「開業歯科麻酔認定医のためのフォーラム」記録

               書記:清光義隆(大阪府開業)

1.足立先生の挨拶

2.染矢会長の挨拶

「大学、学会としては開業認定医の先生方をバックアップする体制は残念ながらまだ できていない。これからの先生方の活動の場を作っていく責任は感じている。
次の学会会 長にもこのフォーラムの開催を引き継いで行くように働きかけたいと思っている。」

3.望月先生よりこのフォーラムが開かれるようになった経緯の説明

4.開業と歯科麻酔のかかわりについての話題提供

(1)氷室先生:自院での全身麻酔による歯科治療の実践の話

(2)梅村先生:歯科医師会の活動に参加しての障害者・有病者歯科の実践

5.フォーラムにおける論点

(1)自院における全身麻酔について

 別府先生(久留米市開業):「障害者の全身麻酔をやっているがひやっとすることがある。聖マリア病院では静脈内鎮静法をやっていたが、今年開業してからは自院で全麻を始めた。他の補綴や保存などの技術より麻酔をすることの方に自信があるので、経済効率が良いともいえる。
足立先生:「事故が起こった時の対応は?」
氷室先生:「福岡歯科大学に挿管したまま搬送できる。MHはダントロレンなどの薬を入手できる経路が必要であるが、MIなどもどうなるかわからない。ただし、前もって予想のつく症例には手はださない。」
足立先生:「インフォームドコンセントはどのようにされていますか?」
氷室先生:「万一の場合は死ぬが、帰りにタクシーに追突されるよりは可能性は低いといっている。」
足立先生:「全麻をかけるスタッフはどうしてられますか?」
氷室先生:「福岡歯科大学から呼んでいたが、現在は認定医をめざしている自院の後輩にさせている。」

(2)静脈内鎮静法と笑気吸入鎮静法の経済的側面について

氷室先生:「ISはパイピングをしておいても必ずいつかはペイする。毎日1例、すなわち月3〜4人の患者がいれば充分ペイする。」
植田先生(群馬県伊勢崎市開業):「静脈内鎮静法をやっているがこの前集団的指導を受けた。一件あたり2400点ということで呼ばれた。モニターはコーリンのBP508(500万?)を買ったが、保険点数の算定はまったくできなかった。鎮静法を自費扱いでとるのも混合診療になるのでやってはいけないと技官に言われた。しかたがないので薬価の高いフルマゼニルを使用したことにしてカバーしている。」
足立先生:「私はドルミカムのIVSとISを併用することが多いのですが、IVの予約をいれる時間はどうしているのですか?」

植田先生:「一日20人ぐらいで一人1時間の治療時間をとって2人のドクターでやっている。IVSは9時から始めて2〜3時までSaO2,EtCO2でモニタリングしている。」
足立先生:「私のところではパルスオキシメーターは保険でとおっている。」
増井先生(神奈川県平塚市開業):「心疾患がないとSaO2はとれないとの通知がでているはずですが?」
梅村先生:「ECGは局麻を使用した処置については心疾患の病名があるととおっています。」
篠塚先生(千葉県佐原市開業):「歯科麻酔学会を通して行政や歯科医師会に伝えてもらって、保険のワクをはずしていく必要があるのではないか。」

