兵学の部屋 クラウゼヴィッツ
◆栄冠は最後の勝利者に与えられる。 途中の得点の総和が勝っても、なんにもならない。
◆予期しない事実に当面したとき、これを処理する能力が沈着である。 この知性のとっさの働きは普通でよい。 沈着の度は心が平静に戻るまでの時間によってはかる。
◆あらゆる軍事行動には、知性の力とその効果が行きわたるべきである。
◆実力行使を辞さない者にはすべてが敗れる。
◆人間は刺激に反応して行動する。 その刺激を生み出すのは賞と罰である。 賞に名誉、罰に不名誉がともなえば、さらに効き目がある。
◆未開人は感情に支配され、文明人は感情に支配される。
◆戦争哲学の中へ、博愛主義をもちこむことは不合理である。
◆大衆や兵士の共感を手っ取り早く得ようと思ったら、その低級な感情を刺激せよ。
◆古来、名誉欲のなかった将帥はいない。
◆われわれの最大の報酬は、祖国と国民の自由のために戦うことである。
◆敗軍の将は、退却開始の相当前から、その運命を自覚したはずである。
◆戦勢有利な時の危険は勇気を鼓舞するが、不利な時の危険は気力を失わせる。
◆決戦時には、勝敗両者共に危機にある。 勝利が姿を現すのは勝敗決定の相当後である。
◆勝利を保持し、利用するためには、力の莫大な追加支出が必要である。
◆凡将はある程度勝つと戦意を失う。 戦う必要なしと信じ、あるいは信ずるとみせかける。
◆不利な戦況によって冷却した大衆の心は、指揮官の胸に燃える焔と頭脳の光とによって再び燃え上がらされ、照らし出されねばならない。 この力をもつ将帥はよく大衆を統率し、大衆の指導者たる地位を保つことができるが、この力のない将帥はたちまち大衆の動物的境涯に引き落とされてしまう。 この引力は人数の多いほど強いから、地位の高い指揮官ほど、これをはねかえすために、大きな力をもっていなければならない。
◆将帥は激情の中にあっても均衡を失わず、知謀と遠慮を働かさねばならない。 すなわち心の中に不動の羅針盤をもつことが大切である。
◆理想と現実との食い違いを克服するものは自信である。 作戦方針と眼前の事象との間には往々大きな間隙があるが、自信があればこれをうめられる。
◆戦争において、軍の戦力は、これを指揮する将帥の精神によって決まる。
◆名将は、教養の高い国民の中からでなくては生まれない。 勇気のほかに智力を必要とするからである。
◆将帥の判断のためには、しばしばニュートンのような数学的頭脳を必要とする。
◆古来卓越した将帥は博学多識な将校の中から出ていない。
◆将帥は分析力と総合力が発展して、高度の判断力、すなわち洞察力といったものをもたねばならない。
◆将帥の真の価値は、人目をひく名作戦にはなく、目的を達するか否かにある。
◆最高指揮官と次級指揮官との精神活動には格段の差がある。 後者は命令されることができ、精神活動の領域が狭くてすむ。
◆地位の高まるにつれて無能となる者がある。 単純で勇敢なだけでは、将帥にはなれない。
◆最高の地位にあって胆力のある将帥は希である。 怖ろしさがわかるからである。
◆危険と責任感は、名将の判断力を活発にするが、凡将の判断力を駄目にする。
◆いかなる名参謀も、将帥の決断力の不足だけは補佐できない。
◆各指揮官は、隣接部隊が任務をつくしているか否かを、尋ねる権利はない。