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ふりーはーとメールマガジン ==================================2002/08/04
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[ふりーはーとのメッセージ]

● 観察日記 

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 良い子は楽しい夏休みをお過ごしのことと思う。
 長い休みには宿題も出る。
 自由課題研究と言ったものもあるかも知れない。
 理科の観察日記(?)として,「セミの羽化」と「アサガオの開花」が比較的,短時間,勝負が早いので好評,定番であった。
 何時何分と記入,手早くスケッチ(今の時代だからデジカメ撮影すればもっと簡単か)し,これを連続で何コマか続け,感想などのコメントを添えれば完成である。

 観察日記で思い出した。
 小学校四年生のころだったかに,誰かが毛蚕(けご:孵化したばかりの蚕)を教室に持ってきたことがある。
 当時とて,もはや養蚕農家は近隣にはなくなってをり珍しかったと思う。
 ただ,干からびさせるのも忍びないと先生も考えたか,誰か,桑の葉を供給できないかと問うた。
 養蚕がされないのだから,桑を育てる者も居ない。
 小生ひとり桑のありかを知ってゐた。
 通学路を少し外れたA田川の川岸に,水面にでっぱる形で自生(は)えている。
 三歳年上の兄が,あれが桑の木だと教えてくれたのを憶えていた。
 それから,朝早く起きて通学途中,桑の葉をもいでせっせと学校へ運ぶ毎日が続いた。
 成長(脱皮)とともに食欲を増して行く蚕が恨めしかった。
 雨の日もある。
 葉をもいでゐて足をすべらせ,危うく,増水した川に落ちそうになったこともあった。
 こうなれば,命がけだ。
 食料供給は小生だけの役目であったが,皆で観察日記なるメモを残すことにした。
 辛抱した甲斐あって,蚕は見事に繭(まゆ)を紡ぎ,命がけの桑の葉運びからも解放された。
 しかし,無罪放免になった訳ではなかった。
 先生は,小生に,皆でメモった観察日記をまとめて一本のレポートにするように命じたのである。
 これは,結構辛かった,当番のみんながみんなちゃっとメモを書いてくれていた訳ではない。
 ちょうど蚕が桑を食うように文字通り虫食いで,穴を記憶と創作によって埋めなければならなかった。
 当時は原稿用紙二,三枚以上の作文を書いたことはなかった。
 多分,二十枚ほど書かされたと思う。

 この原稿,はたしてどうなったか。

 先生が,黙って某県警が募集していた作文コンクール応募したらしい。
 確か,金賞だか銀賞だかに撰ばれて文集に掲載されているのを見たと警察官を父に持つ友人から聞いたが,学校からは何の音沙汰もなかった。
 今はどうだか知らないが,図画とか作文を先生が何点か撰んで公募のコンクールに出して賞に入れば,終業式などに全校児童の前で賞状,副賞などの授与,披露が行われる慣わしであった。

 ここで,今更,某県警あるいは某市立小学校の不手際について云々する気は毛頭ないが(十分してますが)あの「観察日記」の掲載された冊子の行方のほうは少し気にかかる。

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後記:以前の職場に縦横10メートル位の広さでコンクリートが打ってあり中央に直径2センチ,長さ20センチ程の空気抜きのパイプを立てた施設があった。ある夏の朝,見るとそのパイプの先端に蝉の抜け殻が付いていた。その施設の回りもアスファルトになっているので土が露出しているところからは直線距離でゆうに20メートル以上はあったか。あの小さな幼虫がそれだけの距離,這って行って羽化したものか,だれかの悪戯か,こっちも今もって不明。

【今週のBGM】
 暑さを増幅する蝉の声。

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