9.特徴5・文選工はこうして「漢字」を覚えた

 タイトルを「文選ケース讃歌」としたので、その「独り善がり」を恐れずに、最後に触れておきたいことがある。

 もともと漢字には、同一音で字形の異なる文字がたくさんある。ワープロをたたいてみると面白いほど飛び出して来る。筆者愛用の「書院」では次の順で画面に出る。

 これらの表を眺めて見て、なるほどと感心する一方で、目的とする文字にたどり着くまでの大変さを味わっておられる方が多いのではなかろうか。機械としての性質上、単音で出来るだけ目的を達しようとするとこのような結果になるのは当然だし、これ以上の改善はユーザーの意見を取り入れて、少しずつ改良されて行くのであろう。

 余談は別として、文選の職人たちは作業中に文字の補給を頼んだり、仲間内でこれらの文字を間違いなく伝えるために独特の方法を取っている。
 それは、目的とするその文字を『訓・音ヨミ併用』で表現するという方法である。

 例えば、「日」は「にちビ」であり、「火」は「もえビ」、「水」は「みずスイ」と呼び、「木」は「もくキ」、「金」は「かねキン」と呼ぶやり方である。

 原則と言われるほどのものを教えられたという訳ではないが、ほとんどは前にその文字の意味する「訓ヨミ」を、後に「音ヨミ」をセットにして呼ぶ呼び方なのである。

 例えば、「もって・イ」といえば「以」であり、「くらい・イ」といえば「位」という字形が明確に相手に伝わるのである。こうして書いて説明していると繁雑なように見えて来るが、使い慣れてみるとその工夫の程に驚嘆する。

 もう少し例を挙げてみよう。

 こうした呼び方に一定の法則を求めるとすれば、やはり「訓音ヨミ」と言うことになるのであろうか。


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