5.「当用漢字表」以外の文字の扱い方

 前項で記したことは、漢字の使用が1850字に制限され、それ以外の文字形は大げさに言えばこの世から追放?しようとするものであった。
 従って、<かな書き><交ぜ書き><置き換え>などが奨励されたのである。これらに対する一部の学者達の批判のことは先に記したが、もっと大きなブーイングは子供に付ける名前もこの範囲でなければ受け付けられず、戸籍係の窓口でトラブルが多発したことであった。考えて見ればそのはずで、親が子供に名前を付けるのは、このようにあって欲しいと言う希望を託するものなので、その意味で漢字の持つ表意性はぴったりなのだが、日常雑事の記述本位に考えた字数制限なので穴があいてしまい、親の一字を付けたくても駄目というようなことが起きたりしたのである。こちらの方は衣食の欠乏には我慢した庶民といえども抗議は収まらず、5年後の昭和26年になって人名用に限りとの制限付きで「人名用漢字92文字」が設定されるのである。参考までに、当時どんな文字が表外字であったのかを並べてみる。

 <例>
乃・丑・仙・卯・弘・丞・亦・亥・伊・圭・庄・吾・宏・杉・辰・亨・奈・尚・
昌・朋・欣・虎・亮・哉・彦・玲・祐・郁・晃・桂・浩・竜・寅・淳・猪・鹿・
亀・惣・敦・智・琢・欽・須・楠・瑞・睦・禎・稔・靖・嘉・熊・爾・綾・聡・
肇・輔・………etc.

 勿論これが全てではない、画数の少ないところから半分あまりを選び出したのだが、周囲の友人達に見慣れた文字が制限されていたのに驚かれるに違いない。
 更に昭和51年(28文字)、56年(46文字)と追加の巾はひろげられ、人名に限ってみると1850文字+166文字の2016文字までが使えるようになったのである。それでも基本的な1850文字は依然として動かさず、<お上>のする事に誤りはないという強行姿勢できたのだが、昭和56年10月になってはじめてそれに95文字を追加し、「常用漢字表1945文字」を発表したのであった。

 従って、今わが国で大手を振って使える漢字数というのはこの1945文字なのである。ただしこれ以上を使うと罰せられると言う性質のものではないだけに、公用文・教科書以外は徐々にせよその使用範囲は広がっているというのが現状である。
 ただその広がりの中で、漢和辞典にも載っていない「ニセ文字」が横行しているというのが今回の騒動の発端である。


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