「To Heart」 リーフ・ビジュアルノベルシリーズ VOL.3


−春が、すぐそこまで来ていた。

「風、また少し暖かくなったね」
ゆるやかに吹く風を受け、髪を押さえながら、あかりが言った。
高台にある高校へと続く坂道。
オレたちは、まばゆい木漏れ日の下を通り抜ける。
影から出た途端、まぶしい陽射しが体を貫く。
オレは目を細め、空を見上げた。
どこまでも広がる、限りなく澄んだクリアブルーの空。
両手を伸ばせば、その青に溶け込みそうな・・・・・・そんな気がした。

−春。
それは新しい出逢いの季節。
この春、オレはいったい、どんな出逢いをするんだろう・・・・・・?

〜「To Heart」マニュアルより引用〜


ToHeartってこんなゲームです

 「To Heart」(トゥ ハート)は「雫」「痕」に続く「リーフ・ビジュアルノベルシリーズ」の第3弾として、平成 9年 5月23日に発売されました。
 ノベルタイプ初(?)のハートフルな学園マルチストーリー(マニュアルより引用)と謳い、シリーズの特徴は継承しつつ、ゲーム性はより豊かになった、と紹介されていますが、わかりやすくいうと「ときめきメモリアル」や「同級生」、「トゥルーラブストーリー」などに近い、かなり普通の恋愛シミュレーションとなっている点は、前2作と比較しての大きな変更点といえるでしょう。それは、マニュアル内から「マルチシナリオ」という言葉が消え、代わりに「マルチストーリー」という言葉が使われている点からも明らかだと考えます。
 前作からの変更点を箇条書きにしてみました。
1.プラットフォーム
98版と、それをベースにしたWindows95版があった前2作ですが、今作品からはWindows95専用となりました。これにより、256色のグラフィックス、CD−DAのBGMとなり、それぞれの表現力が向上し、また存分に使い切り、ビジュアルノベルとしての完成度がアップしています。
2.動作環境
しかし、それに伴い推奨環境も CPU:Pentium100MHz以上、RAM:16MB以上、HDD:空き容量40MB以上、CD-ROM:倍速以上とアップしています。が、486マシンでも特に支障は無いという話を聞いていますので、486ユーザーな方々も安心といったところでしょうか。
3.シナリオ
また、前述した通り、最も大きな変更点がこの「ハートフルな学園ラブコメ」になったシナリオではないでしょうか。「狂気」をキーワードとして、主人公の心の成長を描いた「雫」。「鬼の血」を引く者の運命を、ヒロインの柏木四姉妹を通じて描いた「痕」。前2作は、どちらかというとダークな雰囲気がありましたが、「ToHeart」は、沢山の女の子との爽やかな恋愛を楽しむという、明るい雰囲気のゲームに仕上がっています。シナリオライターの高橋氏が「まずキャラクターありきの企画でした」と発言されていますが、登場してくるキャラクターがみんな魅力的で、おじさんウハウハ(死語 でした(^^;
4.システム
そして、シナリオが変わるとシステムも変わる、という訳で前2作と大幅に変わったシステムですが、高橋氏自身「ビジュアルノベルシリーズと銘打って世に出すのは、ちょっと問題があるかな」と思ったそうです。これは、違った視点、つまり「恋愛シミュレーション」として見るとすれば良いが、「ビジュアルノベル」と呼ぶにはちょっと違ったものになってしまった、という気持ちがこの発言に隠されているように感じます。私も、ビジュアルノベルとして見ると、余り良い評価はしませんが、シナリオの良さがそれを補っているのと思うので、このシステム変更を否定はしません。

 このように、前2作から大幅な路線変更が図られた「To Heart」、細かな不満点はいくつかありますが、総合的に見て買いです。自信を持ってお薦めします。


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