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ふりーはーとメールマガジン ================================== 2001/11/04
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[ふりーはーとのメッセージ]

● かなづかひについて

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 新潮文庫に福田恆存(つねあり)著「私の國語ヘ室」がある。
http://user2.allnet.ne.jp/noz/FUKUDA/WatakushinoKokugokyoshitsu.html
 いや,あつたと云ふべきで,あらうか。
 「現代かなづかい」の不合理を衝き,「歴史的(旧)かなづかひ」と舊字(正字)の原理と正当性さらに修得法を説く極めて意義深い本である。
 残念乍ら,現在は絶版となつてゐる。
 この本の単行本は新潮社から昭和三十五年に出たが,翌三十六年には,文庫に入つた。
 当時の文庫本としても厚さから見れば,当然百圓以上の価はしたであらうが,出版社の好意で五十圓の定価で売られた(岩波文庫は,☆一つ五十圓の時代が長かつたのを思ひ出した。)。
 先ほど,この本の古書価格をネットで検索したら,文庫(多分初版)がなんと千五百圓也となつてゐていささかおどろかされた。
 私の手元にあるものは,多分,買替へたもの,つまり二代目と思ふが昭和五十三年第三刷で二百八十圓の値段が付いてゐる(「増補版」としてあり,初刷は昭和五十年。)。
 これとて,ずいぶん安い。
 以前は,この本にかぶれて,結構,怪しげなかなづかひをしてゐた。
 今は,流石にワープロソフトなどを使う手前,正しい(?)かなづかひをすると漢字変換に支障が生ずるのであまりやらなくなつたが,少し前に書いたモノを引つぱり出すと,お気づきのとおり,かなづかひの可笑しなものが多い。
 現代流行作家でも旧かなを使ふ方はゐる。
 丸谷才一氏などがさうだ。三島由紀夫も文庫に入れば現代仮名になつてゐたりして,興を削がれるが元来,旧かな作家(?)である。

 いはゆる「現代かなづかい」は「現代の人の標準的な発音をより所として,かなで書き表す場合の準則で根本原則は表音主義である」といふことになるのだらうか。
 そんなことはない。
 「は」,「へ」の読みは「わ」,「え」,として発音することが結構多い。
 「じ」と「ぢ」,「ず」と「づ」,「お」と「を」の違いは何だ。
 中途半端である。
 最近はワープロ普及の所為で「を」を「wo」と発音する若い人が多い(嘘です。)。
 
 比べてみると歴史的かなづかひは,楽しい。
 昔の人は,かういふ風に発音してゐたのかと優雅な気持になる(古代かなは,当然表音文字であつた,表記の通り発音した。)。

 福田恆存氏の「私の國語ヘ室」から少し引用してみる。
---以下引用
 「u」音の表記
 本則−「u」音が語頭にあるときはつねに「う」と書き,語中語尾にあるときは「ふ」と書く。
 例外−特定の語に限り,語中語尾の「u」音に「う」を用ゐることがある。
 ○かうし(格子) かうして かうばしい(香) とうに ようこそ
 ○いもうと(妹) おとうと(弟) かうぢ(麹) かりうど くろうと(玄) しうと(舅) しろうと(素) なかうど(仲) のうのう
 ○かうがい(笄) かうべ(首) かうべ(神戸) かうがうしい(神) かうぞ(楮) こうぢ(小路) …さう たうげ(峠)
---以上引用
 もう少しだけ例外がつづくが省略(「例外が多い場合,例外とは言はない」と昔,習つたやうに思ふが,言葉の成り立ちに表記が引張られてゐるのだから仕方ない。)。
 「く」「しく」の音便は,当然「う」「しう」と表記です。(

 「wa」「u」「o」「e」「i」「ji」「zu」の表記の本則と例外をマスターすれば,ほぼOKで,それらしく表記できるようになります。
 あとは,「…でせう」(お列音に発音しながらえ列の「せ」表記)とか,先にもあつた「たうげ(峠)」(お列長音に発音しながらあ列表記)とか,たいしたことはありません。
 「いろはうた」を意味が判るように読めれば,大丈夫です。
 歴史的かなづかひができれば,日本語文法は,ばつちりです。

 短い文章で,旧かなの全てを説明できませんが雰囲気を掴んでください。
 古本屋さんへでも行つて,少し黒つぽい本を開けば,そこは旧かなの世界です。
 すぐに慣れてしまひます。

 何故に,ここまで,旧かな礼讃をするのか,われながらアナクロイズムと思ひます。
 毎号,誤字,脱字,かなづかひ間違ひ,「てにをは」間違ひの洪水,垂れ流しに対する言ひ訳のつもりです。

 その昔,学生時代にある小冊子に原稿を頼まれた。
 ある程度風変はりなことをして目をひかねばなるまいと思ひ,かの「私の國語ヘ室」と首つ引きで例外表記を見落とさないように,苦労してばつちり完璧に,旧かな使ひで文章を書き終へ,喜々として印刷屋さんに渡した。
 もちろん,少部数の冊子のことだから,印刷屋さんによる「責任校正」と云ふやつで,ゲラ摺りは来ない。
 全部数,刷り上がつてから,いきなりの納品です。

 私の苦労して歴史的仮名遣ひで書いた文章を,印刷屋さんが気を利かして,すべて現代仮名遣ひになおしてくれてゐたのは言ふまでもない。

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後記:「辛口JAZZノート」寺島靖国著(日本文芸社刊)を読んでいたら母親にえらく古い本を読んでいると言われた。昭和63年の発行だから,そんなに古くはあるまいと思ったが,紙質が悪かった上に日に焼けていて,見ようによってはみすぼらしく見える(新刊で買ってはいたのだが例によって積んでいた。)。筆者紹介に吉祥寺ジャズ喫茶「メグ」(武蔵野市吉祥寺本町1-31-3)のマスターとしてある。著者の方もお店も健在だろうか。   ワダ


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