空撮テク(10) 空撮器具の工作材料




 パラグライダーの空撮では、専用の器具を自作することも多いです。
 例えばキャノピーにカメラを付ける場合。別ページで紹介しているような段ボール製の器具は、自分のカメラやキャノピーに合わせて自作しなければなりません。膝や靴へのカメラ装着にも、私は金具や段ボール等を組み合わせた器具を自作しています。
 今回はこの工作にあたって必要な材料を、思い付くままに書いてみることにします。


段ボール断面
段ボール
 例えばカメラを入れる箱を作る場合、どういう材質で作るべきでしょうか。私は段ボールを愛用しています。
 金属や木とは違って水に弱いという弱点はありますが、基本的に濡れる状況での撮影はしませんので問題ありません。軽量なうえ強度も必要十分だし、梱包材に使われることから分かるように、多少の衝撃なら吸収してくれる構造がカメラの保護に適しています。金属はおろか木よりも遥かに加工しやすいのも魅力です。
 もうひとつ見逃せない点は、廃棄物利用のため無料で手に入ることです。こんないい素材を見逃す手はありません。

 さて、段ボールなら何でもいいかというと、そうではありません。なるべく丈夫なタイプを選ぶのがポイントです。紙質や厚さによっていくつか種類がありますが、私は「ダブルフルート」と呼ばれる、中芯が2重になっているタイプをお勧めします。(画像参照)
 強度があるためミカン箱や家具・機械など重量物の梱包に使われることが多いです。厚さは約8mm。このような段ボールを見つけたら、捨てずにキープしておくと良いでしょう。

 実際の工作にあたっては、段ボールの中芯の方向に注意してください。段ボールは中芯の波打ちと平行方向に折れやすいからです。段ボールを折る必要がある場合、中芯の波打ちと平行であればキレイな折れ目を入れることができます。逆に、曲げ力が加わる器具を製作する場合は、この力が波打ちと直角方向になるように設計しなくてはなりません。

両面テープ
両面粘着テープ
 カメラやGPSにベルクロを貼り付ける場合など、接着剤を使用するのに気が引けるときに使用しています。
 いくつか種類がありますが、ポリエチレンやアクリル樹脂等の発泡体を基材として、アクリル系の粘着材を使用したタイプ(白色のやつ)が粘着力の面からお勧めです。他のタイプにくらべて高価ですが、それなりの価値があります。
 しかしアクリル系両面粘着テープでもナイロン製であるベルクロへの粘着力は弱いので、後述する弾性接着剤スーパーXをベルクロに塗って半乾きにさせたものに貼ると良いでしょう。

ベルクロ
ベルクロ
 ベルクロ、またはマジックテープと呼ばれる面ファスナーです。両方とも商品名で、特に後者は株式会社クラレの登録商標になっています。
 私がよく使うのは黒色のやつで、粘着材つきベルクロは100円ショップでも見かける2.5cm幅とDIY店で入手できる5cm幅のもの、粘着材なしベルクロはDIY店で入手できる5cmまたは10cm幅のタイプです。
 粘着材なしベルクロは主にウエストバッグやハーネス等への縫い付け用に使っています。粘着材つきに比べて安価なので、まとめて買っておくと良いと思います。

 ベルクロも様々な種類があります。例えばカー用品店で見かける「強力」と銘打っているタイプは、たしかに結合力が強いようです。
 ベルクロは引っ掛かりのフック形状をもつトゲトゲした面と、ループ状の繊維がびっしり並んだフワフワ面のふたつから成ります。トゲトゲした面は糸クズやごみがくっついて汚くなりやすいので、ハーネスやウエストバッグ等といった普段よく使う場所への縫い付けは、フワフワ面を使用した方がいいと思います。

