
筋のような光の輝きを、一般に光芒という。空で見られる光芒の正体は、言うまでもなく雲の切れ間から射す太陽の光だ。
その光芒のうち、雲から地上へと向かって何条もの光が伸びているものは、旧約聖書に由来する名前としてヤコブの梯子(はしご)とか、天使の梯子などと呼ぶこともあるそうだ。天と地を結ぶ光の階段。確かにそんな宗教的な呼び名が似合いそうな、神秘的な光景だ。
もし大気が完全に透明なら、この光芒は見えない。
大気中に小さい水滴などの粒子があると、それにあたった太陽の光が様々な方向に乱反射するので、その部分が明るく光っているように見える。つまり大気中の粒子がスクリーンの役目をして、光の通り道を見せてくれるのだ。
大気中の粒子が多すぎても靄(もや)っぽくなり視界が悪くなるだけなので、大きくてきれいな光芒を見るためには、程よい数と大きさの粒子が大気中に存在している必要がある。しかもそれらは広い範囲にわたって分布していなくてはならない。
いつでも見られるとは限らないところが、神秘的っぽさ(?)をアップしてくれる。

さて、光芒は地面へと下向きに伸びているものだけではない。上や横に伸びるものもある。光源である太陽と影をつくる雲、そして観測者の3者の位置関係で見えかたが変わる。
例えば雲によって太陽が隠され影になっているとき、別のいいかたをすれば観測者と太陽を結ぶ直線上に雲があるときの光芒は、四方八方に放射状に広がって見える。しかし実際には、懐中電灯の灯りのように光源から離れるにつれ広がっているわけではない。
雲に対して、太陽は無限遠と言っても良いくらい遠くにあるので、太陽の光は平行光線として入射している。だから光芒も平行光線になる。
広がって見えるのは、いわゆる遠近法の効果による。鉄道のレールは平行に敷設されているが、手前ほど広がって見える。あれと同じというわけだ。
上の写真も後光のように、光が放射状に広がっているように見える。しかし実際には光は広がってはおらず、一直線に伸びてきているだけ。遠近法の効果によって手前の光芒ほど広がって見えている。
雲の位置関係によっては、下の写真のような面白い見え方にもなる。まるで上の小さい雲にスポットライトがあたっているようだ。

○撮影データ(ページ上の写真より)
・1枚目
日時:2003年5月30日 場所:東京都中央区
カメラ:コンタックス アリアD レンズ:カールツァイス プラナーT* 50mmF1.7
フィルム:ベルビア50 その他:絞り優先F4
・2枚目(右),4枚目
日時:1999年8月6日 場所:千葉県柏市
カメラ:ペンタックス Z-1P レンズ:ペンタックス SMC F Zoom 100mmF4.5-300mmF5.6
フィルム:ベルビア50
・3枚目(左)
日時:2000年8月6日 場所:千葉県市川市
カメラ:コンタックス アリアD レンズ:カールツァイス プラナーT* 50mmF1.7
フィルム:ベルビア50 その他:シャッター速度優先1/500秒
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