Todd EXP's.音楽の日曜大工コーナー
エフェクター編

トーキングモジュレータの作り方◎


【トーキングモジュレータって何?】
  古くは、ジェフベックやピーターフランプトン、ジョーペリー、ジョーウォルシュ、最近では、ボンジョビのリッチーサンボラ等が使っているので見た人は、知っていると思いますが....ギターが喋っているかのように聞こえるエフェクター?って言うかそう言う効果を出す装置です。あまりポピュラーなエフェクタでない理由としてその昔、「使いすぎると脳天がパー」になると言われていましたがどうも眉唾ものでただホースを口でくわえる為に唾液がどうしてもホース内に溜まり頻繁に清掃しなければ臭くなるし、あんまり衛生的でないという点が問題なのでしょう。(セッティングが面倒くさい等も上げられる。)しかし、多用は出来ないもののここぞと言う時には、絶大な効果を発揮する装置です。(あまり多用し過ぎると聴く側に飽きられると言う欠点もあるかな)


【試聴お勧めCD】
 
Beck Bogert & Appice LIVE in JAPAN   Jeff Beck 「Blow by blow」
Black cat moan                     She's a Woman


【構造】
  極めて簡単な構造です。簡単に説明するとスピーカーから出るギターの音を外に漏らさずホース等で口元に持ってくるだけです。
  
左:本体の概観(第3試作) 右:使い方


【原理】
  ホースを口でくわえてギターを弾くと音は、口の中だけで共鳴します。ただ、口の形を変えるだけならばワウワウ(ペダルワウ)を使った時の様な効果が表れます。(別名マウスワウとも呼ばれています。)これでは、あまり面白くないので今度は、ギターを弾きながらその音に合わせて声帯を震わさず(声を出さずに)喋ってみますとあら不思議ギターが歌っているかの様にきこえるのです。(自分の声を出さないので音程は、ギターのフレーズになります。したがって、歌わせる場合?は、確実にギターでメロディーラインを演奏しなくてなりません。)この音をボーカルマイクで拾ってPAで鳴らします。ペダルワウやボコーダーの様に電気的なフィルタを通すのではなく人間の体(口)事体をフィルターにしてしまう究極のアナログフィルタとも言えるでしょう。より人間味あるギター?演奏が可能になります。(笑)


【現状】
  市販品としてマクソン等のエフェクターメーカーが発売していましたが最近は、あるにはありますがあまり見かけなくなりました。(と言うより昔からあまり見かけませんが....)たまに楽器店の隅っこ見つけても値段が¥20,000以上と高いのでなかなか買う気になれません。また、確かジェフベック等の諸先輩方の写真等を見る限り市販品を使っているケースをあまり目にしていませんので自分で作ってみる事にしました。(結局、失敗を含め作る苦労や工作道具の購入を入れると市販品が買える費用がかかった。)


【問題点とその実現】
  まずの問題は、スピーカーから出てくる音を外に漏らさずにどうやって口元まで持ってくるか、大出力の音量をどうやってスピーカーに負担をかけずに鳴らすか、実際のライブ等でのセッティング方法を如何に簡単にするかの3点です。

・第一試作
  トランペットスピーカー(運動会などのアナウンス用に使われるトランペット型のホーンが付いたスピーカー)のホーンを取り払いそこに無理矢理細いホースをつないで試してみました。ホースから出てくる音以外は、完全に遮蔽されているので音漏れは皆無、この点は、これに勝るものは、無いとまずは、成功したのですが一般的にこの種のスピーカーは、入力電力が小さく(10Wぐらい)大出力なギターアンプに接続すると焼けきれてしまいますし、値段も高いし入手が困難なのが難点です。私の場合は、もらい物があったのでただでしたが数回試しているうちにスピーカー内部のコイルが断線したのか音が途切れるようになりお払い箱行きになりました。

・第二試作
  もっと汎用的なもので出来ないか?と考えて今度は、外部に音が漏れないように全ての面を閉じた木製の箱を作成し、普通のフルレンジスピーカーを中に収め、スピーカーを取り付けた面にだけ小さな穴を開け、そこへホースを差し込む方法を試みてみました。一応、可搬性を考慮してスピーカーのサイズは、10cm径にし、手持ちのギターアンプの出力(50W)を目安に最大80W入力のスピーカーを使用しました。少し余裕の出力を出せると思いギターアンプをフルにして試した所、効果抜群の性能でした。出力を大きくすると箱から漏れる音が気になりますが実際には、マイクで口元の音のみ拾うので問題にならないでしょう。ただこれも1時間ぐらいの連続使用でスピーカーが焼けきれてしまいましたが....やはり問題は、スピーカーの入力値です。通常の音と違い、ギターの音は、常に最大で持続する傾向(特にディストーションとかのエフェクタでサスティーンを得て使用する為)にあるので平均入力値の大きなスピーカーが必要なことを痛感させられました。10cmと言う大きさで大入力のスピーカーはあまり見かけず、あっても少し高価なのでちょっとこの方法も駄目かなと思いつつ第三試作に向かいます。

・第三試作
  ライブでの使用を考慮した結果、セッティングする際の問題としてギターアンプのスピーカー出力をトーキングモジュレータにつながなくてはなりません。ギターアンプ等の器材を自前で持参すれば問題ないのですが通常は、ライブハウスに備え付けあるいは、レンタルしたギターアンプを使用することになるので通常のギター音との切り替えを含めセッティングの配線が複雑にかつ、アンプの機種により違うと言う事になりますし、それによって他人の器材を破損する恐れも発生してきます。
  上記の問題を踏まえてトーキングモジュレータ専用の小型アンプを作成する事にしました。これによりアンプの出力を小さ目にして第二試作で経験したスピーカの入力問題も解決する事になりました。通常の音との切り替えは、ギターアンプに出力するかトーキングモジュレータ専用アンプに出力するかを手持ちのフットスイッチ(BOSSのエフェクトループ切替器[LS-2])で切り替えることにしました。アンプの出力が最大12Wと小さくしたので少々ホースから出てくる音量が小さ目ですがマイクを通して実際にPAで鳴らした結果は良好です。スピーカーの焼け切れも今のところ大丈夫のようです。

  
別途に自作したアンプ部(約20W出力)

【各製作の参考図】
 

【主な部品とおよその費用等】
 
スピーカー1 第二試作:10cm径 80w入力  インピーダンス=6Ω
¥2600
スピーカー2 第三試作:10cm径 20w入力 インピーダンス=8Ω
¥1000
標準ジャック      スピーカーボックス側入力用
¥90
*プリアンプキット 本来は、マイク用プリアンプ。DC12Vで動作
¥980
*パワーアンプキット    8Ωで12w/4Ωで20w出力 DC12Vで動作
¥2380
*AC電源基板 AC100VをDC12Vに変換(約2A)
¥500
*標準ジャック アンプの入出力用に2ヶ
¥180
*電源スイッチ 1回路2接点トグル式
¥130
*アルミケース アンプ用 12 x 5 x 20cm
¥500
*電源コード ACプラグ付き 1m
¥100
木材(板) 100 x 12 x 1.3cm 単板 
¥360
ホース 約1cmΦ x 1m
¥200
木ネジ 約1.8cm長 x 24本入り x 2袋 
¥180
ホースジョイント 連結用のものをスピーカーボックスとのつなぎに使用   
¥240
   
注意:アンプを製作しない場合、* 印の部品は、必要ありません。
 
電気部品は主に秋葉原、木工部品とホース等は、Doors(近所のディスカウントショップ)にて購入しました。


1998 copyright Maeda Music Industry inc.