兵学の部屋 マキアベリ
 
 
 
 
◆君主は、必要に応じて、残忍になれなくては統御できない。
 
◆君主は怖れられてもよいが、憎まれてはいけない。
 
◆人民は父祖を殺されたことを忘れやすいが、世襲財産をおかされたことは忘れない。  人民はその土地に安住し、名誉を傷つけられねば満足している。  臣下の妻女を奪ってはいけない。
 
◆君主は残忍を行っても、それによって治績をあげれば、残忍の罪はゆるされる。
 
◆人間は小なる迫害には復仇できるが、大いなる迫害には復仇できない。
 
◆悪いことは大きく一度やれ。
 
◆人は憎悪によって害心をおこすと同じくらい、恐怖によっても害心をおこす。
 
◆一部の者に武器を与えて優遇すれば、他の大部の者を容易に統治できる。
 
◆仁慈を行いすぎると乱を生み、掠奪や虐殺事件がおこる。  始めに少数を罰した方が結局は大きな仁慈を行なうことになる。
 
◆君主は人民を愛せよ。  その方法は簡単である。  彼らを圧迫さえしなければよい。
 
◆人民は単純である。  目先の利に弱く、詭計にかかりやすい。  巧妙に偽善を行なえ。
 
◆人民は外見で判断する。  手をふれて実体を確かめることのできるのは少数の側近幹部だけである。  そしてこの少数者は、君主の外見に味方する人民に圧倒される。
 
◆人民は希望を達しさえすれば満足する。  君主の内心がどうであろうと、その外観と、なした結果さえよければよいのである。
 
◆人間は、迫害を受けると思っていた者から、僅かな恩恵を蒙ると、より強く感謝する。
 
◆人に恩を施すと、同じ程度の恩を施されたくらい、その人から離れられない。
 
◆君主は人民に愛されるか、それでなければ怖れられよ。
 
◆君主は感謝されることは自分で行い、憎まれることは人にやらせよ。
 
◆人民は性悪である。  君主は人民から愛されるよりも、怖れられる方が安全である。
 
◆武器なき聖職者は滅びる。
 
◆君主はある時は善をなし、ある時は悪をなさねばならない。  悪人との妥協も必要である。
 
◆君主は、善人であるだけでは危険である。  それでは勇猛で凶悪な人間に対抗することができないからである。
 
◆君主はどの程度まで善人であればよいかを、知らねばならない。
 
◆君主の憎まれる原因が二つある。  善行と悪行である。
 
◆狐をよく真似る者ほど成功する。  才能や運よりも、ずるくて如才ないことの方が、多く役にたつからである。
 
◆君主に必要なことは善良、仁慈、親切、真実らしく見えることである。  ほうとうにそうであり、常にこれを実行すれば失敗する。
 
◆君主は「約束を守ったら損だ」と気がついたときには破約せよ。  約束の必要がなくなった時も破約せよ。  破約の口実は必ずある。
 
◆事を争うには、合法的手段と非合法的手段とがある。  前者は人に適し、後者は獣に適する。
 
◆君主は人性と獣性の二つを備えねば永続できない。
獣性については獅子と狐を研究せよ。  獅子は罠をさけることは知らないが、狼をおどす力がある。  狐は罠を見破る智恵はあるが、狼に威嚇される。
 
◆人民が君主を愛するのは、人民の自由意志によるが、君主を怖れるのは君主の自由意志による。  君主は自分の自主的意志にたよるべきである。
 
◆君主を愛するだけのものは、不利益だとみれば君主を見すてる。  彼らの愛を信じて一兵も有しない君主は滅亡する。
 
◆金銭による和親は、危険になると雲消する。
 
◆他人を大にする者は自分を小にする。  よく考えてから他人を助けよ。
 
◆君主の頭脳の程度は、その側近をみればわかる。
 
◆君主の声価は、その選んだ大臣によってきまる。  大臣は次の条件で選べ。
 1)自分を理解している者−−−用いよ。
 2)他人の言を理解できる者−−−用いてよい。
 3)自分も他人の言も理解できない者−−−用いてはいけない。
 
◆君主は大臣たちに、国の現状を変えることを怖れるようにしむけよ。
 
◆明君は臣下に、多くの財と名誉を与えて、それ以上の財と名誉を望ませない。
 
◆進言を活かすものは、君主自身である。
 
◆君主がへつらいに対し、身を守ることは難しい。  自負心が強く、甘言を好むからである。  喜んで忠言をきくこを、事実をもって衆に示すほか、へつらいに対し、身を守る方法はない。
 
