Photo Sonnar ショーケース
☆Contarex I (前期型)Planar 50mm F2付
<紹介・使った印象>
 世界最大の光学機器メーカーであったZeiss Ikon社の旗艦モデルとして開発され、1950年代終わりから1972年のZeiss Ikon社写真機生産からの撤退まで生産されたフォーカルプレーンシャッター式35ミリ一眼レフがContarexシリーズである。 このContarexは、戦前からあったContax一眼レフ化構想が、第二次世界大戦後Zeiss Ikon社が東西に分割されてしまい、東側ではContax S・D・Fと現れ後でPentaconと名前が変わったが、西側ではContarexとして実現したものである。当写真館には初代機 Contarex I(前期型)がある。I型の特徴は、内蔵の外光式露出計が絞りやシャッターに連動する機構を世界で初めて搭載したことと、この外光式セレン露出計の窓がペンタプリズムの前に丸く突き出している外観である。この外見から、ブルズアイ(牛の眼)とかサイクロプス(一つ眼巨人)という渾名を持つ。店主は、ネットでのZeiss系カメラ友達の影響で、Contarexに興味を持ちはじめ、2001年11月にEbayでアメリカの売り手から送料込みで450ドル弱で皮ケース付き動作品を入手した。思ったよりも奇麗な状態で驚いた。 
 
 このContarex I前期型は、後期型との違いはスクリーンが中央部のスプリットイメージとマイクロプリズム以外は素通しであることと、裏蓋部分にデータバックのためのスリットがないことである。ファインダが素通しというのは奇異に感じる人が多いかも知れないが、ライカフレックスも初代機はそうであったので、当時の考え方としては、スプリットイメージを距離計の感覚で使い、素通しのファインダで明るさを確保するという意味合いがあったのだと思われる。ボディは大きく重いし、シャッターボタンは巻き上げレバーの真ん中にありフィルムカウンタごと押す形になるので、慣れないと手ぶれの元になりやすい。そしてシャッターを切った後はミラーはクイックリターンだが、絞りは絞られたままだが、フィルム巻き上げを行えば、絞りは開放となる半自動絞りなので、故障ではない。セレンの外光式露出計の精度は、ちゃんと手入れして動いていれば、ネガフィルムでは差し支えない程度の精度を持っているが、低照度には弱いので、屋内撮影の場合には単体露出計を用意した方がよい。 

 この本体の標準レンズはPlanar50mmF2(白鏡筒)がついている。発売当初は艶消しメッキの白鏡筒であったが、外光式露出計への影響が懸念されたせいか、後には黒鏡筒に変わっている。白鏡筒と黒鏡筒との外観以外の大きな違いは最近接距離であり、白鏡筒は約25センチまで寄ることができ、そして近接撮影には露出補正が必要となる(TTL測光では不要)が、ヘリコイド機構と連動して絞りを開いて補正する機能を持っている。実際に撮影してみると、逆光ではかすかなフレアが出る場合もあるが、かなり鮮鋭な描写で、解像力もかなり高く、カラーバランスも変な癖は見当たらない。色のりの良さはなかなかなもので、特に赤色などはかなり鮮やかに出るので、接写能力の高さを含めて花や植物、街の風景をのんびりと撮影するのには好適な組み合わせである。ただ、ボディが重いのとピント合わせとシャッターの押しにくさは慣れるしかないのだが、よく言われるシャッターを切った時のタイムラグは、そんなにひどくはない。最近のAF一眼レフに比べたら、測距や露出制御のタイムラグがないせいか、同じくらいではないかと思う。 そんなにタイムラグが気になるのであったら、ペリクルミラーの機械式シャッター一眼レフか連動式距離計機でないと、タイムラグのない写真が撮れなくなってしまうのではないか・・・と、店主は思ってしまうのである。 

Contarex用標準レンズには、55mmF1.4のPlanarもあるが、シャープさでいえばF2、トーンやボケ味からいえばF1.4がよいと言われている。Contarex使いの方々で、シャープさよりもトーンの豊かさやボケ味の良さを重視する方は、35mm F2・55mm F1.4・85mm F2・135mm F2.8の組み合わせで、シャープさと解像力の高さを重視する方は、35mm F4・50mm F2・135mm F4の組み合わせをされる場合が多いようである。捜索中鏡玉も含めてどちらが店主の好みであるかは・・・言うまでもないことである。店主はかなり前に人物ポートレートを多く撮っていたが、最近は身の回りの自然や街の風景を撮ることが多い。自然や風景をシャープに拾い取ることができるので、期待を裏切らない。持ち歩いて撮影している時には、最近のAF一眼レフを持つよりも周囲の人たちに変な警戒心を与えないようである。「古い写真機で花や古い建物を撮っている写真好きの人」と思われているようだ。 

 このContarexは、Zeiss系を好む方でも余り持たれていない方で、実用で使っている方は、更に限られてくると思われる。東側ZeissのレンズはM42マウントが多く、ペンタックスなどのマウントアダプタで使いまわしが効くので使われる場合があるが、西側ZeissのContarexレンズはマウントアダプタが存在しないために、なかなか使われる機会がないように思われる。Contarex本体は使うのにはかなり慣れが必要である。かなりの「じゃじゃ馬」写真機だが、使いうこなして「つぼにはまった」時の写りは、「麻薬的」な魅力を持っている。 Leitz系がお好きな方は余り好きになれない写りだろうが、Zeiss系が好きな方には、いかにもZeissらしい機構や鏡玉の魔力があるように思う。1950年代以降の日本製写真機の大躍進でやられてしまったが、西側Zeissの「意地の固まり」とも言えるContarexは、好き嫌いは分かれるが、Zeissらしい写真機と言えるものである。ただ、マニュアルフォーカス機を使っている人が、Contarex I型を使い始めるのであれば、後期型から始めるのが違和感が少なくていいと思う。

 
作例写真
Data 絞り F5.6 シャッター 1/60秒 (マニュアル露出) Fuji Superia 100

ある家に飼われているシャム猫とトラ猫の混血猫。かなり大きな猫であるが、このレンズの接写能力をフルに生かして近寄って撮影した。
眼球にピントを合わせているが、被写界深度の合っている範囲では、猫の体毛一本一本をくっきり解像していることがわかる。

Data 絞り F5.6 シャッター 1/125秒 (マニュアル露出) Fuji Superia100

2001年12月下旬の昼下がりに咲いていた椿の花。元のプリントでは、もっと赤色が派手に出ていたのだが、スキャナの性能的限界なのか?割と普通な形に出た。花から背景にかけてきれいにぼけているのがわかるだろうか?