「活字印刷」の発明が、知識の普遍化を促すという役割によって、人類の進歩に大きく貢献したと言うことは多くの書によって語られているところですが、そうした恩恵の究極の道具であるコンピュータによって、「印刷」というものの手法も大きく変化させられつつあります。
いわゆる「活字」というものと「印刷」というものが大きく切り離されて、それぞれが別個の道を歩み始めたことを予感させる「デジタル時代」の到来です。そんな中で、「活字」というものの役割は単なる記号に過ぎないと言う「活字文化」軽視の風潮に抗らう者として、一歩立止まって今までの「活字の世界」を尋ねてみようと思い立ったのです。
記述内容は、川田久長氏の「活版印刷史」や鈴木敏夫氏の「プレ・グーテンベルク時代」の範疇でもありますが、各テーマごとに「よみもの」スタイルにして、少しでも興味を持っていただけるよう心がけたつもりです。同好の方と語りあえればと思っております。
*現時点では3、4、5、7、11、12 、13について各々要旨及び全文を用意しています。
山口忠男。1932年生。もと凸版印刷(株)社員。入社後文選・植字・電算写植と活字関連部門に勤務。退職後は私大図書館阪神地区書誌学研究会・西洋古典籍研究会・書物研究会などの会員。