◆君主はへつらいによって大事を誤るか、多すぎる忠言に困惑するかである。
 
◆君主は吝であれ。  吝でなければ大事業はできない。  吝なほど人民は幸福である。  有事のとき増税しないですませるからである。
 
◆金離れのよい君主の恩恵に浴するのは、少数の側近のみ。
 
◆吝だという悪評は、君主の名誉をすこし傷つけるにすぎないが、乱費の結果、暴君だといわれるのは、致命的である。
 
◆能力がなくて君主になろうと思う者は金を使え。  しかし、君主になってしまっている者が金を散じても、利益はない。
 
◆君主は人を捨てることを知れ。
 
◆君主の敵は、野心をもった少数の側近幹部である。  彼らから過来るみられた君主はたちまちその地位を追われる。
 
◆貴族に気を許してはならない。  怠惰、恐怖、将来の野心のために、さしあたり従順にしている者が少なくない。  これは君主の困難にあたり、背後から突き落とそうとする、かくれた敵である。
 
◆君主は貴族に反対されても不安はないが、人民に反対されたら助からない。  貴族は少数であり、工作できるが、大衆の勢いには手の施しようがない。
 
◆人民の支持をえた貴族は、容易に政府を転覆できる。
 
◆人民を味方にしている君主は、クーデターを心配することはない。
 
◆反乱は、自由と、かつての特権を口実にする。  口実を与えるな。
 
◆賢君は貴族を失望させず、人民に不満を抱かせない。
 
◆現在の君主と政府は必要であると、つねに人民に思わせておけ。
 
◆侵略は武力でできるが、民の心を得なくては、これを維持できない。
 
◆武力なきものが、武力あるものを従えても安定しない。  一方は疑い、他方は侮る。
 
◆侵略した君主の統治は難しい。  反抗した者が支持してくれないのはもちろん、協力した者の希望を満足させることも困難だからである。
 
◆君主がその地位を得た当座信任した者よりも、最初疑っていた者の方がたよりになる。
 
◆新しい国家を作る場合の最大の難問題は、新しい法律や習慣を作ることである。
 
◆旧法の恩恵を感じていた者はすべて新法を敵視する。  新法により、新たな利益を受ける人も、新法の受け入れには積極的でない。  信用しないからである。
また、新法に反対する者は機敏積極的であるが、賛成する者は緩慢無気力である。
 
◆敵人の内応によってその国を征服した君主は、内応の原因を確かめよ。  旧君主をたおす方便だけのものであれば、ひきつづき内応者を味方にしておくことは不可能である。  また多くの内応者は、しばらくたつと以前の政治をなつかしがり、新来の君主に従う気持ちを失う。
 
◆一度離反した領土を、再び征服した場合の統治は容易である。  君主は反省しており、反乱分子は粛清され、統治の欠陥は修正されるからである。
 
◆新たに領土を得た場合は、
 1)今までの君主の勢力を一掃せよ。
 2)新たな法律と課税を強いるな。
 3)新領土が民族、国語、宗教を異にする場合は、侵略者自ら新領土に移住せよ。
 4)新領土の要地に植民せよ。
 
◆侵略者は、占領地行政のため、以下に注意せよ。
 1)今までの弱者、すなわち不遇だった者を助けよ。
 2)自分より強い者を弱めよ。
 3)占領地民を弱くしすぎるな。
 4)自分より強い外人をいれるな。  国内の不平分子と握手するとめんどうである。
 5)隣国を強くするな。
 
◆国家統治の形式は二つある。  君主一人で治めるのと、権力ある貴族らと協力して治めるものとである。  前者は侵略困難であるが、一度征服すれば統治は容易である。  後者は、不平貴族らに謀略することにより、容易に侵略できるが、その後の統治が面倒である。
 
◆占領地行政がうまくいくかどうかは、征服者の徳の大小よりも、征服された人民の性質によることが多い。
 
◆征服される以前、自由に慣れ、自信の法律の下に統治されていた国の処理法は三つある。
 1)滅亡させる。  すなわち破壊して保全する。
 2)征服者自らその国に居住して、君臨する。
 3)従来どおりの条件で自治させ、必要な税金を納めさせる。
一番安全なのは第一の方法である。  歴史を見るに、自由都市を征服して、これを破壊しなかった者は、やがて自身が滅亡している。  被征服者が「自由」という美名のもとに、いつか反乱するからである。
 
◆君主政治に慣れた国民は、君主がなくては生活できない。  今までの君主が滅びると、素直に新君主に従い、謀反しない。
 
 
 
 
 
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