ステー類
金属アングル材
 カー用品店やDIY店でよく見かける、フォグランプ等の取り付け用ステーです。黒色に塗装されている鉄製のタイプが安価で見栄えもよくてお薦めです。厚さは目的にもよりますが、鉄製の場合1.2〜1.6mmが折り曲げ加工を考えれば適当かと思います。
 この金属アングル材同士を接合する場合、現実的な方法として以下の3つがあります。
  ・ボルト・ナットでの固定
  ・接着剤(スーパーXまたはエポキシ系)での接着
  ・タイラップ(インシュロック,結束バンド)での結合
 外れては困る箇所は、2つ以上の方法を組み合わせると良いでしょう。

ガムテープ
ガムテープ
 段ボール製の空撮器具の仕上げに良く使います。表面に貼りめぐらすことにより強度も増すし、汚れや多少の水気にも強くなります。
 注意するのはガムテープを使うということ。ビリッと手で破ることのできるやつです。「クラフトテープ」と呼ばれる安価な紙製のタイプは使えません。重ね貼りができないうえに強度・耐久力とも弱く、すぐ剥がれてしまうからです。

 ガムテープといえば茶色のやつが一般的ですが、多少高価なものの好みの色をつかうとオシャレです。私は黒いガムテープで統一しています。空撮道具に使った場合、レンズへの余計な光の反射を防いでフレア等を防止するという機能性も考慮してのことですが、効果の程は定かではありません。



接着剤いろいろ
接着剤
 オールマイティに使える接着剤もありますが、それぞれ特徴がありますので、適材適所で使い分けるのがポイントです。種類ごとに列記して、私なりの使い分けを書いてみようと思います。

(1)有機溶剤系接着剤(透明タイプ)
 「セメダインC」に代表される、紙や木材の接着に適した一般工作用の接着剤です。鼻をつく有機溶剤の匂いが特徴で、これが揮発することにより固まります。多少多めに接着剤をつけても、固化後は溶剤が揮発することにより重量が減るので、軽く仕上げたい場合に最適です。
 少なくとも紙素材に対しては十分な接着強度があるので、私の場合、段ボール同士の接着にこれを用いています。段ボールの断面部分を接着するときは中芯の空洞部分に十分に接着剤を流し込んで、接着力を確保します。

(2)有機溶剤系接着剤(合成ゴム系)
 ゴム、皮革の接着に適していて、コニシの「G17」が有名です。透明タイプに比べて固化後もゴムのような弾性がある、黄色っぽい接着剤です。透明タイプと同じように使えます。
 名前の通り、ゴムの接着にも最適です。この場合、予め洗剤やアルコールでゴム表面の汚れや油を落としておき、さらにサンドペーパーをかけて表面をザラザラにしておくと接着力が上がるようです。
 さらに説明書にも書いてあるとおり、接着する両面に塗付しておいて、半乾きなった後に両者を張り合わせる方法が最も強力に接着できます。

(3)粘着・弾性接着剤
 近年登場した、有機溶剤を使わない新しいタイプの接着剤。空気中の湿気に反応して固まります。商品名はセメダインの「スーパーX」で、一般工作用としては今のところこのタイプ唯一の製品だと思います。クリア、黒、白と色が選べ、サイズも大小2タイプあります。(写真は大きいやつ)
 空撮器具の工作に使うなら、とりあえずクリアの小さいタイプを選べばいいと思います。
 有機溶剤を使わないので、大量に使ってもあの鼻をつく匂いにクラクラきてしまうことはありませんし、硬化後の収縮もほとんどありません。このためエポキシ系接着剤と同様に充填用としても使えます。それ以外にも優れた特徴があって、列記すれば、

  • 接着可能な素材が多い。例えば有機溶剤系やエポキシ系では接着困難なナイロン(ベルクロの素材)が接着可能。
  • 硬化してもエポキシ系のように硬くならず、ゴムのような弾性を保つ。よって繰り返し応力のかかる箇所や振動のある箇所の接着に強いし、剥がれにくい。金属アングル材の接着にも良い。
  • 硬化後は水や汚れに強い。私はパラ用ブーツのソールが剥がれたときに、この接着剤を使って補修しました。(貧乏なので新しい靴は買えないッス...) 最初に合成ゴム有機溶剤系の黄色い接着剤を使ったのですが、すぐに剥がれてしまいました。しかしスーパーXで接着したソールは、半年たった今もしっかりくっついてます。
 とまあ、何にでも使えるいいことづくめの接着剤で、多少高価ではありますが個人的には一番のお気に入りです。
 しかし、これさえあれば他はいらないかというと、そうではありません。例えば段ボール同士の接着は、ガッチリ固まった方が気分がいいので有機溶剤系を使ってます。

