GoProHDで静止画を撮る


(1)GoProについて
 GoProHDは、フルハイビジョン(1920*1080, 30fps)の動画撮影が可能な、超小型デジタルビデオカメラです。モータースポーツ、スキー、サーフィン、スカイダイビングなどのアウトドアスポーツのオンボード用として企画されたもののようで、他にはないユニークな特徴を備えています。

 例えば対角線画角170°の魚眼レンズで周囲を広く写し込めることや、完全防水の専用ハウジングとセットで使うことが前提なこと。そして42mmx60mmx30mmという小ささと、バッテリー・ハウジング込みで180gという軽さ。動画撮影時も2時間以上バッテリーは持ち、高圧縮のh.264という画像圧縮方式の採用により、32GBのSDHCカードを使用すれば、ビデオの解像度設定にもよりますが 4〜8時間の撮影が可能です。(SONYやPanasonic製デジカメが採用するAVCHD形式も同じh.264圧縮方式を使っていますので、ほぼ同等の撮影時間です。)

 その一方でモード選択ダイヤルとか再生用のモニター画面はなく、撮影範囲を確認するためのファインダーすらありません。あるのは電源ボタンとシャッターボタン、あとは現在の撮影モードがやっと確認できる程度の簡単な白黒液晶のみという、かなり割り切った設計の製品です。ビデオ撮影中は、カメラ前面についている赤いLEDが点滅して知らせてくれるだけです。
 ファインダーやモニター画面がありませんので、撮影範囲は目測です。周囲を広く写す魚眼レンズですので、まあ目測でも大きな支障はありません。
 付属するアクセサリーによって価格に差はありますが、例えばヘルメットにつけるためのアクセサリー等が付属したキットで36000円程度です。ただしこれは日本の正規代理店から購入した場合。個人輸入やオークション等で並行輸入品が2万円台で手に入ります。(安い代わりに国内保証は受けられないので注意)

 小型軽量なことと防水・耐衝撃なカメラであることからハンググライダーの空撮でGoProを使っている人は多く、YouTubeなどでもたくさんの空撮動画を見ることができます。私も普通のデジカメに加え、手軽に魚眼レンズで動画を撮ることのできるこのGoProHDで空撮して、家に帰ってから自分の操縦の反省などしています。


(2)静止画撮影
 動画撮影機能についてはこの辺にして、ここではGoProHDでの静止画の撮影について検証してみようと思います。GoProHDは500万画素(2592*1944pixel)の静止画も撮影できるからです。静止画好きの私としては動画撮影機能よりも気になるポイントです。
 ただ、500万画素というスペックが、1000万画素以上が当たり前になった現在のデジカメ事情から見ればイマイチな感じが…。 が、なにしろ魚眼レンズを搭載したコンパクトデジカメなんてこれ以外ありませんから、それだけで貴重です。贅沢は言えません。

 さて通常、静止画を撮影するためにはリモコンが必要になるわけですが、過剰すぎるシンプルさが特徴のGoProHDにそんな機能はついてません。その代わりに、インターバル撮影機能がついていて、一定間隔で自動的に撮影し続けてくれます。撮影間隔は2,5,10,30,60秒間のいずれかに設定できます。無駄な写真をたくさん撮る破目にはなりますが、デジタルの利点を生かして、あとで必要な画像のみ選択して残りは削除してしまえば良いわけです。
 GoProHDの静止画は、1枚だいたい2MB位のJPEGです。4GBのSDHCカードで約2000枚撮れます。インターバル2秒でも、4000秒つまり1時間以上は静止画を撮り続けられる計算になります。(後で必要な画像のみチョイスする作業が大変そうですが)


(3)魚眼レンズをつけたレンズ交換式デジカメと比較


  左がGoProHDと付属ハウジング(キール取付加工済)、右手前がGF1+LUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5
 ここでは魚眼レンズ同士ということで、私がいつも使っている Panasonic GF1+魚眼レンズLUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5 と比較してみることにします。

