++fleaheart++++fleaheart++++fleaheart++++fleaheart++++fleaheart+++fleaheart++
ふりーはーとメールマガジン ==================================2003/05/25

第98号をお届けします。
配信希望,解除希望,ご意見,励ましのお便り等は,
「ふりーはーと読者の広場」
http://www61.tcup.com/6115/sbd.html
をご利用ください。

「Fool on the Hill 鄙の家」http://www.pluto.dti.ne.jp/~wada/
からもリンクされています。

★☆ 現在発行部数 44位 です。☆★
====================================================================
[ふりーはーとのメッセージ]

● レコードをかける

--------------------------------------------------------------------

 「道楽」とは道を楽しむと書くんだそうですが, 道に落ちると書く「道落」がある。中には道から落ちる「道落」なんて,危ないのがあったりしますが。
 凝っては思案に能わず,また凝らずんばその味わいを知らずなんてね。短い人生,楽しい事をやるために艱難辛苦,一生懸命に働いて,道楽三昧の生活を送ろうと云う…。
 こんなことが,噺の枕に云ってあります。

 常々,茶道の向こうを張って,珈琲道(紅茶道)も悪くないと思っている。
 もちろんお点前(てまえ)の所作もあるわけで,ドリップ点前とサイフォン点前に大きく別れ,珈琲メーカーや,エスプレッソの装置を用いるお点前は,機械点前と呼ばれ。少し軽んじられる訳です。
 所作を細かく規定し,訓練により体にその動きを叩き込むことにことにより,流れるような動作の中に美しさが生まれ,次の動作に付いて思案することなく動けるようになれば,客をもてなす心の余裕が生まれてまいります。
 ネルの布袋によるドリップ点前が正式ですが,簡易的にはカリタ等のペーパードリップも準オフィシャルのものとして認められています。
 無論,豆は銘柄を明らかにした上でハンドピッキングし,自家焙煎。
 まず,お盆の上に生豆を拡げて異常のある豆を除いていきます。焙煎は手網を用いての炭火による焙煎が良いでしょう。挽くのもハンドミル,石臼(小型のものがT急ハンズにありました)が良いかも知れません。
 勿論,器具も凝りたいものです。マイセン,ウェッジウッド,オキュパイドジャパンノリタケ…。家元の箱書きが欲しいところです。
 おっと,その前に,どなたか家元になってくださらぬか。
 まぁ,当人と同好の士だけが面白いおもしろいと云っておれば良いような訳ですが。
 中には,類は友を呼ぶと云いましていわゆるブームとならないとも限りません。

 音楽を楽しむための手段としてのオーディオ装置がある訳ですが,その装置のクオリティーにのみ心を砕くのはいかがなものでしょうか,しかしついつい,そちらへ向いてしまうのは,なんとも情けない性(さが)です。
 ジャズCDの購入に始まったこの度の小生の一連のオーデイオ装置いじくり騒ぎについては当「ふりーはーとメルマガ」で何度か書かせて頂いたが,やっと少し平静を取り戻しつつあるので,ご報告します。

 昨年の夏ころから,かなりの勢いでCDを購入,スピーカー(ALTEC)ユニットのエッジが無惨に崩落寸前であるのを発見。代替にジムラン(JBL)を購入。手持ちのアンプを交換試聴したが,音にかなり悩むと云うか不満。CDプレーヤ(DVD付の安物)を購入。プリアンプ不調に付き手持ちのキットを急遽組み立てたが,これがお気に召さぬ。そのうちジムランのエージング(慣らし鳴らし)が済んだか,耳が慣れたか少し音が落ち着いて来たような感じです(アンプの真空管を全部抜いて足を磨いたり少しの整備はしました。)。そこで,やっと最近になって,隠してあったアナログレコードを引っ張り出して聴いています。
 このレコードの溝をダイヤモンド針でなぞって音楽を再生するのは,伝統的作業であり,細心の注意が必要なため,ある種,緊張を強いられます。

