DRIFT HDで静止画を撮る





 空撮に使うカメラには、一眼レフ・レンズ交換式デジカメに魚眼レンズや超広角レンズをつけて使うのが、画質的にはベストの手段です。しかしどんなに軽く小さいものを選んでも限界があり、ハングの操縦性に影響を与えたり、カメラや取付器具の空気抵抗により飛行性能が悪化することが予想されます。クラッシュしたり、田んぼ沈などしようものなら、壊れてしまうこともあります。

 そこで必要となるのが、アクションカメラとかウェラブルカメラとかオンボードカメラなどと呼ばれる、アウトドアスポーツ用に設計された魚眼レンズや超広角レンズ装備の、小型軽量かつ防塵防滴・堅牢なデジタルカメラです。
 そのうちのひとつ、DRIFT HD(写真右)は、画角170度のセミフィッシュアイレンズでフルハイビジョン(1920*1080, 30fps)や720pで25〜60fpsの動画撮影をはじめ、9メガピクセルの静止画も撮影できる英国Drift Innovation社の最新モデルです。
 このカテゴリーにおいてGoProHD(写真左)ほどメジャーではありませんが、GoProHDにはない幾つかの特徴があります。
 両者の動画性能については、YouTubeなどの動画投稿サイトに比較動画が掲載されているので検討できます。しかし静止画については、実際にどの程度の写りをするのかがよくわかりません。そこで、ここでは静止画の撮影を中心に見ていくことにしましょう。
 ※2011年秋に新型のGoProHD 2が出ましたが、ここでは前モデルのGoProHDとの比較です。

○リモコン
 GoProHDで静止画を撮る場合、指でシャッターボタンを押す他には、一定間隔で撮影を繰り返すインターバル撮影を使うしかありませんでした。下手な鉄砲数撃ちゃ当たる式に撮るのはよいのですが、10分程度フライトするだけでパソコンに取り込んだ画像が右の画面みたいになって、この中から写真をセレクトする作業が大変です。1回や2回なら我慢もしますが、毎回のフライトでこれをやるのはかなり辛いものがあります。

 一方、DRIFT HDには無線式リモコンが付属していて、動画の撮影開始/終了はもちろん、静止画の撮影、インターバル撮影の開始/終了を遠隔操作することができます。赤外線ではなく無線式なので、屋外で太陽の影響を受けることもないしリモコンをカメラに向ける必要もありません。私にとってのDRIFT HDの一番の利点は、この無線式リモコンがあることです。リモコンさえあれば、余分な画像を量産することもありません。

 ただし、リモコンのレスポンスは良くありません。一眼レフやレンズ交換式デジカメのように、ボタンを押した瞬間のシャッターレリーズというわけにはいかず、押してからレリーズされるまで1秒位かかるし、連写もできません。
 そこで空撮に使う場合は、間隔最短(ファームウエア1.1.24では2秒)のインターバル撮影モードにして、リモコンで撮影開始/終了するようにした方が良いかと思います。

○モニター
 DRIFT HDには1.5インチの小型液晶カラーモニターがついていて、撮影範囲をプレビューできます。画面は小さいうえにレンズの向きに対して直角方向にモニターがついているため見づらいのは確かですが、無いよりはマシです。モニターのないGoProHDでは目測でアングルを決めていたため微妙な画面の傾きが気になる場合もありましたが、その悩みからも解放されます。
 また撮影した画像を再生することもできるし(早送りも可)、画像を選びながらの消去も可能です。さらにモニターに設定メニューが日本語で表示されるので、各種設定も説明書なしで直感でできます。まあ、考えてみればデジカメとしてはごく当たり前の機能ですが、暗号のような3ケタの白黒英数字しか表示できないGoProHDに比べれば、素晴らしい利点です。

○外観など
 見ての通りスマートな形状で、設置方法にもよりますがGoProHDよりも空力的・スタイル的に洗練された空撮ができそうです。
 記憶媒体はマイクロSDカードで32GBまで。リチウムイオンバッテリーの持続時間は連続動画撮影の場合は2時間程度です。付属のマウントキットはゴーグルやヘルメットに付けられる程度の簡単なもので、ハングの機体に取り付けるには取付器具の自作が必要になりそうです。
 なお本体はゴムでコーティングされたような手触りで、安っぽさは感じられません。ただし落下防止用の紐をつける場所がありませんので、タイラップ等で無理やりつけるか、取付器具側で落下防止対策を工夫する必要があります。


