機材紹介(2) レンズその1(PENTAX フィシュアイズーム)



・PENTAX F FISH-EYE ZOOM 17mmF3.5〜28mmF4.5

FISH EYE ZOOM

 世界で唯一、魚眼+ズーム+オートフォーカスという現代的な要素を満たしたレンズ。
 個人的には、このレンズを使うためにペンタックスのカメラボディを買ってもいいくらい価値のあるレンズだと思います。一般的とはとても言い難い魚眼レンズを使いやすいズームレンズで、しかも比較的低価格で販売したところに意味があります。

FISH EYE ZOOM 光路図  焦点距離はズームにより17〜28mmまで変化し、その際の画角変化は180〜90°にもなります。これを応用し、普通のレンズでは撮れない、楽しい写真を撮ることができます。
 主に空撮で使う私の場合、このレンズはワイド端(焦点距離17mm)で使うことがほとんどです。この状態での画角は180°です。
 ただしこれは画面の対角線での値で、四隅以外の画角はそれほどではありませんが、いずれにしても普通に手持ちで撮った場合、撮影者の足が写ってしまうくらいの視野の広さにはびっくりです。

 なおこのレンズのように、画面の対角線について180°の画角を持つものを「対角線魚眼レンズ」と言い、画面すべてにわたって画角180°(またはそれ以上)の外景を写し込むものを「円像(全周)魚眼レンズ」と呼んでいます。円像魚眼レンズの場合、フィルム上に得られる像は直径22〜23mm程度の円形になります。
 まあ魚眼レンズというと、このフィッシュアイズームのような対角線魚眼レンズの方が一般的だと思います...

 さて、魚眼レンズの特徴は皆さんもご存知のように、被写体が大きく歪曲して写ることです。直線で構成される被写体を写すと、画面中央を中心として大きな円を描くように歪みます。(タル型の歪曲)
 なぜこんなに歪むのかというと、通常のレンズは平面平面(フィルム面)に射影する方式であるのに対し、魚眼レンズはプラネタリウムみたいな球面平面(フィルム面)に射影する方式であるためです。
 だから通常のレンズで平面を写すと フィルム面上の像は被写体と相似になりますが、魚眼レンズはそうはならないわけです。そのかわりプラネタリウムのように、周囲180°の広い画角が得られる というわけです。


FISH EYE ZOOM 断面図  また通常、超広角レンズは画面四隅が暗くなってしまう「周辺光量不足」という特性が顕著なのですが、魚眼レンズは画面周辺部が歪曲・圧縮されて写るために、あまり周辺部が暗くなりません。

 ちなみに魚眼レンズに限らず、逆光時なんかには、レンズ内で太陽の光が乱反射することにより写真全体が白く霞んだようになってしまう「フレア」や、絞りの形をした多角形の光点が多数現れる「ゴースト」に悩まされるものなのですが、このレンズはズームレンズでありながら、それらの影響が少ないように思います。

 それがレンズ設計の巧妙さによるものなのか、それともレンズ表面に施されたsmcコーティングによるものなのかは私にはわかりませんが、いずれにしても逆光で撮影する機会の多い空撮ではとても有り難い特徴です。

 もうひとつ忘れてはいけないのが、このレンズが非常にコンパクトな点です。小型の標準ズームレンズに匹敵する小ささで、なおかつ軽い。前玉も、画角180°をカバーするレンズとは思えない程控えめです。まるで空撮に使って下さいと言っているようなモンです。(笑)
 定価は\62000で、量販店での実売価格は\45000くらいだろうと思います。他メーカー製の単焦点AF魚眼レンズよりも安価だし、購入して損のないレンズのひとつだと私は思います。
 (1999.2)

FISH EYE ZOOM




参考文献:技術レポート「魚眼ズームレンズの開発」  平川 純, 日本写真学会誌1997年60巻2号


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