兵学の部屋 尉繚子
◆民をして内、重刑を畏れしむれば、外、敵を軽んず。
◆敵よりも、将を畏るる軍は勝つ。
◆賞禄厚からざれば民はげまず。 刑賞中らざれば衆畏れず。
◆兵はまず制を定む。 制まず定まれば士乱れず、士乱れざれば刑すなわち明らかなり、金鼓の指すところ百人ことごとく戦う。
◆民は死を楽しみ、生を悪むものにあらず。 民をして死地に進ましむるは、号令の徹底と法制の確立のみ。 賞罰の明らかなる軍は必ず勝つ。
◆愛するが故に、下に二心なし。 威あるが故に、下の上を犯すことなし。 将たるもの、愛と威を兼備し、偏すべからず。
◆戦にあたり、必ず勝たずんば、戦をいうべからず。 しからずんば刑賞信ずるに足らざるなり。
◆刑、上に究まり、賞、下に流るるは賞の威武なり。
◆衆、将を信ぜずして、その力を発揮することなし。
◆民を率いるには、必ず礼信を先にして爵禄を後にし、廉恥を先にして刑罰を後にし、親愛を先にして律するを後にす。
◆危うきは号令なきにあり。
◆令は衆の心を一にするなり。 衆を審かにせざれば、令しばしば変ず。 しばしば変ずれば、令出づるも、衆信ぜず。
◆威は変ぜざるにあり。 不実は軽々しく発するにあり。
◆令は小過なれば改めず、小疑ならば中止せず。
◆上に疑令なければ、衆疑わず。
◆われわれに叛かざるをたのまず、わが叛くべからざるをたのむ。
◆黄帝の百戦百勝せるは人事のみ。
◆王国は民を富まし、覇国は士を富まし、僅かに存するの国は太夫を富まし、亡国は倉府を富ます。
上満ち、下漏るるは、患にして、救う道なし。
◆国富みてよく治まれば、兵を用いずして、威、天下を制圧す。
◆出陣せずして勝つものは君主の勝、出陣して勝つものは将帥の勝なり。
◆将は、上は天に制せられず、下は地に制せられず、中は人に制せられず。
◆将は理官なり、万物の主なり、一人に私すべからず。
◆将は専ら旗鼓を司るのみ。 難に臨み疑を決す。
◆心狂し、目盲し、耳聾して、人を率いるは難し。
◆勤労の師は、将必ず己を先にす。 暑にも蓋を張らず、寒にも衣を重ねず、険には必ず下りて歩し、軍井なりて後に飲み、軍食熟して後に飯し、軍塁なりて後に舎す。
◆民をして内、重刑を畏れしむれば、外、敵を軽んず。
◆将をおそるる兵は敵を侮り、敵をおそるる兵は将を侮る。 敵を侮るは勝ち、将を侮るは敗る。 故に名将はまず畏侮の権を知る。
◆世将は禁ずる能わず。