ふりーはーとメールマガジン ================================== 2001/08/12
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[ふりーはーとのメッセージ]

● ジッポのライター
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 私自身,つくづく喫煙は悪癖だと思っている。
 十五年以上禁煙していた経過もあり,煙草を喫わない人が,どんなに煙草の煙を不快に感じているかも判っている積もりだから,余計始末が悪く,煙草一本に火を点ける度に大袈裟でなく悔恨の情が伴うこととなる。

 以前は,喫茶店,飲み屋などで必ず店名入りの燐寸をくれたものである。
 色とりどりで,デザインも楽しいものが沢山あった。
 コレクションと言う程ではないが,これを集めて鴨居に並べる者もいた。
 「桃」や「パイプ」のマークの入った大箱(徳用)燐寸もスーパーマーケットで売っていたが,今でもはたしてあるのか知らん。
 これは,各家庭のかまどや風呂の焚き口のそばに置いてあったものだ。
 生活そのものの中から燐寸を使うことが減った。

 灯明をあげて,線香を焚く場合は,燐寸を使いたいところだが燃えさしの始末に困るため,つい百円ライターを使うこととなる。
 飲み屋さんでも,客が燐寸を請求するとプラスチックス製の店名入りのライターをくれるところが,結構ある。
 さすがに,鴨居に,百円ライターを並べる人は居まい。

 貰えるものは,集めてもかまわぬが,中に喫茶店名入りの灰皿を集める者もいた。
 たまには,開店記念等で配られたりするが,その数は,たかが知れている。
 黙って拝借して来たに違いないらしいのだが,追求はすまい。
 鴨居に並べると地震や何かの時には危ない。

 最近,分煙とかでビニールの小さい部屋(箱)がロビーに設けられていたりする。
 近くで煙がでると,灰皿のそばの空気を吸い込む装置がブーンと唸り出して驚かされる。

 悔恨の情を伴わざるを得ない行為の実施にあたっては,それなりの儀式を必要とするのは言うまでもないことだ。
 煙草のまとめ買いは,しない。
 購入は,自販機と決めている(飲み屋さんの場合は除く)。
 コインを投入すると,その金額に応じて銘柄に発光ダイオードがともる,各々の銘柄にタール,ニコチンの成分量にランクがあり,選択するのは厄介である。
 そのときの体調と相談しながら,おそるおそる押すべきボタンを選ぶのである。
 現在,ハードケース入り(といっても紙箱)は,概ね二百六十円,紙で包んだだけであれば二百五十円だから,普段は二百五十円で済ます。
 この包みの開け方にも,こだわり「あなたの健康を損なうおそれが云々」と記載された側面に近いほうの銀紙を破ることに決めている。
 破らなかった側の銀紙の部分を軽く二本の指でとんとん叩くと煙草が反動で出てくる。
 このときの煙草の香りは好きである。
 火を点けないピースは秀逸である。
 火を点けて喫うときの味はまた,まったく異なるのだから不思議なものだ。
 やおら一本を引き抜き,火を点ける前に,必ず時計回りに煙草を捻る,片手でもできるが,両手で捻ったほうが失敗はない。
 片手だと力が入り過ぎて紙を破ってしまうことがあるからだ。
 紙に皺が入る。
 これは,その昔なんとかリングと言って煙草(普通の紙巻に限るが)を通すと皺が付き,味が丸くなるだか,タール分が減るだかの効能をうたった器具があったのだ。
 それを,簡易に手で行っているわけだが,要するに癖になっているだけで,効果の程は不明である。
 人によっては,親指の爪にフィルター側を叩きつけて,刻んだ葉の密度を高める作業をされるが,こちらは結構大勢の方がやられている。
 私の場合,詰め込み作業しない党,ひねり派だ。
 ひねり派は,まず見かけないので多分随分少数派と自負するが,正確な比率は知らない。

 火を点けるには,今でも燐寸を使うのがベストと信じている。
 擦るときの音,硫黄の臭い,消した時に立ち上る煙,第一,上手くやると格好が良いじゃないですか,でも,最近は不慣れなため指先を火傷したりして惨めな気分になる。
 特に,紙で作った簡便式の燐寸(簾型の厚紙の例のモノ)は,最近増えているが結構扱いが難しい。
 一本ずつ千切って擦るのは野暮で,折り曲げて格好良く擦ろうとすると危ないことがある。
 機能性と経済性で言うなら百円ライターがベスト,今や電子着火式のも風に強いジェット式まで手に入る。
 残念なのは,あまりに手軽,無臭なので,煙草に火を点けると言う実感が湧きにくく盛り上がりに欠ける。
 昔,握り拳をを作り,中にガスを握り込んで火を点け,これから煙草に点火するという離れ業を見せる者がいたがそこまでやると曲芸である。
 値の張るガスライターにしたところで,ガスが無臭なので辛い。
 最近は,デパートでも喫煙用具を扱っているところが少なくなってきていると言う。

 次席になるがオイルライターでの着火が良いと思っている。
 音,臭い,操作性,雰囲気申し分ない。
 ジッポの小型サイズの無地のが良い。
 ひとつ欠点は,ポケットから容易にするりと落ちてしまうことであり,無くすと随分悔しい。
 初めて手に入れたのものは,底面にロゴが筆記体で入っていたから,クラシックジッポに属するものだった。
 知り合いの母親が米軍キャンプで手に入れたのを貰って使っていたが,何年か使って飲み屋で無くした。
 同じタイプを探していたがなかなか見つからぬ。
 似たのをやっとみつけたが,もちろん今のZippoのロゴ,飾りにクラシック時代のロゴが側面に入っていた。
 これも数年使ったあと,仕事中,山中の現場で落とした。
 つい最近になって,同型で全くの無地のを見つけて買ってしまった。
 嬉しくて仕方がないが,煙草に火を点ける度に悔恨の情に呵責(さいな)まれていることに変わりはない。

 大正五年十月に書かれた芥川龍之介の短編「煙草と悪魔」の中に「誘惑に勝つたと思ふときにも,人間は存外,負けてゐる事がありはしないだらうか。」と言う一説がある。

タバコ:煙草,烟草,莨,多葉粉,淡婆姑
参考図書:「煙草と悪魔」芥川龍之介著は,
http://www.aozora.gr.jp/
で読めます。
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後記:今朝は,いつもより早起きをして墓参りをしたが「風に強いジッポ」で線香に火を点けた。
ワダ
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