7. 「 鋳 造 活 字 」 の 製 作 工 程

 ここで振り返って、活字製作の工程を説明しておこうと思う。
 その理由は、今までの説明が『活字』というものの形態をよく知っている人達を対象に話を進めて来たきらいがあり、またそうした人達は、この説明を読み進めるに当たっては、たえずその「活字原型」を思い浮かべながら解釈いただいたのに違いないからである。
 それにひきかえ、「活字」というものを実際に目にされたことのない人達にとって、その書体が『同型』であるということや、同一か否かのギャップの意味するものが、「漠然としか理解されないのでは?」という親しい人の助言によるものである。
 言われてみればその通りで、ここに至るまでの「ひとりよがり」はお許し願うとして、改めて「活字製作の手順」を説明することにする。

<出き上がり図>
 『活字』というのは、鉛合金(鉛80、アンチ15、錫 5%)により作成されているが、その製法の基本は「鋳型」と「母型」と言う部材の組み合わせで作られるのである。その手順図を図7に示してみる。

図7へ

 この図は、洋文字・和文字にかかわらず、「活字」が出来上がるまでの原則図である。したがってどんな印刷物であっても、そこに使われている字種数だけ「母型」は存在するのである。この方法の最大のメリットは、熔融剤の固着という繰り返しによって、同一文字が機械的に複数個作成できるという点にある。これはそれまでの彫刻活字という手法と較べると画期的な考案であり、グーテンベルクの発明の偉大さの一つである。
 煩を恐れずに、もう少しこの手順を説明する。

<バンチ母型製造法および活字鋳造方法>
(1) まず活字原型を鋼材に彫刻し「父型」を作る。(出来上がりとしては印鑑などと同じようにその印字面は凸型で鏡文字に仕上がっている)
(2) その父型を真鍮材に打ち込み「母型」を作る。(字形部分が凹んだ形の凹型となる)
(3) 活字のボディ部分を形作る「鋳型」と、その「母型」をセットする。
(4) 鉛合金を流し込み一本の活字を作る。(「字面」部分は母型の凹み、「ボディ」は鋳型の空洞部分で一体化された活字が出来上がる)

 なお、これらの図は、説明の不足を補うために工程原理をフリーハンドで描いたものである。

<電胎母型製造法>
 この方法は、パンチ母型製造法のようなオリジナル製造法ではなく、コピーのような複製方法である。すなわち先の方法で出来上がった活字があれば、それを「種字」として、電気分解によるメッキ作用により「銅材」の母型を複製するという方法である。
 この方法に従えばオリジナル父型を持たなくとも、いくらでも母型の複製が図られるので、多方面への展開が可能となる。

 そうした輸出先の一つとして「オランダ」があり、また別の一つとして「日本」があったのである。
 したがって、オランダでのこの「ホフマン活字群」と、日本での導入時の活字群のうち「4号活字」と呼ばれるもののルーツは、実は「上海・美華書館」で使われていた母型より生まれた「兄弟活字」にあったのだ、ということを伝えたかったのだし、そのための説明を縷々繰り返して来たつもりでもあったのだ。


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