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ふりーはーとメールマガジン ================================== 2001/12/02
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[ふりーはーとのメッセージ]

● 酒は

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 以前,煙草について書いたかと思うが,その時書こう思いながら書きそびれたことがある。
 煙草は,思考の理屈を司る部分に作用するのでは,あるまいかと思う。
 志向型のゲームには煙草が似合う。
 反面,同じ嗜好品でも酒は,情緒,抒情に深く作用する。
 ある種の芸術には,別な種類の薬物等が作用するのかもしれないが,不知である。

 「鉄拐(てっかい)」という噺があるが,談志以外で聞いたことがない。
 舞台は中国である。上海に上海屋唐右衛門という貿易商があった。で,この貿易商が年に1回,夏に祝賀会をやる。この祝賀会で余興があるのだが,そんじょそこらの芸人ではつとまらない。世界に二つとない芸である必要がある。そこで手代の金兵衛が苦心惨憺見つけてきたのが,中国八仙人の一人「鉄拐」さん。鉄拐の術は「一身分体」。自分の腹の中からもう一人自分を出してその自分を見て楽しむという。この鉄拐先生,上海屋の余興は難なくこなした。仙人だから最初は(はなぁ),俗欲なんざぁまったくなかったんですが,次第に世俗の垢にまみれて行く。寄席にでる,弟子をとるという。えらい人気。しかし,それもいつまでも続かない,マンネリで飽きられるてぇやつだ。次の仙人を探せてぇ訳で「張果老(ちょうかろう)」を連れて来る。張果老は瓢箪から駒(馬)を出す。これがまた莫迦受け。面白くないのは鉄拐先生,馬なんざぁ俺も腹から出せるてんで,馬に乗った鉄拐を鉄拐が腹から出すと云うがこれが,うまく行かない。先生窮余の一策てぇヤツで客を全員,腹の中へ入れて馬に乗った鉄拐を見せた。これがまたえらい人気。客が団体で押し寄せる。中には柄の悪い客もいる。
「なぁに,今日は文士の集まり?」
なら良いだろうと,鉄拐が腹の中へ入れちまう。
ところが,酒が入ったから,メチャクチャ。中でも二人がとっ組み合いの大喧嘩,とても駄目だと鉄拐が吐き出した。この二人の酔っぱらい,顔をよくよく見たら,なんと李白と陶淵明。

 李白に「将進酒」がある。
 この中に,
 会須一飲三百杯 (飲めば必ず三百杯はやってしまう)
 但願長酔不用醒 (ただ長く酔っていることを願い醒めたくもない)
    「山中対酌」に
 一杯一杯復一杯 (一杯,一杯,また一杯)
 いかにも名句である。

 陶淵明の「飲酒」の中に
 不覚知有我
 安知物為貴
 悠悠迷所留
 酒中有深味
(自分が何処にいるのかも判らなくなり,まして,ものごとを尊重したり気にかけたりできやしない。こころは悠々とひろがり,留まるところを知らず。なんと酒の作用には深い味わいがあることよ。)
 いやはや,こういう境地で飲みたいものである。

 近頃,金曜日の夜は決まったように飲酒をし,土曜日は,宿酔いのぼんやり頭で過ごすのが常となっている。
 毎日,飲んで,なお週末には外で飲む。
 苦しくとも飲む。
 いくら酒の力を借りたとて凡庸な頭には詩の一片が浮かぶ筈もない。

 鉄拐の腹中で李白と陶僭がどんな文学論を闘わせ,とっ組み合いの喧嘩に至ったかに思いを馳せるのが関の山だ。
 文末に記した如く,この二人が活躍した時代は大きく異なるが,荒唐無稽な落語の世界のこととて詮索する必要はあるまい。

○李白:(字 太白701〜762年)蜀の詩人 四川省錦陽県出身 若い頃はやくざと付き合ったり山に隠遁したりしたが,三年間の公務員生活を上司への悪口で辞め放浪生活を続けた。最期は酔って池に写った月を捕えようとして溺死したと伝えられる。
○陶僭:(字 淵明365〜427年)東晋の詩人 江西省九江市出身 三十歳ころから公務員になったが,上役に従うのを潔しとせず,四十一歳で辞職,故郷へ帰る
○八仙人 鉄拐,鐘離椎,張果老,韓湘子,曹国舅,呂洞濱,藍采,何仙姑

参考図書:「立川談志独り会」第一巻 三一書房
      NHKラジオ講座テキスト「漢詩を読む」石川忠久著(昭和61〜62年,平成5〜6年)
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後記:誰しもそうかも知れないが,放浪,隠遁,仙者へのあこがれがある。諸氏(姉)におかれては,忘年会シーズンに入るが,深酒は自重されたい。
 コンピュータウィルスが猛威をふるっている。当方へも2通ほど感染したメイルが届いた。小生はインターネット・エクスプローラやアウトルックのようなメジャーなソフトの使用をしていないので今のところ被害はない。(筈だ。)携帯電話も着信履歴に対し電話するだけで金を詐取されるという。ネットテロとも言える。物騒である。ご用心。   ワダ


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