「じゃあ、行こうか。タケル」 「ん?」 額に手を当てて溜め息をついていたタケルに妙に弾んだ感じのエクシーの声が 聞こえた。 「行くって、どこに?」 「秋葉原に決まってるでしょ、メモリを探すのよ」 「メモリったって」 「仲魔増やさなくちゃいけないんだから当然でしょ、さあさあ、グズグズしない」 「お、おい、そう押すなって」 小さな妖精に背中を押されてタケルは歩き出した。 「というわけで、しばらくみんなをお願いね」 エクシーは、主の方を向くとウインクしながら言った。 「ああ、それはいいが………こいつ等はどうすんじゃい」 主は、ダブルジャックを指差して聞いた。 「………あんた達、ここでおとなしくしてるのよ」 ややドスのきいた声でエクシーが言うと、ダブルジャックはコクコクとうなずいた。 「じゃっ、行きましょ♪」 「お、おお」 「あたちも行くぅ」 「あんたはお留守番」 「やだ、やだ、あたちも行くぅ」 「もう、しょうがないわねぇ。その変わり、おとなしくしてるのよ」 「うん」 満面に笑顔を浮かべたピクシーは、自分の指定席とばかりにタケルの頭の上に うつ伏せになる。 「やれやれ、じゃあ、行ってくるね。ほらぁ、さっさと行く」 「いたたたた、おいっ、そこは痛いって」 エクシーは、他の悪魔達にそう言うと、タケルの髪を引っ張る様にして邪教の館を 出て行った。 残された悪魔達は誰と無く顔を見合わせ苦笑を浮かべた。 唯一クーフーリンだけが、出ていく三人を見つめ「頼みます」と呟いた。 「どうだ?」 「駄目ね、ここにあるのは使えないタイプばっかりだわ」 「そうか………」 「今の世界じゃ、ジャンクしか無いからねぇ」 「ダイヤモンドワールドが残ってれば、店長がなんとかしてくれるかもしれない のになぁ」 「無いものは無いんだから仕方ないでしょ、さっ、次に行くわよ」 タケルとエクシーは、あれから秋葉原を歩き続けていた。 秋葉原のほとんどの店は、食料や武器、防具、薬などの店だったが、それでも 過去の名残ともいうべきジャンク屋の類が残っていた。 それを一軒一軒チェックしながら回っているのだが、なかなか手頃なものが 見つからなかった。 「いっそ、アームターミナルに変えちゃおうか?」 「う〜ん、これ結構愛着あるんだけど」 「まあ、確かにかさばらないというのは便利だけどね」 「………そうだ、本体のメモリを増設するってのは、どうかな?」 「駄目、駄目、それすでに増設済みだもの」 「えっ?そうなのか?」 「あんたねぇ、自分のシステムくらいチェックしときなさいよ」 「でも、確かこれ2MBタイプのはずだけど」 「ダイヤモンドワールドに預けたでしょ?あの時に増設されてたのよ」 「そうだったのか………」 「それにね、腰の増設パックのメモリもPCMCIAタイプだから、通常のメモリ は使えないのよ」 「それは知ってるが………これって何MBなんだ?」 「240MB」 「うおっ、ちょっと待て、何でそんな容量が」 「わかんない、どうも一般製品のカードじゃないみたいね」 「まあ、あそこも怪しい店だったからなぁ」 ダイヤモンドワールドを思い出し、タケルが笑った。 「確かに」 彼の肩に座ったエクシーも笑みを浮かべる。 ピクシーは、3軒目を回るくらいで飽きたのか?今はタケルのポケットの中で お昼寝中だ。 「おっ、旦那、旦那じゃないですか!!」