(3)歯科医師会や公的医療機関との関わり

梅村先生:「私の属する兵庫県ではすでに歯科医師会が在宅診療や障害者診療を始めていたが、まだシステムのできていない地域では、これから認定医に声がかかってくる可能性があるので協力していってほしい。」
氷室先生:「歯科医師会とは別に個人のプライベートとしてやってもいいのではないか?もちろんお声がかかれば協力していく。現実には個人的な紹介で、むずかしい障害者がまわってくることがある。」
川田先生(札幌市日の出歯科院長):「全麻、IVSをやっている4年目の有床歯科診療所です。歯科医師会との関係は真駒内の分院を作るときに開院に大反対されたために協力関係はありません。
古屋先生(千葉県八千代市開業):「在宅診療や市の訪問診療に関与している。予診委員会で今まで在宅をやっていた先生に優先的に患者をまわしているのでバランスよくいけている。」
氷室先生:「古屋先生のところでは、歯科医師会のマニュアルで診療内容をしばるようなことはないのか?」
古屋先生:「マニュアルは確かにあるが、口腔外科医や歯科麻酔医がついて、抜歯や根管治療もおこなっていて、内容についての制限はない。」
藤先生(小松病院歯科口腔外科部長):「歯科麻酔出身1名、口腔外科出身1名と私の常勤3名で歯科口腔外科をやっている。年間で障害者の全麻が30件、口腔外科の全麻が40件位やっている。病院としては歯科医師会とはあまり仲がよくない。これからの病院歯科は口腔外科出身者のみではなく、歯科麻酔出身者と一緒にやっていくような動きを作っていかなければならない。MDは病院を出ても麻酔医であるが、DDSは病院を出たら歯科医でしかない。歯科麻酔認定医の活動できるパイを増やしていくためには、抜歯やすべての歯科治療が在宅でできることにしてしまうよりは、病院歯科としての役割の重要性を高めた方がよい。

(4)まったく異なった視点からのアプローチ

A)山本先生(和歌山県粉河町開業);笑気吸入鎮静法を健康人にも積極的に用いた『快適歯科診療』の話
B)福田先生(東京都赤坂開業);静脈内鎮静法を自費診療として用いている話

谷田部先生(新潟大学歯学部講師):「IVSは製薬会社が鎮静法としての使用を希望していないので治験をやろうとはしない。したがって保険点数はつかないだろうと考えられる。しかし、鎮静法を自費の診療行為として行うのは混合診療に相当するのでやめた方がよい。
櫛淵先生(東京都練馬区開業):「開業するならば治療用ユニットの台数を減らしてでも良いモニターを購入してISをやった方がよい。12誘導の心電図やパルスオキシメーターなどの検査資料を添えて内科に対診に出すと、内科と良い関係がもてる。
望月先生(静岡県清水市開業):「IVSはもし保険に採用されたとしたら何点になると思いますか?個人的には保険には入れるべきではないと思っている。認定医が行うのでなければ事故が起こってしまうと考えられる。」
谷田部先生:「500点は欲しいが、保険に入れた方が患者にも理解されるようになるので、50点でも100点でもついた方がよい。しかし、まず現実には無理だろう。衛生士実地指導料のように意味づけをしたい。
望月先生:「IVSを自院でやっておられる方はどれくらいいますか?約半数の方が手をあげられましたが、私は認知のために保険に組み込まない方が良いと思う。氷室先生はどうですか?」
氷室先生:「静脈麻酔の120点は欲しい。」
望月先生:「逆に足かせになって低すぎるコストで働かねばならなくなるのではないか。」
(櫛淵先生:心電図の点数を査定されているときの対策についてコメントあり。)
藤先生:「内科医は内視鏡検査をするときによくミダゾラムを使っているが保険点数はとっていない。逆に局麻の手術でIVSをやるときには笑気を追加して、全麻の点数を算定している。

(5)開業認定医ネットワークの必要性と今後の展望

 波多野先生(青森県開業):「一人でやっているので、このようなネットワークでいろんな人の話が聞けるのはありがたい。」
藤先生:大学にいる若手の先生達の未来の目標として、このようなフォーラムを続けてほしい。病院歯科の認定医も仲間に入れてほしい。」
清光先生(大阪市開業):「このフォーラムに参加していくなかで、開業認定医という新しいジャンルの枠組みで自分の立場が考えられるようになった。私は開業してからまだ認定医としての知識と技術を積極的に生かしていないが、これをきっかけにISを始めようとしている。今ここに集まっている熱心な先生以外にもそうした先生もいると思われるので、開業認定医の資格を持ったみんなが参加できるように、緩やかではあるが情報伝達の速い連携を作っていったらどうだろうか。」