〜パラグライダーってなに?〜

ハンググライダーやスカイダイビングとの違いや、始めるには何をすれば良いか、など...


テイクオフするパラグライダー 飛行中のパラグライダー

 ここを読んでいる方は、パラグライダーというものを聞いたことはあるけど見たことがない、という人がほとんどなのではないでしょうか? また、ハンググライダーやスカイダイビングとどう違うのかという疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
 「空を飛ぶ」という憧れは多くの人が持っていることと思います。 それもジャンボジェットのような旅客機に乗客として乗るのではなく、自分がパイロットとなって自分の手で操縦してみたい、自由に空を飛びまわりたい。そんな夢をかなえるために最も身近な乗り物、それがパラグライダーなのです。
 言葉でパラグライダーとはどういうものか説明してみますと、
  • 空を飛ぶことを楽しむ、スカイスポーツの一種。
  • セスナのような飛行機と違って、金属製の胴体や翼を持たない。外見は、人間が細長いパラシュートみたいなものにぶら下がってる感じである。
  • パラシュートみたいなものは布(特殊なナイロン繊維など)とヒモ(これも特別丈夫な素材で出来ています)で作られている。
  • 山の上にある斜面から離陸し、麓にある平地に着陸する。
  • 上昇気流に乗れば、好きなだけ飛んでいられる。
 でもこのパラグライダー、確かに見かけはパラシュートみたいですが、その飛行原理はパラシュートとはちょっと異なります。 パラシュートに見える部分は飛行機の翼と同じ役目を果たしていて、空気中を「滑空」しています。つまり、グライダーと一緒なのです。(だから"パラ"+"グライダー"と呼んでます)


 パラグライダーの操縦装置は単純です。両手に持つブレークコードと呼ばれる操縦用のヒモを操作(引いたり戻したり)するだけです。
 右のブレークコードを引くと右に曲がり、左を引けば左に曲がります。また両方引くことによりパラグライダーの飛行速度をある程度落とすこともできます。(もちろん限界はありますが。)

 (説明)
 ブレークコードはそれぞれの側の翼の後縁に繋がっていて、引っ張ることによって翼の形が変わり空気抵抗が増えます(エアブレーキがかかる)。右側のブレークコードを引くと翼の右側部分にブレーキがかかり、逆に抵抗のない翼の左側が先に行こうとします。その結果翼は右に向きを変えるというわけです。

空撮  右・左への向きの変えかたは分かりました。では上昇・下降はどうするのでしょうか?

 基本的に、上昇下降を操縦で直接コントロールすることは出来ません。
 ただ、パラグライダーは秒速1m程度の割合で下降していますので、下降量についてはしばらくの間飛んでいればいずれは希望の高度まで下がります。

 実際パラグライダーの着陸は、着陸地点(ランディングといいます)の手前で左右にターンして高度を処理し、所定の高度まで降下するのを待ってから、最後に向かい風でランディング地点に進入するのを基本としています。


 では上昇はできないのでしょうか?
 背中にエンジンを背負ったMPG(モーターパラグライダー)ではブレークコード操作に加え、エンジンの回転数を調整するスロットルレバーも持ちます。このMPGではエンジンを吹かすことによって上昇することができます。しかし、エンジンのない普通のパラグライダーの場合上昇することができないかというと、そうではありません。

 皆さんは、トンビや鷹が飛んでいるのを見たことがあるでしょうか?羽ばたきもせず、ただ翼を広げて回っているだけなのに、どんどん高度を上げていく。 実は彼らは「上昇気流」を利用しているのです。上昇気流とは、例えば地表近くで太陽に暖められた空気が登っていく現象です。この空気の中に入れば、上昇することだって出来るのです。この上昇気流はパラの世界では「サーマル」とも呼ばれています。

 それ以外にも、斜面に沿って吹き上がってくる風を利用して上昇したり、高度を維持したりすることもできます。こうしたいい風に恵まれれば、何時間だって飛び続けていられるのです。
 なおこのパラグライダー関連の書籍につきましては、ここに纏めてみましたのでご覧下さい。



飛行速度について

地上から見たパラ  これはパラグライダーの種類や人間を含めた全装備の重量などによって変わってくるので一概にはいえませんが、対気速度で30〜40km/hといったところです。

 地上からだと空にふわふわ浮かんでいるように見えるパラグライダーも、実はそれなりのスピードで飛んでいるのです。


フライトする高度について

 これもその場の状況次第です。山の上のテイクオフ地点はランディング地点のある平野部から150〜500m程度の標高差があるのが普通で、上昇気流などがなければその高さを飛びながらひたすら高度を下げてゆくだけになります。(ちなみにパラの世界ではこのように上昇風をつかめずランディングに向けて「降りて」いくだけのフライトを「ブッ飛び」と言ってます。)

 しかし首尾よく上昇気流(サーマル)をつかまえることができれば、トンビのようにぐるぐる回りながら螺旋状に上昇させていき、そのサーマルのつきる高さまで登ることもできます。これがパラグライダーの最大の楽しみでもあり、テクニックを要求されるところでもあるのです。

 こうやって登れる高さはサーマルの強さや乗り手の腕などによって変わりますが、なかには4000mを超える高さまで登ってしまうすごい人もいます。




ハングやスカイダイビングとの違い

 パラグライダーと同じスカイスポーツの仲間にハンググライダーがあります。これはあらかじめ丈夫な金属製のパイプで翼の形をつくってあり、パラグライダーよりも長い歴史があります。

ハンググライダー  ハングはパラに対して比較的操縦技術の習得が難しいと言われ、また構造上小さく畳むことができないという欠点がありますが、パラにはない性能をもっており、魅力的なスカイスポーツの一つです。