 ちなみにデジカメの写りの良さは、必ずしも画素数に比例しているわけではありません。画素数で比較すればコンパクトデジカメと大して変わらないレンズ交換式デジカメやデジタル一眼レフカメラの写りが良いのは、画素数以外にも様々な要因があるからです。そのひとつが撮像素子の大きさ。簡単に言ってしまえば、画素数が同じでも撮像素子が大きい方が、写りが良いのです。

 ※ちなみにひとくちに「写りの良さ」といっても、その定義は様々あると思います。ここでは空撮で風景を写すということを念頭に、主に”シャープさ”や”解像感”が良いものを「写りが良い」と考えています。またレンズの性能も写りに大きく影響しますが、撮像素子が大きいデジカメはレンズも大きい(撮像素子の性能に応じたレンズが使われる)のが普通なので、ここでは撮像素子の大きさに絞って記述します。

 早速、画素数と撮像素子の大きさを比較してみると、
 画素数撮像素子の大きさ
GF11200万画素(4000*3000pixel) 4/3型 Live MOS(17.3*13mm)  
GoProHD 500万画素(2592*1944pixel) 1/2.5型 CMOS(5.7*4.3mm) 

 と、画素数だけでなく撮像素子の大きさもかなり差があります。これだけで比べれば、画素数が多くて(約2.4倍)、撮像素子も大きい(面積比で約9倍)GF1の方が写りが良いのは容易に想像できます。

 さて前置きはこれくらいにして、実際の画像を比較してみます。GoProHDはISO感度はもちろんシャッター速度や絞りなど一切選べません。GF1は当然選べるのですがカメラにお任せということで「風景モード」「JPEG最高画質」で撮影しました。多少両者で画像の色あいが違いますが、これは後でいくらでも調整可能です。ここではそのまま載せました。


Exif情報 GF1:ISO100 F7.1 1/500秒 / GoProHD:ISO100 F3.6 1/1649秒

 画像を見ての通り、同じ魚眼レンズでもGF1+ G FISHEYE 8mm/F3.5の方が画角が広い(GoProHDの170°に対し、180°)ので、より広い範囲を写し込めています。逆光性能に関しては、GF1+ G FISHEYE 8mm/F3.5の方がゴーストが少ないようです。もっともフィルムカメラに比べれば両者とも逆光性能の弱さに関しては大差ありません。
 では肝心のシャープさ・解像感について見てみましょう。まず画面中央について見て見ると、やはり画像にザラツキ感のあるGoProHDに対してGF1+ G FISHEYE 8mm/F3.5の方が、明らかに鮮明に結像しています。まあGF1の方が2倍以上の画素数があるし、当たり前といえば当たり前の結果と言えます。
 次に画面周辺で比べてみると、GoProHDが全体的に滲んだようになっているのに比べ、GF1+ G FISHEYE 8mm/F3.5は隅々までハッキリ写っています。これに関しては画像を拡大しなくてもわかる位で、画像周辺部になるほどGF1+ G FISHEYE 8mm/F3.5の優位性が目立ってきます。

 GF1+ G FISHEYE 8mm/F3.5は値段も大きさも重量もGoProHDをかなり上回りますし予想通りの結果ではありますが、GoProHDもけっこう健闘しているとも言えます。前述したようにカメラのスペックに大きな差があるのであまり期待していなかったのですが、空撮などの風景撮影においてなら、GoProHDの静止画はそれなりに使えるのでは?という感触です。
 (実は撮像素子が大きいという性能上の優位性は、低照度の条件でより顕著になります。つまり明るい昼間の屋外撮影でなら、撮像素子の小さいGoProHDでもそれほどの性能差が生じない可能性があります)
 それに大事なのは何がどう写っているかであり、隅々までシャープに写っている駄作よりも、多少ボケてても素晴らしいものが写っている方が、良い写真のはずです。GoProHDはその小型軽量さを生かして、積極的に空撮に使ってゆくカメラだと思います。




ページ最終更新:2011/1

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