○写り比較
 このようにGoProHDにはない特徴をもつカメラですが、肝心の写りはどうなのでしょうか。
 DRIFT HDとGoProHDに加え、性能的には別格のレンズ交換式デジカメ、マイクロフォーサーズ規格のPanasonic GF1(カメラ)+LUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5(レンズ)を比較してみます。(2009年9月発売のGF1の上位後継機として2011年11月にGX1が発売されていますが、持ってないのでご了承ください)

 画素数撮像素子の大きさカメラの大きさ重さ
DRIFT HD 900万画素(3488*2616pixel) CMOS(大きさ不明) W37*H50*D105mm 120g
GoProHD 500万画素(2592*1944pixel) 1/2.5型 CMOS(5.7*4.3mm) W73*H67*D50mm 170g
GF1+G FISHEYE 8mm1200万画素(4000*3000pixel) 4/3型 Live MOS(17.3*13mm)  W119*H71*D88mm 450g

 DRIFT HDの撮像素子の大きさは公表されていませんが、Exif情報の焦点距離やレンズの大きさからみてGoProHDと同じか、それより小さいのではと想像しています。では実際の画像を比較してみましょう。
 GoProHDはピント固定(パンフォーカス)だしISO感度・シャッター速度・絞り・jpeg画質など一切選べません。DRIFT HDも同じですが、昼間/夜間撮影設定用と思われるINdoor/OUTdoorモード(ファームウェアVer1.1.24)がありますので、昼間用と思われるINdoorモードに設定しました。GF1はカメラにお任せの「風景モード」「JPEG最高画質」での撮影です。


Exif情報 DRIFT HD:ISO100 F2.8 1/420秒(4.45MB)  /  GoProHD:ISO100 F3.6 1/885秒(2.34MB)  /  GF1:ISO100 F7.1 1/320秒(6.46MB)

 一番上が全体図で、赤枠で囲んだ各部分の拡大画像を下に並べてあります。
 空撮に使う超広角デジカメという点から、解像感、つまりどれだけ細かい部分まで写っているか・ハッキリクッキリ写っているかが、ここでの評価ポイントです。

 容積・重さ・価格とも倍以上のGF1+G FISHEYE 8mmの解像感が飛びぬけているのは当たり前として、問題はDRIFT HDとGoProHDの差です。スペック的には最新かつ900万画素のDRIFT HDの方が良さそうですが、実際の写りは見ての通り、画面中央・端ともGoProHDの方がハッキリ写っています。特に画面左端の描写を見ると、DRIFT HDは全体的に像が流れてしまっています。他にも場所を変えながら何枚も比較してみましたが、この傾向は同様でした。このせいかDRIFT HDは、全体的に解像感がなくピントが甘い印象です。
 画面左端にある自動販売機をさらに拡大したのが下の画像です。



 DRIFT HDは価格がGoProHDを上回りますし、画素数も多いので期待していたのですが、静止画の解像感に関しては約2年前に登場したGoProHDに明らかに負けているという残念な結果になりました。ここでは比較してませんが、動画でも画面が揺れるいわゆる「コンニャク現象」が目立ちやすい気がするうえ、露出制御が敏感すぎて画面の明暗の変化が目立つこと、さらにGoProHD以上に音の「こもり」が気になることなど、期待が大きかっただけに個人的にはガッカリな低性能です。
 写りを追求するカメラではないという意見もあるかもしれませんが、私はそうは思いません。小型軽量であることや防水・耐衝撃性、リモコンやモニターなどの利便性はもちろん重要ですが、それと並んで写りの良さも、これからのアクションカメラ・オンボードカメラに要求される重要な要素だと思っています。


○取付方法
 さて、DRIFT HDの機体への取り付けについてです。GoProHDとは違い、簡単なマウント部品しか付属していません。ほとんどのケースで、取付器具の自作が必要になると思います。
 最も一般的と思われるキール後部に付ける場合、私は下のような器具を使ってます。
 基台となる部分は廃棄キールを使用、その端に6mmφの丸ゴムを半分に切って接着材スーパーXで接着。これにアングル材を3mmの皿ネジで固定、厚紙(キングファイル表紙)のマウント部を接着します。
 なおDRIFT HD側面についているモニターでアングルを確認するためにはカメラを横向きに固定する必要がありますが、しっかり固定しないとカメラが回転して下を向いてしまいます。
 私の場合、単に1/4インチネジで締めるだけでは固定力が足りなかったので、左の写真にあるようにマウント部に、円弧状に切り抜いたゴムをスーパーXで接着しています。このゴムはちょうどDRIFT HDマウント部の溝にはまる位置にあって、溝の中にあるギザギザに当たり、固定力を発揮するようになっています。





ページ最終更新:2012/1

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