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ふりーはーとメールマガジン ==================================2002/10/20
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[ふりーはーとのメッセージ]
● 千早の本名
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この間まで暑い暑いとこぼしていたが，早いもので今年ももはや十月下旬である。
年齢と時間の長短の感じ方について何かに書いてあったが忘れた。
時間を過ごすのが重苦しく感じている時と言うのは過ぎてしまうと案外短く思える。
それだけ密度が薄いのかも知れぬ。
来年の年賀葉書はもうとっくに刷り上がっており，各郵便局に配られ倉庫の中で出番を待っていると言う。
このまま，すんなり正月が迎えられるとも思えぬ，気が早いが正月の話。
正月と言えばかるた。
どこのご家庭でも，特に女のお子さまがおられれば百人一首のひとセットはお持ちかと思う。
祝い酒を呑みながら，よく坊主めくりをさせられた。
読み札を伏せておいて順にめくり坊主（＊＊入道等）が出れば持ち札をとられる。
女性の絵が出ればその札が貰え，最後に多くの札を持ったものが勝者と云ふたわいのない遊びだが，なかな結構である。
本式に歌を読み上げ取りっこすると，小生二枚しか取れぬ。
「千早振る」と「瀬をはやみ」の二首だけは知ってゐる。
これに「七重八重花は咲けども」が入っておれば三枚は取れるが残念ながら，藤原定家先生の撰に入ることは出来なかった。
○千早振神代もきかす立田川 からくれなゐに水くゝるとは 在原業平朝臣
○瀬をはやみ岩にせかるゝたき川の われてもすゑにあはむとそおもふ 崇徳院
○七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだに無きぞ悲しき （古歌：太田道灌がこの歌を知らなかったことを恥，歌道を志した由？？）
なあに，いずれも有名な落語，それぞれ「千早振る」「崇徳院」「道灌」の主題をなす歌ですから，忘れようにも忘れられない。
しかし「千早振る」は傑作だ。
意味を問われて隠居が苦し紛れにする解釈たるや「立田川と云う名の相撲取りが千早と云う花魁（おいらん）に振られ，さらに神代なる花魁もいうことをきいてくれない。立田川は廃業ののち故郷に帰って豆腐屋になった。十年が経過した秋の夕暮れ，女乞食におからをくれを云われたが，みるとこれが千早のなれの果ての姿，不憫とは思うが立田川，おからをやらない。そこで千早は井戸に身を投げた。」
「なるほどねぇ，で『とは』てなぁ，なんです。」
「いいじゃないか『とは』ぐらい，まけておきな」
「いやまからない」
「うーーん，『とは』は千早の本名…」
なんたるインプロヴィゼーション（improvisation：即興）であることよ。
この隠居には，いかなるジャズ・ミュージシャンも脱帽（？）である。
学校で教わるのは「千早ぶる」は「神」などにかかる枕詞で意味はなく「神代の昔ですら聞いたことはない，立田川が散った紅葉でくれない色に絞り染めなっている様など」とでもなるのか。
これじゃあちっとも面白くない。
若き日の志ん朝さんと名人志ん生の会話。
「お父ちゃん，セロニアス・モンクってジャズピアノ弾き，すごいんだよ。なんかこぉ，一生懸命，音を探してるんだ。」
「何を云ってやがる。毎日，弾いてる癖になんで探さなきゃ弾けねんだ。」
参考図書 落語讀本 精選三百三席 矢野誠一著 文春文庫
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後記：お終いに書いた逸話は，最近になって入手した１９４７年録音（ラッカーディスクへ直接録音した原盤からルディ・ヴァン・ゲルダーがデジタルリマスターした）のＣＤを聴いてゐて憶いだした。
【今週のＢＧＭ】
blue note 1504 the amzing bud powell volume
two(Remastered by Rudy Van Gelder ） からAUTUMN
IN NEW YORK
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