Photo Sonnar ショーケース
☆Voigtlander Prominent II (Ultron 50mm F2付)
<紹介・使った印象>
 ドイツ フォクトレンダー社が1958年に発売した鏡玉交換のできる距離計連動式レンズシャッター機である。フォクトレンダー社の写真機は独特な機構を持った写真機が多いが、その極め付きのものの一つが、このプロミネントシリーズである。プロミネントと言えば、戦前には6×9判で「花魁」の愛称を持つものがあるが、この35ミリ判の同名機種もそれに負けないメカニズムに凝ったものである。特徴をあげようにも書き落としかねない位多いので、撮影していくプロセスの順に追っていきたい。
 まず、フィルム装填は普通に裏ぶたの上下にあるノッチを押せば開き、普通にフィルム装填ができる。そして空写ししてフィルムカウンターをセットすればいいのだが、実はこのカメラは1コマ撮るのに2回巻き上げが必要なのである。そしてファインダーを覗けば、ブライトフレームファインダーとなっている。4つのフレームが同時に出ているので、50ミリの場合は外から2つ目のフレームで構図を取ればよい。ブライトフレームは反射式で採光式ではないので、光の具合では見えにくくなるが、割と明るいファインダーである。
 ピント合わせは普通のカメラであれば巻き戻しノブの部分を回していけば、焦点調整ができる。この辺りからして、一般的なカメラの焦点調整と異なるので慣れが必要である。そしてシャッター速度を設定するのだが、普通の35ミリ用より大きめのシンクロコンパーシャッターを用いており、割とスムーズに速度設定ができる。
このシンクロコンパーシャッターはシャッターが二重となっており、本来のシャッターとレンズ交換に適応させるためか、遮光用のシャッターがついている。よくあるプロミネントの故障の一つに遮光シャッターが開きにくくなる現象が起こり、それで露出が狂ってしまうことがある。店主もこのトラブルには困ったことがある。絞りはレンズ先端寄りにあるので、それで調整を行う。1絞りごとに軽いクリックがあるのが特徴である。
そしてシャッターを押すのだが、やや指が短い店主にとっては、ファインダーの右側そばにあるシャッターボタンはちょっと押しにくく、独特な焦点調節方法も考えるとフォールディングの面から気をつけないと手ぶれを起こしやすい。どうしても慎重に撮影していく雰囲気になってしまうので、このカメラは即写性という面では弱いカメラであると言える。散歩の時に動かないモノを被写体に撮影するにはいいのかも知れない。
 そして、フィルム1本の撮影が終わって、巻き戻すが、この時巻き戻しノブはどこにあるか?で戸惑う。実は巻き戻しノブの上の小さな金属のボッチを外側に引けば、半円形の巻き戻しノブがピョンと跳ねだしてくるので、それで巻き戻しができる。丸い棒状ではない巻き戻しノブなのでちょっと戸惑うかもしれない。
こういった、独特な操作性を持つのが、プロミネントの特徴であり、「からくりフォクトレンダー」の極致とも言っていいだろう。
 レンズ交換もできるのだが、このレンズはシャッターにつけられているバヨネットマウントで交換はできるが、各交換レンズにはヘリコイドはない。どうやって距離計に連動させるのかというと、フォーカシングノブを使って標準レンズ用の焦点調整で前後する移動幅に合わせて焦点が合う調整ができるように設計されているのだ。この時代にそんな複雑な計算をしなければいけない場合どうやったのだろうかと思ってしまう。間違っていれば指摘して頂きたいが、今のズームレンズのように内部のレンズがそれぞれカムか何かで連動するのだろうか?
 これだけのからくりだらけで、操作性は独特すぎて使いにくいのだが、これで写りが悪かったら単なる駄作写真機にしか過ぎない。しかし、今回撮影に用いたウルトロンは、シャープさやコントラストには派手なきつさはないが、しっかり写り色合いはパステルトーンのような明るさがあるように思う。これだけの写りをするので、操作性の独特さはある程度は許してやらなければいけないのかな・・・と思ってしまう。
他の交換レンズについては、試写程度で作例にお出しできる程度に使いこなしはできていないが、複雑なメカニズムへの対応をしなければならない事情を考えると、あの時代によく作れたな・・・という印象を持っている。ふた昔のズームレンズ程度の解像力やコントラスト程度と思って頂いたら、腹も立たないだろう。
 使いにくいボディだが、写りのよいレンズという組み合わせのモノだが、ウルトロンやノクトンの写りをどれだけ好きになれるかが、この写真機を使いこなす努力への判断基準だと思う。からくりを楽しむならば、35ミリ判の写真機では、これはかなり個性派なので、面白がれる人は面白がれるかも知れない。
最近フォクトレンダーのブランドがコシナによって復活し、Lマウント用レンズなどが多く出たが、それらの製品の中にプロミネント用レンズをRFコンタックスやSマウントニコン用に変換するマウントアダプターがある。店主はRFコンタックス系は使い慣れているので、レンズだけ借用して、コンタックスで使ってみようとは思っている。(地方在住のため、実物を見たこともないし、取り寄せが面倒なので、まだ買ってない。)
 店主はプロミネントの皮ケースを二つ持っている。一つは普通の大きさのモノでこれと言って特徴はないが、作られた時代としては、かなり良質の厚手の皮を使ったものである。もう一つはかなり角張っていて下側には金属の箱がついている、カメラを覆う側の内側は銀色の金属(樹脂かも?)が入っていて、下に垂れ下がった状態でロックできる機能の付いた物々しいケースである。フラッシュのシンクロコードがケース下側から出ていたりして、何かよくわからないが、今回のレポートのために、改めてよく調べると、ケース下側には電池(規格不明)が入るようになっており、銀色部分の裏側には電球のソケット的なモノがついていた。これはフラッシュガン内蔵ケースということになるらしい。「からくりフォクトレンダー」は、ケースにもからくりが入っていたということで、終わりにしたい。
 
作例写真
DATA 絞り F8、シャッター 1/125秒、フィルム Fuji ISO 100ネガ 
2001年6月末頃に散歩していたら、塀の上の植木鉢からペチュニアが下を向いていた。最短撮影距離の1mでフレーミングして撮影。ペチュニアの花の発色も独特で、ピントの合っているところは鮮鋭だが、バックがスーッとぼけているのがよくわかる。
DATA  絞り F5.6、シャッター 1/125秒、フィルム Fuji ISO100ネガ 
上の写真を撮った同じ時期に、金網から潜り出て咲いているガクアジサイを撮影。花びらの淡いピンク、葉の緑がみずみずしく発色しているのがわかるだろうか?