グーテンベルクのことについては、すでに多くの人がいろんな所で紹介しているので、ここでは簡単に説明するにとどめよう。
彼が、「近代活版術の祖」といわれるようになった理由には、主として次の2つの発明によるのである。
その1つは、黄銅による活字母型の発明と、活字鋳型を考案したことによって、同一活字の大量複製を容易にしたことによる。
活字というものは、熔融された鉛合金(鉛80%.錫5%.アンチモン15%)が注入されて、文字面部分(母型)とボディ部分(活字鋳型)とが、一体化されたものに出来上がっているのである。
この2つの部材を別個に作成し、活字製作時にはこの2つの部材を一体化させる、という独自の発想によって、多種多様(最初は、大文字小文字で約60種、ボディ巾も3〜4通り位か?)の活字を、 自在に作りあげることに成功したのである。
この部分においては、先に説明した「畢昇」や「王禎」のような、1本1本を彫刻する技法と比較すると、その飛躍的な効率と発想の偉大さがよく解る。
勿論、当時のヨーロッパとて、それまでの本づくりは、木版印刷によるか、筆写(写本)によるかがそのすべてであったのである。
彼の発明の偉大さの第2は、それと同時に印刷機械を考案したことである。「ぶどう絞り器」をヒントにし、上からの印圧を加えて、用紙にインクの転移を図ろうとする「平圧式印刷機」のことである。
このことも、先の中国での先駆者達が考えた一枚刷りの摺刷方法と較べると、画期的なものであることがよく解る。
前項の『王禎』のところでの記述を繰り返すまでもなく、それまでの印刷技法は木版印刷が主流であり、その方法は大きな経費を要することでもあり、それだけに、広く民衆への知識の普及とて望むべくもなかった。
さればこそ、グーテンべルクのこの簡便なる印刷方法の発明は、それまでの人類の文化(知識)を、印刷という媒体を通して、広く深く普及させるという功績を打ち立てたのである。それゆえに、彼のこの発明は「世界3大発明」のトップと賞賛されるに価するものとなったのである。