カメラの基礎(4) 露出とは



 シャッター速度とF値の関係

 前回はF値の話をしましたので今回はまず、もうひとつの大切な要素であるシャッター速度について書いてみたいと思います。
 絞りに比較してシャッター速度は分かりやすいかと思います。文字どおり、シャッターの開いている時間のことで、1秒未満の場合は分数で表します。0.5秒だったら1/2秒、0.004秒だったら1/250秒というふうに。

一眼レフのシャッター幕  レンズ交換のできないコンパクトカメラの場合、シャッターは絞りと同じようにレンズに内蔵(これを「レンズシャッター」と呼びます)されていますが、レンズ交換が前提の一眼レフカメラではカメラ側にシャッターを設置する必要があります。

 一眼レフのシャッターはフィルム面のすぐ上にあります。フィルム面つまり焦点面(フォーカルプレン)にあるシャッターなので、これを「フォーカルプレンシャッター」と呼んでいます。
 一眼レフのフィルム交換をするために裏蓋を開けると、文字どおりシャッター状の形状をした黒くて薄いシャッター幕が見えると思います。撮影時にはこの幕が高速に開閉して、フィルムへ光をあてるわけです。

 ちなみにこのシャッター幕はごく薄い板の組み合わせで出来ているので、取り扱いには注意が必要です。 もちろん触るなんてもっての他で、壊れる原因になります。
 またカメラの掃除にブロアやエアスプレーなど、空気を吹き付けてホコリを飛ばす道具を使うこともあるかと思いますが、これを誤ってシャッター幕に使ってしまうと、とんでもない結果になる恐れがありますので注意してください。


 さて、次はシャッター速度とF値で決まる、露出についてです。 露出というのは、フィルムにどのくらい光をあてるか、その度合いのことで、通常「EV」という単位を使います。

 ここで問題です。
 A君は毎分10リットルの水が出る蛇口から1分間バケツに水を溜めました。
 B君は毎分1リットルの水しか出ない蛇口を使いましたが10分間バケツに溜め続けました。
 A君とB君のバケツ、どちらがたくさん水が溜まっているでしょうか?

 答えはもちろん、どちらも同じ10リットル、です。


 同じ理屈が露出にも当てはまります。
フィルムに届く光は、絞りで制限された光の量(F値)と、光があたっている時間(シャッター速度)のふたつで決まります。
 弱い光でも露光している時間(フィルムに光を当てている時間)が長ければ、ちゃんと写ります。 逆に露光時間が短時間でも、そのぶん強い光を当てればフィルムには必要な光の量が当たります。

 これを具体的にいいますと...
 絞りをF2.8、シャッター速度を1/500にして写真を撮ったとします。
 次に絞りを1段暗くしてF4にしたとします。(明るさが1/2になります) そのときシャッター速度を1段遅くして1/250にして撮影すれば、この2枚の写真は全く同じ明るさで写ります。

露出値(EV)の関係表  これを表にしてみました。(右図)
 (同じような表が、一眼レフカメラの説明書にも書かれていたりすると思います)

 横軸がシャッター速度、縦軸がF値です。
 斜めの赤い線は露出値(EV)を表していて、この線上のシャッター速度とF値の組合せであれば、どれも同じ露出を得られることを示しています。

 例えばシャッター速度1/250、絞りF4で適正露出が得られていたとします。この状態で絞りをF22にしたければ赤い線を辿ってゆき、縦軸のF22に対応した横軸のシャッター速度から1/8秒にすればいいということがわかります。 逆に1/2000などという高速シャッターを使いたければ、絞りF1.4にすればいいわけです。

 もちろん自分の持っているレンズの開放F値がF2.8だったら、シャッター速度は1/500までしか上げられませんけどね。
 (ただし、フィルムを高感度タイプのものに変更すればさらに上げることができます。)


 さて、結論です。 シャッター速度を変えるにしても、レンズの絞りを変えるにしても、それに対応して他方も変えてやれば、フィルム上には同じ明るさで写ります。つまり、望む露出を得るためのシャッター速度と絞り(F値)の組合せは無数にあるのです。
 だから動きの速い被写体を撮影するときは速いシャッター速度を使ってそのぶん絞りを開けてやるとか、風景写真みたいに被写体は動かないけど深い被写界深度を得たい場合はレンズを絞り込み、それに応じて遅くなってしまうシャッター速度を考慮しカメラを三脚に据え付けブレを防ぐとか、いろいろな作戦を使うことができるのです。(2000.12)





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