ここまでに述べてきたことで、現代の「印刷文化」の、そのルーツともいえる《活字》の源流が、大きく分けて3つの源があったのだ、ということをお伝えできたことと思う。
 蛇足になるが、その「3つの技法」を、いくつかの要素別にわけて比較してみると、次のとおりである。

1.発明年
(畢)1040〜1048年ごろ
(王)1312〜1313年
(グ)1445〜1450年
2.活字の素材
(畢)膠泥
(王)木(材質不明)
(グ)鉛合金
3.活字の形状
(畢)銭貨の縁のように薄いもの
(王)一定の高さに切り揃えた立方体の木ゴマ
(グ)活字鋳型の発明によって自動的に均一の高さに揃えることのできる鋳造活字
4.活字の製作方法
(畢)膠泥に直接刻し、火をもって焼きかためる
(王)木ゴマに直か彫りとする
(グ)鋳型と母型をセットし、熔融された鉛合金を流し込んで作る
5.大量生産方法
(畢)不適
(王)不適
(グ)容易
6.組版方法
(畢)鉄板上に固着剤を敷きつめ活字を並べてから字面を平板でならす
(王)素材段階で均一であるので並べ終えた時点で組版は出来上がり
(グ)活字が均一のため並べ終えた時点で完成品
7.活字収納方法
(畢)不明
(王)回転式活字収納ケースに配置
(グ)不明
8.印刷インク
(畢)不明
(王)墨汁(水性)
(グ)金属活字になじむように工夫された油性のもの
9.印刷方法
(畢)不明
(王)刷毛のようなもので摺りながらインクの転移を図る
(グ)ぶどう絞り器を改良し上からプレスしてインクの転移を図る

こうして並べて比較してみると、グーテンベルクの発明がいかに飛び抜けて効率的であるかがよく解る。


む   す   び

 『活字には3つの源流があった』という思いを、いくつかの文献の紹介も兼ねて述べて来た骨子は以上のとおりである。
 こうした先人たちの発明が、その後どのような経過を辿り、どのようにして現代の技法に溶け込んで行ったのかも興味の湧いて来るところである。
 「朝鮮の印刷術」、「中国での印刷術」、そしてなによりも「わが国印刷術への影響」など、まだまだ知りたいことはたくさんある。
 書誌学研究会のみなさんから教えていただいて今後とも励むつもりである。

 本編作成にあたって、いくつかの助言をいただいた近畿大学中央図書館の森上 修先生には深く感謝する次第である。

(1990年7月)
【参考文献】
『印刷技術読本』
凸版印刷株式会社刊
『夢渓筆談』
沈括著・梅原郁訳注(平凡社東洋文庫)
『図解和漢印刷史』
長澤規矩也著(汲古書院)
『中国の印刷術(2)』
T.F.カーター著・薮内清他訳注(平凡社東洋文庫)



<私家本>
活字の世界(4)
『活字の源流をたずねて』
山口 忠男・著
印刷・1990年7月


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