 となれば,やはりお点前と云いますか,所作に流儀といったものがあったほうが好都合です。
 基本は可能な限り良い音(気に入る)を出すこと。レコードの盤面を傷めないこと。この二命題だけです。
 アンプは二十四時間,電源を切らない(一関市ベイシー流)。極意書に「あなたは寝るとき心臓と息を止めるんですか」とある。
 棚からジャケットに入ったレコードを抜き取る。(レコード棚は盤が歪まないよう配慮されたものであること。)
 レコードプレーヤのそばでジャケットから内袋(輸入盤は紙袋)ごとつまみ出す。ジャケットの口を拡げるかたちで指をレコード中央部穴付近まで差込,添えてひっぱりだす。
 内袋の口はジャケットの上に向くように収納されているべきである(後で説明する)。
 内袋から出すため,同じく内袋を開き気味にして穴付近に右手中指を添え,盤の縁を親指の腹で軽く挟む。盤を引き出し,左手の内袋をジャケットの上に軽く置く。
 盤を水平に保ち左掌を縁に添える中央部に添えていた右手中指をラベル部から離し,盤の左右から縁を挟む恰好に持ち替える。落ち着け,ゆっくりで良い。
 盤の水平を保ちつつ,ターンテーブルの上部に移動する。このとき盤の穴からターンテーブルのスピンドル(軸)が見通せるようにしておく。
 穴から軸の頭を注視しつつ盤をターンテーブル上にゆっくりとおろして行く。
 こうすることにより,すんなりスピンドルが穴に入らずその頭でラベルを擦りながら所在を探すと云うぶざまなことをしなくて済む。
 もし,一発で入らず,スピンドルの頭でラベルを擦れば,俗にヒゲと呼ばれるマニアの間では忌み嫌われてゐる痕を穴の周りに残すこととなるので要注意。(五味康祐流)
 この瞬間は,息を止めた方が良いかも知れぬ(以下「瞬息停」と云う。)。
 盤面を注視し,埃,傷の有無を見取る。見てとれるような傷があればその盤はいかがなものか。しかるに,音に影響しないような傷もあるから,不思議だ。もちろん気分はよくない。
 これは,小生の我流につきお薦めできぬが,ターンテーブル上でベルベットのクリーナを用い埃を拭う。溝に逆らって内から外へ落とす。昔,トーンアームと似たものを置いてピックアップに先行して溝を走らせる埃とりとか,ピッカリングというメーカのピックアップには内側をなぞるブラシが付いていたのを思い出す。いずれも,埃がレコード再生の大敵であることをよく表している。
 ターンテーブルの回転数,毎分33と1/3に微調整で合わせる。
 ピックアップの針の埃を拭う。(場合によっては無水アルコールにより針先を洗浄する。)
 アンプのボリュームを絞っておく。
 いよいよ,針を盤面に降ろす時が来た。
 指は震えていないか。
 ピックアップの指かけを人差し指でひっかけ,盤の縁までアームを移動させる。
 ここで,自信がない場合,小指薬指の先はプレーヤのコンソール(箱)に付けられれば付けた方がよろしい。
 瞬息停。
 ゆっくりと,盤の縁から数ミリのところへ針をおろして行く(酔眼,老眼には厳しい)。盤と針が接したところで指を下へ抜く。これがもっとも緊張を強いられる瞬間だ(アーム上下のためのリフターと云う装置のついたものもあるが)。
 針はちゃんと溝をトレースしているか。
 盤面を水平に透かして見てみやう。盤に歪みがあって,ピックアップが波打ってゐるようでは困る。
 ボリュームを通常の音量位置に戻す。リスニングポイントに着座する。

 やっと演奏を聴きながら思いを馳せることができる。
 目の覚めるよなシンバル,スティックがシンバルを叩く瞬間の「クゥ」の雰囲気はどうか,あと「ワッシャーン」となる。又はブラッシュワークは十分歯切れが良いか。リードとフォーンの合いがサックスから,きらきら輝く響きとなって出てきているか。ピアニストのタッチが,それぞれ聞き分けられるほどか(ピアニストの指が鍵盤に触れてからハンマーがピアノ線をアタックするまでの所要時間が読めるか)。ベースの音の輪郭がふやけてないか(ベーシストの指が弦にかかり,弦から離れる瞬間を感じることができるか)。別に,さういふチェックしなくともA面の演奏が終了する。
 針が盤の最内側のエンドレスの溝に落ちる前にピックアップは上げてやりたいものだ。
 瞬息停。盤に内袋を着せ,ジャケットを着せる。内袋の口はジャケットの口と九十度クロスさせること。(ジャケットの口と内袋の口が同方向を向いていると誤っていきなり盤に指が触れて驚かせるせることがあるからだ。)
 自分だけで聴くのなら,まぁこんなもので淀みなく操作できるが,客(他人)が聴くとなると,ちとプレッシャーがかる。今の状況では,流れるようなお点前はまず無理である。まだまだ精進が必要だ。CDと違い二十分毎に点前が必要だから,居眠ることはない。

 前半,冗談のつもりで書いた「珈琲道」も「紅茶道」も調べたら,首都圏にはちゃんと「お教室」があるのだそうな。そうなれば,どこかのジャズ喫茶のマスターが「レコード道」の家元を名乗るやも知れません。
 しかし,ドアを開けると店の奥に「珈琲道」と「レコード道」の免状が額に入れて架かってゐる,そんな店に誰も足は運びたくあるまい。

参考
○「ジャズ喫茶マスター,こだわりの名盤」鎌田竜也他著
○ジャズ喫茶「ベイシー」の選択 菅原昭二著
○「広島快食案内」シャオヘイ著
○五味康祐のレコードの「ヒゲ」の話は出典失念

--------------------------------------------------------------------
後記:ボロボロのALTECのウーファは二つとも箱から外して,いつでも修理に出せるように準備完了。アナログLPと云えば,*OPマスターお気に入りのソニーロリンズのサキソフォンコロッサスの輸入盤をほとんど未聴の状態で持っております(学生時代に買っていたようです)。私が先に逝ったら形見に渡すと遺言を書くよう,マスターが云っておりましたが,実は今日,聴いてしまいました。盤の状態は,もちろん「ヒゲなし」で,大変良いようです。

ふりーはーとメールマガジン バック・ナンバー(画像追加も有)は,
http://www.pluto.dti.ne.jp/~wada/fleamain.htm
をご覧ください。
配信時の内容が訂正,改稿されている場合があります。
ふりーはーとメールマガジン ================================== 2003/05/25
++fleaheart++++fleaheart++++fleaheart++++fleaheart++++fleaheart+++fleaheart++