(4)瞬間接着剤
 東亜合成の「アロンアルファ」という商品名が有名です。文字どおり短時間で硬化するので便利です。プラスチックや金属など大抵のものは接着可能ですが、ゼリー状のタイプを除いて紙類のような多孔質素材の接着には適していません。(紙が低粘度液体である瞬間接着剤を吸い込んでしまうため)
 しかし紙によく浸透するという性質を逆手にとって、段ボールの強化に使用すると効果的です。折り曲げ部、先端部など強度が必要なとき、十分にこれを染み込ませてやることにより、紙を樹脂のようにガッチリ固めることができるのです。
 このような他にはない特長がありますが、使用にはいくつか注意が必要です。ひとつは白化現象。これは揮発した瞬間接着剤の成分が付近に付着・硬化することにより、その場所が白く粉を吹いたように着色してしまう現象です。瞬間接着剤を必要以上につけたりすると発生しやすくなります。接着剤が完全に固まれば心配ありませんが、たとえば近くにカメラを置いたまま瞬間接着剤を多量に使用しないようにしてください。
 また、医療用に使われていることからもわかるように、皮膚同士の接着力も強力です。まあ、ここを見ているような方なら、たぶん指をくっつけて往生した経験があると思うのでお分かりかと思います。私などはこれを利用して、ちょっとした切り傷に瞬間接着剤を使うこともあります。

 ところで最近、この仲間で新しいタイプがセメダインから発売されました。なんと、ポリエチレンやポリプロピレン(ポリ袋やバケツ等の素材)の接着が可能なタイプです。私の知る限り、このふたつの素材を接着可能な唯一の接着剤です。それだけでなんだか嬉しくなり、思わず購入しました。(画像中でいちばん右端の接着剤)
 試してみたところプライマーの使い方がキモで、きちんと説明書通りに使用しないと有効な接着力が得られない感じです。

(5)二液混合エポキシ樹脂系接着剤
 主材と硬化剤、ふたつを混ぜ合わせて使用するタイプです。混合しない限り固まらないので、他の接着剤のように何時の間にか固まっていて、イザ使う段になって困ることがありません。
 硬化後は強靭な樹脂状になり、収縮(硬化前後の体積差)もほとんどありません。固まるまでの時間も何種類かあります。
 空撮道具工作に使う場合、5分硬化型ではちょっと早すぎ(すぐ硬化が始まるので、あらかじめ接着箇所を準備しておき迅速に作業する必要あり)で、30分硬化型あたりがちょうど良い感じです。
 細かい隙間に流し込みたい場合はドライヤーの熱風をあて暖めてやると、粘度が下がって作業しやすくなるので覚えておくと便利です。この場合、硬化時間が少し早くなるようです。
 以前はよく使いましたが、ナイロンも接着できるスーパーXが登場してからは、あまり使用頻度は高くありません。それでも、素材を強力に補強したいとか、段ボール表面をコーティングするように塗りたくって樹脂状パーツを作りたいとか、ガチガチに固定したい場合とか、パテのような充填っぽい目的の場合に使ってます。何と言っても、ふたつの薬品を調合..いや混ぜ合わせて使うという面倒臭さというか化学っぽい作業が、工作ゴコロをくすぐってくれます。
 (2002.7)

○参考ページ
 接着剤について正確な情報を得たい場合は、下記の代表的なメーカーのページを参照されてください。
  セメダイン株式会社: http://www.cemedine.co.jp/
  コニシ株式会社: http://www.bond.co.jp/index2.html
  東亜合成株式会社: http://www.toagosei.co.jp/index2.htm





もどる