<3> 行間用インテル使用の痕跡とその証明

 次の一点は、行間にインテルを使用した印刷物であることを見付けたことである。インテルという語源は不明だが、その役割は行間用の空白部(非印字面)を構築する部材なのである。従って活字などの印字面を構成する部材とは高さが違い、版面にインクが塗られてもそのインクが付かないために、紙面は空白となるのである。
 ところが版面の構築上本来は隠れていなければならないはずのインテルが時折顔を覗かせることがある。これを<インテルの浮き上がり>という。活版印刷には時としてこうした現象が発生する。その図解を見ると次の通り。<図11>

図11参照

 さらにそのインテルが偏ったために先端文字が行間分だけ前行と接触したケースも発生している。これらはいずれも行間用インテル使用の証明となる。実際にその状況を図で示すと次ぎのとおり。<図12>

図12-1・12-2・12-3参照

 このほかに匡郭(輪郭)の重用や活字コマの転倒など、この刊本が<活版術>によるものであることを示す材料は随所にある。

 さて本題を「活字の世界」に戻してみる。
 前項で筆者は、甫庵が『蒙求』を刊行のトップに選んだ理由を、次の世代の健全性に期待したと表現した。さりとても物事が単にその情熱だけで達成することはない。それだけにこの大事業のうらにどれほど綿密な計画と大胆な実行力があったのかを<その作業手順を追って>次ぎに述べてみたいと思う。


「5.その作業手順を追って」へ
前ページへ
ホームの目次へ