ヨーロッパで使われていた漢字の活字
『ホフマン活字』のこと


◆目次◆
  はじめに
1.ヨーロッパへの日本紹介 
2.天正遣欧少年使節と印刷機の到来 
3.シーボルトとその弟子ホフマン 
4.オランダの大手印刷会社『ブリル社』 
5.「書物研」での発表資料とインタビュー記事 
6.ホフマン活字の特徴 
7.「鋳造活字」の製作工程 
8.欧米人と「漢字形活字」の製作 
9.わが国にもたらされた明朝体活字 
  おわりに 



は   じ   め   に

 『活字禮讃』(活字文化社 1991年)という本がある。
 明治の始め、わが国に活版印刷術がもたらされて以来、この国の文化を支え育んできたと言える「活字文化(活版印刷術)」が、昨今のデジタル時代に追いやられ、その中心素材であった「活字」は、何の惜しげもなく産業廃棄物として消滅しつつある。
 そうした渦中で、「活字」に寄せる並々ならぬ愛着を吐露した多くの人たちの、文字通り「活字礼讃」なのである。
 作家・出版社主・学者・デザイナー・装丁家など、あらゆる分野の人たちが、今日の自分を育ててくれたという確信で、それぞれの立場から「活字」や「活版印刷」に寄せられた賛歌なのである。

 身近なところでは、活版印刷の持つ「独特のインクの匂い」、そうした本を「1頁1頁めくる時の快感」、「印圧で用紙に生じた微妙な凹凸」、はては幼少年時代の「読書体験」、かいま覗いた印刷屋で「掌に乗せられた名前の活字」、そして,「酸性紙の問題」など今日的なテーマに触れたエッセイなどである。
 この道に育てられた筆者にしてみれば、どの一編を見ても全くの共感であり、かくまでに同憂・同好の士の多さに心強さを感じたことではあるが、つまるところは「滅びの美」への鎮魂歌に過ぎないのかという諦めもある。

 しかしながらこうした「感懐」も、ある時期、誰かが筆にしておかなければ何時の日か完全に忘れ去られることとなり、消えてしまうおそれもある。その意味で、筆を執られた多くの方々に満腔の賛意を表したい。

 いま私は『ホフマン活字』のことを喋ろうとしているが、筆を走らせつつ頭に去来するのは、これらの方たちとの一体感である。


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