うっちいの音楽箱!特別企画『もっと!MOZART』

幼少時代〜

天才誕生



モーツァルト生家

アーケードの向こうの黄色い建物がそうである。モーツァルトはザルツブルク旧市街にある、このアパートの4階で生まれた。 現在はモーツァルト記念館になっている。

1756年1月27日、塩の交易で賑わう小さな都市で一人の天才が生まれた。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。父はレオポルド、母はマリア・アンナ。

レオポルドにとっては、 まさに神からの授かりものであった。なぜなら、彼の子どもは、当時の多くの乳児がそうであったように、 次々と息を引き取っていたのだ。健康に育ったのは姉のナンネルだけ。父レオポルドの喜びはひとしおであった。

しかしレオポルドは、神からの授かりものであるヴォルフガングが、後に「神童」と呼ばれることをまだ知るよしもない。
ヴォルフガングは凝り性(こりしょう)なところがあった。自分が興味を持った遊びは、ごはんの時間だろうが寝る時間だろうがお構いなし。 実に朝から晩まで続けてしまうのである。

「弟は、誰かが止めない限り、いつまでも遊びを続けてしまうような子だったわ。」
姉のナンネルもそう振り返っている。

そんなヴォルフガングの周囲には、いつも音楽が溢れていた。無理もない。 父は宮廷音楽家。世界的に有名な「ヴァイオリン教程」の著者でもある。そして、 父から教育を受けた姉のナンネル。彼女も毎日のようにクラヴィア(当時の鍵盤楽器)に向かっていた。 そんな環境の中で、凝り性のヴォルフガングが音楽に興味を持たないわけがない。

まず、クラヴィアに興味を持った。
まだ4歳の、椅子から足の届かぬヴォルフガングは、和音を探しては鳴らし始めた。 周囲の人間には何気ない和音が、彼の耳には宝石のように感じられた。

「なんて美しいんだろう!」

ヴォルフガングは思う。気が付くと日は暮れ始め、いつまでたってもクラヴィアから離れない息子を心配した父に、 無理矢理ひきずりおろされた。


「お姉ちゃん、上手だね!次はぼくの番だ。」

ナンネルは目を丸くする。

「何を言っているの?あなたは一度も・・・」

ナンネルの言葉も聞かずにヴォルフガングはクラヴィアの椅子に座る。
ナンネルは再度、目を丸くした。和音しか弾いたことのない弟が、いきなりクラヴィアを弾き始めたのだ。 その目は楽譜など見ていない。喜びに満ちた瞳はナンネルのことを見ている。

(私が何度も練習をして弾けるようになった曲を、練習したこともない弟が弾いている!)

ナンネルの頭の中は驚きで混乱した。
そして、その倍くらいの驚きのまなざしで、父レオポルドは自分の息子の姿に魅入っていた。

(この子は、いったい・・・)

父レオポルドが、神から授かった自分の息子に、神の姿を見た一瞬であった。

次のページ→

うっちいの音楽箱
Copyright (C) by Hitoshi Uchida. All rights reserved.