この旅の写真はココ(03/2月〜3月)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

ハヌマン・ジー


ハヌマンジー現る

聖地ハリドワールのガンジス河原はきれいに整備されている。きれいすぎてなんだか有り難味が薄れているような気もしなくもないが、やはり聖地であるからして、ここにもヒンドゥの修行者・サドゥはたくさん住んでいる。

遠くから陽気に声をかけてくるサドゥもいれば、ニコニコと手招きして話をしようとするサドゥもいる。しかしまことに申し訳ないが、「陽気さ」「親しみやすさ」と「威厳」は同居できないものであるようで、こういうサドゥはなんかイマイチありがたくない。なので、たまに木下でじっと瞑想しているように見えるサドゥなど見かけると嬉しくなり、思わず合掌して挨拶してしまうえび夫妻。軽く手を上げて挨拶を返してくれるサマもなんか本物っぽいぞ。

そうやって川原のサドゥウォッチングを楽しみながら散歩していたある日の事である。前方から奇っ怪な様相の人物がタラタラと歩いてくるのが見えた。いや、周りにたくさんいるサドゥたちも、日本のレベルで言えば十分すぎるほど奇っ怪な様相なのだが、その人物の奇っ怪さはさらに際立っていた。そしてえび夫妻がその人物を認めるのとほぼ同時に、向こうもこちらを見つけたようだ。そのとたん、タラタラと歩いていた彼の目つきが変わった。そして、


「クエーッ!!」

一声の雄たけびをあげたかと思うと、何やら謎の音を発しながらまっすぐにこちらにやってきた。いや、ちょっと驚くって、これ。だって、こんなん→だよ。

彼は、圧倒されているえび夫妻の前で

と、ひとしきり鳴いたかと思えば、次は

何かに耳を澄まし、

そしてようやく人間の言語を発したかと思えばこんなセリフ。


一生懸命、これを繰り返している。この一連の行動をえび夫妻2人で協議した結果、下のように解釈された。



◆新聞を拾い読みなさるサドゥ。















◆メイクもあでやかなハヌマンジー。

 

 

ベッベッ → 動物の鳴き声には間違いないだろう。ハヌマン(ジーは日本語の〜さんにあたる敬称)は猿の神様だから、これは猿の鳴き声のつもり?(猿にしてはあまりに特殊だが)という事は、彼はハヌマンジーの化身か何かなのか?

何かを聞く → これはハヌマンジーからのお告げを受けているサマ?

ハヌマンジー、チャパティ、50ルピー → ハヌマンジーはお腹がすいていらっしゃってチャパティが食べたい、だから50ルピー献上しなさい・・・?


頑張って猿になりきって(?)鳴き声をあげる彼なのだが、「チャパティ、50ルピー」の部分だけは如何ともしがたいらしく、その部分だけ人間の言葉になっているところが何とも悲哀を感じさせるではないか。まあ要するに「腹減ったから金くれ」って事だろうけど、その為にこんなメイクをして、こんなパフォーマンスを繰り広げる彼に乾杯。ポケットに入っていた10ルピーを惜しみなく進呈してさしあげた。

その金額を見て、一瞬ハヌマンジーの顔が曇ったが、
「チャパティ、10ルピー、バス(チャパティげな10ルピーで十分ばい)」
というえびの言葉に納得したのか、大人しくその金を受け取った。さすがはハヌマンジー、聞き分けがよいのだ。

そしてこのハヌマンジーを是非とも写真におさめなければ、とカメラを構えると、



超特急で座ってポーズを取られるハヌマンジー
(あまりにも可笑しくてこれ一枚しか写真が撮れませなんだ)

さすがはハヌマンジー、写真撮影も心得ていらっしゃるのだ。
いや、お願いだからあんまり笑わせないでくださいよ。

そうして10ルピーも受け取り、写真撮影も済ませた彼はまた猿の言葉を発しながら去っていったのであった。


◆昼間の川辺。


◆ガンジスを見つめる夫。この重ね着から寒かったのがわかると思います。


翌日もハヌマンジーを探して川原をうろついたのだが、とうとう最後まで彼に会うことはできなかった。よく見るとメイクの下は意外と若者だったので、たぶんあと30年くらいはハリドワールでベッベッと鳴きながら金をせびっている事だろう。次回の再会時には是非とも「チャパティ、50ルピー」の部分に改良を願いたい。あと、あれがサルの鳴き声のつもりだったとしたら、そこも変更した方が良いかもしれない。  

←previous next→ホームへ