じてしまっている。 「そ、その……」 「ふふっ、見放題だけじゃなくてさわり放題なんだよね?」 「……」 「おっぱいだけで、いいの?」 「沙織先輩……っ!」  沙織先輩からの甘いとろけるような、キス。 「影響、残ってるんでしょう? 言わなくても私にはわかるの。  だからこそ……」 「あんなメティスの意思なんて忘れさせてあげる」  その言葉の直後に、俺は沙織先輩に押し倒された……
 続きはこちらから ・カミカゼ☆エクスプローラー aftershortstory            おっぱい☆エクスプローラー!セカンド
[ 元いたページへ ]