うっちいの音楽箱!特別企画『もっと!MOZART』

青年時代〜 コロレド大司教A
←前のページ


聖ステファン寺院

ウィーンの街のど真ん中に、今もそびえ立つステファン寺院。ビルに囲まれたその建物は、なんとなくミスマッチだ。 この寺院の近くに、フィガロハウスが移されている。

モーツァルトの青年時代が、もっぱらコロレド大司教との確執に終始したかというとそうではない。 その中で彼は数々の傑作を書いたし、数々の恋もした。その中でも、アロイジア・ウェーバーへの恋は、 モーツァルトの生涯の中で最も切なく、もっとも深いものであった。それはちょうど、彼の母の死とほぼ同じ時期のことであり、 心に穴のあいたモーツァルトが、その穴を埋めるべく熱烈に恋をした、のかもしれない。
フリードリン・ウェーバー家の次女、アロイジア・ウェーバーは美しく才能あふれるソプラノ歌手の卵であった。 彼は旅先のマンハイムで彼女と知り合い、すっかり心を奪われてしまう。

「君の声はまるで天国の鳥のようだ。そして君はまるで天女のよう。。。」

マンハイムでは就職の見込みがないとわかってからも、 さらに滞在をしようとする息子に、父は叱責の手紙を送る。「パリへ行くのだ!」

しかしパリは、もうモーツァルトのことを神童としては扱ってはくれなかった。どうにかして仕事を見つけたい、 お金を稼ぎたいモーツァルトに対して、人々の反応はよそよそしかった。それもそのはず、モーツァルトくらいの歳の音楽家などざらにいたし、 モーツァルトは自分の才能を鼻にかけている。パリの人々は、彼をけむたがったのだった。

「パリは昔のような音楽を愛好する人たちにあふれた街ではない。 うわべだけのお世辞にあふれた街だ!」

モーツァルトは嘆く。


うまく行かないときには、不幸が重なるものである。なんと、旅先のパリで母アンナ・マリアが病の床に伏し、ついに亡くなったのだ! モーツァルトは、故郷に残る父のショックを軽減しようと、母の死後、一度”母危篤”の手紙を送ってワンクッションおいてから、 ”母死亡”の一報を父に送る。

悲しみに打ちひしがれるモーツァルトに、さらに不幸が訪れる。 今やミュンヘンのプリマドンナとして活躍する、アロイジアに愛の告白をし、見事に振られてしまうのである。 大都市ミュンヘンのプリマドンナにとって、就職の宛のないモーツァルトは、魅力のない田舎作曲家と写ったのかもしれない。 モーツァルトは悲しみのどん底に突き落とされる。
「お父さん、どうか私を慰めて下さい。」
彼は父に手紙ですがっている。


故郷に帰ったモーツァルトは、しぶしぶ復職願いをコロレド大司教に出す。 コロレドは今までの3倍の値段でモーツァルトを雇うが、旅先で自分の名声を体験してきているモーツァルトにすれば、 3倍くらいでは全く満足できなかった。しばらくおとなしく仕事をし、戴冠ミサなどを作るが、すぐにウィーンへ移ってしまう。

「コロレド大司教は、自分をただの召使いぐらいにしか考えていない。第一、音楽の”お”の字もしらない 堅物だ!」

モーツァルトはコロレドを嫌うどころか憎むようにさえなる。

次のページ

うっちいの音楽箱
Copyright (C) by Hitoshi Uchida. All rights reserved.