Photo Sonnar ショーケース
☆Konica Electron Hexanon 45mm F1.8付
<紹介・使った印象>
 現存する日本最古の光学機器・写真機メーカーであるコニカ(旧小西六写真工業が1969年12月に発売した、レンズシャッター式35ミリ距離計連動機である。コニカは、Auto Sなど自動露出機構がついている機種は、それ以前からも出ていたが、シャッター速度優先の自動露出が多く、絞り優先の自動露出は、このエレクトロンぐらいで珍しい。そして、このエレクトロンは専用フラッシュを使うと、自動制御で適正露出を得ることができる世界最初の機構を持ったものであった。しかし現在となっては、専用ストロボ(カコマチック5)とセットで完全動作品として出てくることはないので、そういう機構を持っていたという程度かも知れない。店主は1999年の夏頃に中古カメラ専門店のジャンク箱にあったが何度か行くうちに気になってきたので、1000円で買ってきて、4LR44をHM−Nに変換する電池アダプタを別で購入し、ファインダ清掃、距離計の再調整で使えるようにした。 

 このエレクトロンは電子式シャッターを使用しており、HM-N電池を使用する。現在ではこの電池は販売されていないので、あちこちで販売されている4LR44への電池アダプタを使用する必要がある。このエレクトロンは電池がなくてもシャッターは切れるがかなりの高速で、お天気マークで露出を決めた場合には、かなり絞りは浅めになる。しかし、このエレクトロンのお天気マークは、フィルム感度ダイヤルと連動しており、フィルム感度を変更すれば、それに合わせた絞りをお天気マークで選ぶことができる。この辺りは、お天気マークがフィルム感度の変化には連動しないヤシカエレクトロシリーズとの大きな違いである。これは当時ヤシカがエレクトロシリーズを発売し、好調であったので、コニカが対抗作として出して来たものと思われる。 

  エレクトロンの特徴としては、巻き上げレバーが本体上部に埋め込まれた形になっており、そのため軍艦部はアクセサリシュー、巻き戻しクランク、シャッターボタンと、フラッシュキューブ使用時のソケット(使わない時にはねじ込み式の蓋で隠せる)があり、軍艦部背面はファインダ窓とバッテリーチェックボタン、フィルムカウンタ窓という、割とフラットなレイアウトである。割と大柄の角張ったボディだが、角が割と大きいアールを取っているので握りやすい。シャッターレリーズはストロークは深いが意外と軽い。しかしよくある「シャッター半押しでAEロック」という機能はこのカメラにはないので、露出補正はフィルム感度ダイヤルを回して補正するしかない。絞り優先の自動露出はコパルの2枚羽電子シャッターを採用しているので8秒〜1/250秒までである。最高速が1/250秒なので、絞りを開き気味でバックをぼかすといった表現をする時には低感度フィルムを使用した方がいいだろう。フィルム感度はISO400まで対応しているが、絞りはF22まであるので、高感度フィルムを使った時には思い切って絞込み気味で撮影するといいと思う。シャッターは割と速い速度の場合にはパシッという普通の音だが、低速になると閉めようとした時に独特の「キューッ」という音がする。そんなに大きな音ではないのだが、なじんでくると面白い音である。 
ファインダは、距離計連動式でブライトフレームがついており、パララックスも近接時の画像の大きさまで自動補正してくれる。ブライトフレームも見やすく、ファインダ像はやや青味がかっているが、二重像が黄色で像のズレがわかりやすく、フォーカシングもレバーがついていて調節もやりやすい。 

 鏡玉はヘキサノンの45mm F1.8で当時としては大口径である。今のレンズシャッター機のレベルで言えばかなりの大口径であるが、当時としては割とよく見られた口径のものである。構成は手元にないが、恐らく4群6枚のガウス型だろう。薄青いコーティングも施されているが、やはり経年劣化のせいか逆光では、フレアがかなり出る。真逆光を避けて、できるだけ順光で撮るのを心がけていれば、無難に写真は撮れる。一度ポジを使って撮ったが、カラーバランスで特に変な偏りもなくナチュラルである。写り具合はどちらかというとコントラストやシャープさというより、ピントが合っているところからのなだらかなボケ方やトーンの豊かさで写真を見せるようなところがある。「ヘキサノンの伝統」で描写の繊細さやトーンの豊かさという話をよく聞くが、高級機ではないレンズシャッター機にも、この考え方が生きているということは、あてはまると言える。ただ、絞りは2枚絞りで、F8辺りまで鳥が羽根を広げたような形になるのでバックをぼかして絞りの形が出る場合には、ボケが汚くなってしまうかも知れない。店主個人の印象だが、晴れた日の日なたでは、ハイライトがやや飛ぶ傾向があり、絞り込むせいか描写が固くなってしまうが、日蔭などで撮影した場合には、F5.6辺りに絞りを開けた時にはかなりトーンを拾って、繊細な写りかたをする。 

  店主の個体だけの問題だが、露出レベルが半絞りアンダーの露出が出るので、ネガカラーでは半絞りオーバー目の感度設定で撮影していることが多い。電子式写真機で電子素子の劣化があるので、個体差があるかも知れないが、このエレクトロンの場合は、ICやLSI、フレキシブル基板ではなく、ディスクリートの素子、リード線の配線が行われているので、電子式の割りには直せる確率が高いのではないだろうか?ただ、受光素子はもうないだろうから、それがだめになったら、修理不能となるだろう。ただ、機械式で単速でシャッターは切れるので、お天気マークを参考にするれば一応写真は撮れる。 
あるクラシックカメラ専門店の売り文句に「バースイヤーラ○カ」というのがあったが、エレクトロンは発売年月で言えば「バースイヤー&マンスコニカ」なのである。自分が生まれ育った頃撮ってもらったと思われる年代の写真機を手にして感慨を感じる方もいるが、店主にとってはエレクトロンがあてはまるような気がする。自分が生まれた頃発売された写真機を調べてみて、それを手にして「同い年」感覚で写真を撮る楽しみ方も、ありかな・・・と思う。

 
作例写真
Data 絞り F5.6 (自動露出) Fuji Superia 100
2002年3月中旬、近くの空き地に咲いていた菜の花を撮影。
右側の花にピントを合わせて左側の花をぼかしてみた。画像ではわかりにくいが、右側の花にはしっかりとピントが合っているが、左側の花がきれいにぼけているのがわかるだろうか?
Data 絞り F5.6 (自動露出) Konica Centuria 400
日蔭に咲いている小さな花に最短撮影距離にて撮影。描写の線が細くて固くなく、ピントが合っているところから、背景に至るまでなだらかにぼけていて、見た目の被写界深度が深めに見える写りをする。
店主にとっては、これについているヘキサノンが本領を発揮するのは、どちらかというと、ピーカンのところよりもやや日がかげったところでの撮影の場であると思う。