(ちなみに「ハングライダー」は間違いで、「ハング グライダー」というのが正しい呼び方です。)
DKカタログより

 また、パラグライダーとよく混同されやすいのが、スカイダイビングではないでしょうか?
 パラグライダーの場合、飛行機などから飛び降りてから翼を広げるなんてことは普通というか絶対にやりません。スカイダイビングに使われるパラシュートは、時速200km/hを超える速度で確実に開き、その衝撃に耐え、人間が着地するのに安全な速度まで減速するのが目的のため、パラグライダーのような操縦性や滑空性能は持っていないのです。

 しかしパラグライダーはもともとこのスカイダイビングのパラシュートから発展してきました。つまりパラのご先祖様といえるでしょう。



どうすれば始められるか

飛行中のパラ  パラグライダーがスキーなどの他のスポーツと大きく違うことのひとつに、必ずスクールに入校しなければならないという点が挙げられます。いや、必ずというと語弊があるかも知れません。スクールに入らなくても道具を揃えてしまえば物理的に飛ぶことは可能ですから。

 でも実際のところ独学でパラグライダーを始めるというのは大変危険ですし、そういう人のフライトを受け入れているエリア(パラグライダーが飛ぶ場所)もありません。従ってしっかりした技術をもつスクールに入ってインストラクターの指導を受けながら上達を目指していくのが唯一かつ一番確実な方法です。

 そこで、具体的な行動は、まずスクールを選ぶことから始まります。

MPG  しかし、選ぶといってもこれからパラを始める人は何も予備知識がないわけですから難しいかも知れません。
 ただパラグライダーのスクールの場合、英会話学校などと違ってそこらじゅうにあるわけではありませんので、自宅近くのスクールは、ある程度限定されてくると思います。

 そこでどこにパラグライダーのスクールがあるかについて、リストを作ってみました。全部のスクールを網羅しているわけではありませんが、参考までにどうぞ。

 (補足)
 (パラグライダーは山の上にある斜面から離陸するわけですから、当然山があるところでないと飛べません。また、山の麓には着陸するための場所も必要ですし、近くに空港や送電線があっても飛べません。従って必然的に都市から離れた山間部がエリアとなります。
 ただし、背中にエンジンを背負って推進力を持った「モーターパラグライダー」の場合は平地から離陸・上昇できますので、河川敷や海岸といった広くて周りに障害物がない所が主なエリアになります。)

 そしてどのスクールにするか迷った場合は、一度休日などを利用して見学されてみてはいかがでしょうか? そうすればそのスクールの雰囲気もわかるし、どういったことをやっているかも見て確かめられると思います。



エリアまでの交通手段

 やはりこれにも頭を悩ませることと思います。最寄りの駅からの送迎を行っているスクールならいいのですが、場所によっては車でないと行けない所もあり、車を持ってない人にとってはバス、タクシーなどを利用するにしてもつらいところかも知れません。
 一番いいのは車を持っている人に頼んで同乗させてもらうこと。その人がパラをやっていればもう言うことないですし、やってないとしても、一緒に引き込んでしまうというのもいい手ですね。

地上練習
 またエリアではすぐに同じパラの上達を目指す友達ができると思います。自分と同じ方面に住んでいる人を見つけて同乗させてもらい、交通費を割勘にするというのもウマイ方法だと思います。

 ただ車があるからといって問題がないわけではありません。
 東京など平野部の大都市に住んでいる人にとって、パラのエリアはじつに遠く感じられます。(ただ、スキー場などより近い場合がほとんどなのが救いです。毎週スキーに行ってしまうような人だったらこの点では心配なし、ですが。)
 でも、こればっかりは仕方ないですね...

 ちなみに私の自宅は東京都品川区です。通ってるエリアのうち、いちばん遠い所(群馬県 沼田市周辺)に行く行程は片道約180km、高速道路はケチって使わずに行くので、夜間でだいたい4時間かかります。
 まあほとんどの方は1〜2時間以下で通えるエリアを見つけることができると思いますけどね。



必要な体力について

 確かに10kgはあるパラグライダーの装備一式を背負って斜面を登ったり、急な(と思える)斜面を走り降りたりしなければなりませんので、運動するのが嫌いな人には向いてないかも知れません。

女の子もMPG  しかし特別な体力は必要ありません。少なくともスキーやテニス、ジョギングができる程度の体力があれば問題なくパラグライダーはできます。
 重いエンジンユニットを背負うモーターパラグライダー(MPG)だって、小柄な女性も楽しんでます。

 ただ体重だけは制限があります。子供のようにあまりに軽い人(30kg以下)や、100kgを超える体重の人の場合、それに合う機体(パラグライダー)がなかったりするのです。その間であれば体重に合った機体が選べますので、問題ありません。



パラグライダーのライセンスについて

 正確には「免許」と呼ばれるような国家試験を必要とするものはありません。しかしダイビングなどと同じように、「この人はこれだけの技量と知識を持っていますよ」ということを証明する「技能証」というものがあります。本来の定義とは違いますが、大雑把にこれらの資格を説明すると、
  • 基本的な操作ができることを証明する「A級」
  • インストラクターの指示のもと、だいたいの操作ができ、安全に着陸できる「B級」
  • スクールのエリア内であれば自由に飛べる知識を身につけた「ノービスパイロット(NP証)」
  • どこのエリアに行っても安全に飛べる知識と技量を持つことを証明する「パイロット(P証)」
 に分かれています。
 これらを持ってなくても捕まるなんてことはありませんが、いくらパラの操縦がうまくても、これらの技能証を持っていなければどこのエリアに行っても飛ばせてくれません。そういう点で見れば、「免許」と言えなくもありません。




ページ最終更新:2000/6

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