ふりーはーとメールマガジン == 2001/07/08
第2号
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★☆ 現在発行 34部 です。☆★

● 蛇含草

 酒飲みのおじさんたちは,小汚い路地裏に居心地の良い場所を探して歩いてしまうものだ。
 福山駅前の一等地と呼べる場所に「繊維ビル」と名前もその構造も奇妙な雑居ビルがある。
 無理矢理,駅前に路地裏空間を創り出すために建っているとしか思えない。
 このビルを含めた駅前再開発の計画は随分前から繰り返されているのだが,決して実現することはない。
 それは,福山市が,彼ら小汚路地裏愛好家(?)達のために都市計画を大幅に遅らせているからだ。
 ウソです。

 そんな魔巣窟の一隅に,我が愛すべき出雲蕎麦のD黒屋さんがある。

 数年前,そのD黒屋さんが,当地創業25周年祝賀会をやるということになりました。
 できれば常連客の寄せ書きのようなもので記念誌も作りたいとの話になり,わたしは決して常連でも,上客でもないがその気になって戯れ文をしたためたのです。
 ところが,祝賀会の方は市長は来るは,町長は飛ぶはで某ホテルで盛大に行われたのに,その記念誌とやらは,いっこうに出来る気配はないのです。
 実のところ,30周年もとっくに過ぎてしまった。
 まったく陽の目を見ないのも原稿が不憫なので,梅雨の晴れ間の虫干しに,そのボツになった原稿を当時のまま,今回は,お送りすることにします。

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大黒天




      「含蛇草」                          26th Mar.'95 h.wada

 D黒屋さん、25周年おめでとうございます。

 草戸の明王院は,そう,あの「五重の塔」の明王院ですが,あの五重の塔と本堂の
−ええ明王院のご本尊は十一面観音菩薩ですが−その間の少ぉし奥まったところに
大黒天が,お祀り(まつ)りして有ります。
この大黒さまの建立が文久四年正月と言ひますから,D黒屋さんよりほんの少ぉしだ
け古いような訳で…。
 で,その脇ぃ薮椿がありまして,その下に,そうですね−ウラジロ(羊歯)のようなも
のが時々生えるん。これが,実は,ここだけの話,他所(よそ)で絶対言はないで欲しぃ
んですが,「蛇含草」と云ふ草でして,蛇の消化剤と云ひますか,人を呑むてぇますか
ら大蛇で,この大蛇が人を呑んだ後(あと),この草を食べると云ふと消化剤代はりにな
るんで。

 人間,なんてぇますか,好きな事てぇなあ,ずっと続けてゐたいんで。
食べ物でもなんでもそうですが,できることならずーーっと,食べつづけてゐたいやうな
もんで。実になかなか贅沢なもんでございます。

 あたくしの友だちに大変な蕎麦好きがをりまして,この「蛇含草」の話をすると云ふと
たいそう喜びまして。
何時(いつ)でしたか,D黒屋さんへ一緒に参りました。この友だちと云ふのが,妙には
しゃいで,どんどん食べる,「わりご」をなんと12人前ィ36枚も食べちまった。
ごろりと横になる。「おいおい」と思っているとむっくと起きあがって,トイレに行くと云ふ。
さあ、これがなかなか,戻って来ない。蒲生さん(※お蕎麦屋のご主人)が「ちょっと見
に行ってやれ」てぇもんだから,行ってみると云ふと蕎麦が背広を着て,便器をかかえ
込んでゐた。

(やっこさん「蛇含草」を服(や)ってたんですな。)

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(※)のみ今回挿入。
※「草戸の明王院」弘法大師の開基と伝えられる福山市内の古刹。


本号の参考図書等
古典落語全集(といっても具体はありません,うろ覚えの落語からの翻案です。)
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後記
 少し手抜きの創刊2号になってしまいました。
創刊号内容については,発行者と同世代には受け入れられたようですが,若い方からは,なかなか手厳しい反応もありました,ご意見ご感想感謝。
昨日(7月7日)は,七夕でしたが,当方では梅雨明けもまだ,前線が南へ下がり曇天でした,本日は朝からすでに真夏の日差しです。
そういえば
http://www.pluto.dti.ne.jp/~wada/970205.htm
にD黒屋でのだいぶ前ですが,宴会の写真がありました。
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