8.特徴4・ケースの配置が効果的であるということ

 どんな商売・職業でも、その効果を上げるために一工夫も二工夫もされているものである。それだけに、ことさらに取り上げるまでもないことだが、前掲のケース配置図を見ていただきたい。
 文選工は、合計20枚のケース配置の前に立って作業するのだが、「かなケース」をはじめ使用頻度の高い「出張・本場ケース」などは、文選工の立っている正面より右寄りに並べられている。言うまでもなく、採字する右手がスムースに伸ばせる範囲内にセットされているのである。
 そして、それぞれの20枚は独立して取り外しができ、予備のケースと入れ替えが自由となっている。

 また、出張ケースの一部に設けられている「大阪市東西南北‥‥」などは、関西の独自設定であろうが、これに類した臨機応変のスペースを設けたりしておくと、原稿の中の座談会出席者の氏名や「環境」「経済」など、使用頻度が特別に高くなる文字などもセットして置けるのだ。そのほかにも職人たちはそのときの原稿に応じて「熟語」をセットしたりして自分の作業の効率を図っていたものである。

 繰り返し言うが、こうした工夫はどんな職業でもちりばめられており、それぞれの職人たちは無造作に行っているのだが、外部の者から見ると、そうした工夫の一つ一つが嶄新なものに見えて来るようであるから不思議である。


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