4.わが国最初の?組版による古活字版

 この刊本が<木活字による印刷>ということと、文禄5年刊という点が<わが国での活版術の嚆矢である>という栄誉はすでに学者が述べている。
 しかしながらこれがどのような作業手順で進められどのように実行されたかは未だ誰も触れていないという。
 印刷界での一介の技術者に過ぎない私が、このような貴重書を検証することができたのは、次のような僥倖と幸運に恵まれたからである。
 それは従来から長年にわたり、学問的な見地から調査を続けて来られた近畿大学中央図書館の森上 修先生から、『視点を変えて……』技術者の立場から、とその意見を求められたからである。

 始めのうちは単なる印象と感触を答えていたに過ぎなかったが、その学問的な解明は別として、活字のこと、インテルのことなどの検証を深めて行くにつれ、時間を忘れるほどの興奮に引き込まれたのであった。
 以下手順を追って、調べた項目とその中で想像し推理した思いの一部を雑文風に報告してみることにする。報告に出て来る部材の名称と原型は次のサンプル図の通りである。

図7参照

<1>「四字成句」の大型字について(596句)

 時折に聞き慣れた四字成句が目につくが、大半は正直いって読み方も解らない。それでも一文字づつを何度も繰り返し眺めるうちに、同じような癖、同じキズをもった文字が目について来る。これは同一コマが流用されているのだなと思い当たり、最初に手掛けたのはどの文字がどの箇所に出現しているのかを調べる<戸籍簿>作りであった。
 漢和辞典の字画索引を基準とし、596句・2384本の調べた結果を記録して行くのであるが、異体字や画数の食い違いもあって思わぬ時間を要したが、結果としてその労を惜しまなかったために検証する喜びを倍加させてくれたのである。


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