
天気のよい昼間、見上げると何が見えるかといえば、そう 青い空だ。
夏は湿った白っぽい空になる日が多いが、午前中なら意外と澄んだ青空になることもある。そんなときの空と積雲のコントラストは、とても美しい。
秋、爽やかな風が吹く頃、薄い巻雲が広がる透明な空。大陸から移動性高気圧が張り出し、穏やかな天気が周期的に訪れる。
冬、冷たく乾燥した空気と、青く高い空。夏に見るような積雲を見る機会は少ないが、ダイナミックな空気の波動を感じる。
春、暖かい南風と冬の冷たく強い風が同居する、霞んだ空。
季節によっても青空は、いろんな表情を見せる。
それだけではない。晴れていると、体調が良い気がするのは私だけだろうか。朝起きて、外を見てみる。眩しい陽の光が窓いっぱいに射し込み、透き通った青い空が目に映る。そんな時は気分よく目覚めることができる。それに単純に天気の好き嫌いで言っても、青い空が嫌いな人はあまりいないと思う。
日常生活で当り前に見るこの青空だが、ではなぜ「青い」かの理由については、ちゃんとした理屈がある。日常生活でその知識が役立つことはあまり無いと思うけど、興味のある方は以下の長文にお付合い下さい。
空が青い理由を理解するには、大きなポイントが二つある。
まず、地球を覆っている空気は、太陽の光を100パーセント完全に透過するわけではない点が第一のポイントだ。
太陽の光が空気中を進む際に、空気の分子に当った光の一部が四方八方に乱反射してしまう。この乱反射のことを専門用語で「散乱」と言う。大部分の光はそのまま地上まで届くが、問題はその散乱された一部の光にある。これが青空を作り出すのだ。
さて、ここで雲や霧に空を覆われた天気を思い出してほしい。
空は白色で、太陽の方向だけでなく全体的に明るくなっているはず。これは雲や霧を構成する水滴に太陽の光があたり、それがあらゆる方向に散乱されたために、空が真っ白に見えているのだ。
空に広がった雲や霧がいわば映画のスクリーンのような役割をして、白色の太陽光を受けて光っているような状態だといえる。
晴れた空でも、実は同じようなことが起っている。雲や霧の場合ほど強くはないけれど、空気の透明さが失われない程度に、空気の分子により太陽の光が散乱されているのだ。
しかしこの理屈では、空の色は雲や霧の場合と同じく白色になってしまう。さらに何か、空を青くしている要因があるはずだ。
そこで第二のポイント。それは、太陽の光が空気の分子に当ったときの散乱の仕方が、光の色(正確には光の波長)によって異なることだ。(雲や霧を構成する水滴による散乱では、このようなことは起こらない。)
太陽の光は様々な色の光が混ざった結果、白い光に見えている。虹の場合には、水滴内での光の反射する角度が色によって異なるためだったが、実は空気分子により散乱される度合いも、色によって異なる。
どういうことかというと、空気分子に光が当ったとき、青っぽい光の方が、赤っぽい光よりも散乱されやすいのだ。このような性質は、証明した人の名をとって「レイリー散乱」と呼ばれている。 青っぽい光の方が散乱されやすいものだから、空の色は青くなるというわけだ。

以下ちょっと難しい話。
目に見える可視光線は、波長0.38〜0.77μmの電磁波だ。この波長は空気分子よりも十分に大きい。このように電磁波の波長が、粒子の直径より十分に大きいときにレイリー散乱となり、散乱される度合いは波長の4乗に反比例することがわかっている。
青っぽい光の波長は短く、赤っぽい光は青っぽい光の2倍くらい波長が長い。散乱される度合いは波長の4乗に反比例するのだから、単純計算で青っぽい光は赤っぽい光より2の4乗つまり16倍も散乱されやすいことになる。
なお空気中の雲や霧などの水滴は、直径が光の波長と同程度なのでレイリー散乱にはならず、散乱の度合いは光の波長で左右されなくなるため、散乱された光は太陽光と同じく白色となる。雲や霧が白く見えるのはこのためだ。これは「ミー散乱」と呼ばれている。
ところで、空気の層を通り抜けるときに青っぽい光ほど散乱されるわけだから、空気の層が厚くなるほど散乱される量は多くなる。結果として青っぽい光は途中で減衰して無くなってしまい、地上に届くのは残った赤っぽい光のみになる。 夕方(朝もそうだけど)太陽の位置が低いときは大気の層に対して斜めに光が射し込むから、昼間に比べてより長く空気の中を通る。だから夕陽や朝陽は赤く見えるのだ。
ちなみにこれは太陽だけでなく、例えば月でも同じことが言える。地上付近の月は大きく赤っぽく見える。大きく見えるのは目の錯覚だが、赤っぽく見えるのは錯覚ではなく、夕陽が赤いのと同じ理由だ。
では空気中を通る距離が短い場合どうなるかというと、空はより青っぽい紫がかった暗い色になる。高度10000m程度の成層圏を飛ぶジェット旅客機から見る空がより濃い青に見えるのも、空を白っぽくする空気中の塵や水滴が少ないからだけではない。高空の場合、通過する空気の層がまだ薄く、より波長の短い光が散乱されているうえに、散乱されている光の量自体が少ないため、紫っぽく暗い色になるのだ。
ではもっと極端な例として、もし地球に空気がなかったとする。この場合、空は青くならない。光を散乱する粒子がないから、太陽の光はそのまま地上まで届く。宇宙船からの写真とかSF映画で見るように、たとえ昼間であっても、まっ黒い空に太陽が強烈な白い光を発している風景になる。太陽以外の場所は夜空のように真黒だから、昼間でも星が見えることだろう。その代わり、真空だからいつでも「快晴・無風」だ。
○撮影データ(ページ上の写真より)
・1枚目
日時:2000年7月8日 場所:千葉県市川市
カメラ:コンタックス アリアD レンズ:カールツァイス ディスタゴンT* 28mmF2.8
フィルム:ベルビア50 その他:シャッター速度優先1/125秒
・2枚目
日時:2002年8月31日 場所:東京都品川区
カメラ:ペンタックス MZ-30 レンズ:ペンタックス SMC FA Zoom 28-70mmF4 AL
フィルム:ベルビア50 その他:シャッター速度優先1/250秒
・3枚目
日時:2003年7月27日 場所:東京都港区
カメラ:ペンタックス MZ-5 レンズ:ペンタックス SMC FA Zoom 28-70mmF4 AL
フィルム:ベルビア50 その他:シャッター速度優先1/250秒
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