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ふりーはーとメールマガジン ==================================2002/12/08
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[ふりーはーとのメッセージ]

● 二人の男の耳

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 先週の日曜日朝日新聞のコラム「坂田明のかがくのたね.」にあまりにも巧いこと書いてあったので紹介させていただきます。
 前段で「科学」には「自然科学」ばかりじゃなくて「人文科学」や「社会科学」があるのだが,客観的法則や原理の発見で自然科学は分かり易いが社会科学はなかなか万人向きでない,と説明しておいて,「例えば,『最近はジャズが普通の音楽になった』という表現があります。音楽評論家の相倉久人はとっくの昔に『ジャズは死んだ』と言いましたが,この表現を,社会科学的視点からひとつの『現象』として考察すれば『ジャズはエントロピーが増大して平衡状態になった』つまり最初は熱く燃えていたのに周りに熱を奪われて,ぬるま湯になった。だから世間との落差がなくなり,時代の先端から消えた。」と具体をあげて説明されています。
 実に明快な説明に舌を巻くとともに,例に引かれた「ジャズは死んだ」ないし「最近はジャズは普通の音楽になった」の部分に感じ入った次第。
 居酒屋で低く流れるマイルス・デイヴィスに怒っておっては単なる遅れてるおっちゃんと言うことにしかならないのだなと。

 ついでに書かせて頂けば,ここ数ヶ月(もはや半年以上か),勝手にブルーノートのジャズCDを少しばかり(でも六,七十枚にはなるか)集め,週に一,二度は聴きながら呑める店に顔を出して暮らしてゐる訳でいい加減飽きてもいいころかなぁ。

 RVG(ルディ・ヴァン・ゲルダーと云う録音技師)が録音し最近自らデジタルリマスターしたCDの再生音がかなり良い音に聞こえることは,前に書いた。
 以前は,録音技師の名前なんか注意して見ることもなかったのであるが,その気になって,小生が以前から持ってゐたアナログLPを含めて調べてみたら,記載があるものは,なんとほとんどRVGさんの録音でありました。
 プレスティッジもインパルスもジョン・コルトレーンに限って云えば全て。
 それもご丁寧にほとんど彼のニュージャージー州のハッケンサックにある自宅を改造したスタジオでの録音なのです。
 と云うことはですね。
 RVGと云うオジサン(今では八十歳前の爺さん)が,これぞと思って録った音を長年ジャズとしてスピーカの前で聴かされ続けて来たということですよね。
 なんとなく,深いため息が出る訳です。
 果たして,録音をモニターするのにどういうスピーカを,ヘッドフォンを使ったのであろうかと。(写真では確認できます。スピーカは「ブルーノート再入門」朝日文庫115頁,ヘッドフォンはCD THE RVG ALBUM(東芝EMI)のジャケットで。)

 寺島靖国氏(ジャズ喫茶「メグ」(吉祥寺)のオーナー)が現在(イングルウッド・クリスフス)のヴァン・ゲルダースタジオ(デジタルリマスターはここで行われている)を訪れたときのレポートによれば,スピーカは七十センチ×四十センチ位のリファレンススピーカでメーカ不明,真っ黒,イメージで云えば撃墜された米軍偵察機U2,やや不気味とあるが,なんだか判らぬ。肝心の音は茫然とするほど標準的な音とある。ますます訳が判らぬ。

 菅原昭二氏(ジャズ喫茶「ベーシー」(一関)のオーナー)によれば,「レコードには特有の<レーベルサウンド>というものがあって,我々が”レコードを聴く”ということは,その<レーベルの音>を聴かされている,といってもたいして過言にはならないほど」であると書いておられる。
 さらに「『ブルーノート』が東海岸(イーストコースト),『コンテンポラリー』が西海岸(ウエストコースト)…略…ジャズ者なら誰でも知っていることだが,『ブルーノート』の音はルディ・ヴァン・ゲルダー,『コンテンポラリー』の音はロイ・デュナンという,二人の男が作ったものだ。」と聞くに及んで更に深いため息となるのでありました。

 ジャズ者でない小生はまったく知らなかった訳で,レコード(録音)を再生してジャズを楽しむとするならば,大袈裟にいえばこの二人の「耳」を経由したもの以外聴けないのじゃあないでしょうか。
 しかし,当然と云えば当然なんですよね。
 とどのとまり,視聴者が何千万人のTV番組にしたところで,毎日何百万部発行されている印刷物にしろ,アイデア,原稿はそれを生んだ個人に遡れますものね。

http://taktokiwa.tripod.com/MusicPhoto/RVG1.html
参考(引用):
朝日新聞2002年12月1日
JAZZオーディオ悶絶桃源郷 寺島靖国 河出書房新社
ジャズ喫茶「ベイシー」の選択 菅原昭二 講談社


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後記:過日,息子が帰省しているときにCDが宅配便で四,五枚一度に届いた。「わぁ,おとな買いじゃん」と云われて了った。この話,件の呑み屋さんで以前しておいた。昨晩,面倒なのでピッチャーで生ビールを頼んだところ「こういうのも,『おとな買い』と云うんですかねぇ」とマスター。

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