ふりーはーとメールマガジン ================================== 2001/08/05
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[ふりーはーとのメッセージ]
● 百日紅
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 手元に古い写真がある。
 銀塩がところどころ剥げかけている。
 小さな子どもが,木の股に登って,大きくこれまた,股をひらいて体を支えている。
 右手を片方の幹にかけ,顔は猿のそれを真似ているようだ。
 あたまは前髪をおろして横に直線で切ってあり,まるで乱れてないので床屋さんへ行っ
たばかりであろうか。
 明日は写真を撮るぞと言うことになれば,良い子は髪を切りに行ったものだ。
 普通はきちんと気を付けの姿勢で撮影に臨んだ。
 この写真は,私がどうしても猿の格好で撮って欲しいとダダをこねた結果である。

 雨上がりに百日紅(サルスベリ)の古木によじ登りポーズを取った。
 何故かそのぬめっとした指の感触が数十年経た今も記憶として蘇る。
 よく滑って落ちなかったものだ。
 古木は近所の親戚の庭にあったもので枯れてしまったか,今はもう無い。

 最近,自分が,小さな子どもであったころのことを鮮明に思い出す。
 写真を頼りにと言うのなら,それはその写真を見る度に刷り増しをして行った記憶かも
知れぬ。
 もともとが,自らの記憶ではなく,家族が写真を見る度にしてくれた話で記憶を増幅し
追加して行った所産の場合もあろう。
 家具の傷,躰に残った古傷,身の回りの品々,その一つ宛(ずつ)に想い出が宿って
いる。

 物にまつわらぬ鮮明な記憶が無いわけではないが,時折,反芻(はんすう)しなけれ
ば,忘れて了う。
 意識して,記憶の外へ追い出して置かねばならぬものもある。
 ところが,浅いまどろみのなかでそれを無意識にたぐり寄せてしまったりする。

 百日紅は,日照りが続く猛暑の年ほど,その色を鮮やかに咲かせると言う。
 今夏の暑さは,殊(こと)のほかである。

 明日8月6日,広島は原爆忌を迎える。

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後記 一昨日(8月3日),広島に出張したが,車窓から見える街並みは陽炎(かげろう)
に揺らいでいた。                                      ワダ
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