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コラム「たかが競馬というけれど」連載第26回〜第30回


連載第30回・2強対決新たな展開へ
(2001年6月28日)
 6月24日に行われた宝塚記念(G1)。昨年のこのレースから 5度連続で惜敗していたメイショウドトウがついにテイエムオペラオーに先着して 勝利。6度目のG1挑戦で初めての戴冠。

 メイショウドトウが初めて重賞に出走したのが4歳になってすぐ、 2000年1月の日経新春杯(G2)。マーベラスタイマーの末脚に屈しての2着だったが、 好位から抜け出す正攻法で、いずれは重賞を勝てる器だと思った。すると次走中京記念(G3)で あっさりと重賞制覇。その後も順調に走り、金鯱賞(G2)で重賞2勝目を飾ったあと迎えた 初めてのG1、宝塚記念。6番人気の評価だったが、このレースで現役最強馬の称号を勝ち取った テイエムオペラオーにあわやの2着。確実に力をつけていることを示し、 そして長い道のりが始まる。

 その秋はオールカマー(G2)から始動。この年から○外馬に部分的に開放された天皇賞(秋)(G1) にはここを勝たなければ出られないという重圧もなんのその、好位からまったく危なげなく抜け出して完勝。 そして2度目のG1も2着。続くジャパンC(G1)ではファンタスティックライトなど 強豪外国馬に先着もやはり2着。ハナ差。順調に有馬記念(G1)へと王道のローテーションを進むもまた2着。 前年暮れにオープン昇格したばかりの馬が10戦して【4510】とすばらしい成績で2000年を終えた。 5つのG1を含む8戦8勝の年度代表馬テイエムオペラオーの好敵手であると同時に、 脇役に甘んじたままだった。

 明けて5歳となった2001年。やはり勝たなければ天皇賞(春)(G1)に出られなかった日経賞(G2) で貫禄を感じさせる勝利。しかし本番ではやはり2着。適距離ではないレースでよく詰め寄ったが、 壁は厚かった。

 そして迎えた6度目のG1、宝塚記念。過去最高体重だった前走から6キロ絞って目一杯の勝負。 やや遅いペースで、3角では12頭がだんご状態。好位に取り付いていたメイショウドトウは 包まれて動けないテイエムオペラオーを尻目に4角手前からするすると上がっていく。 直線入口で早くも先頭に並びかける。逃げたホットシークレットが意外に粘るが テイエムオペラオー以外は敵ではない。その最強馬は馬群にタイミングを殺されて、 直線に入ってからのスパート。猛然と追い込むも時すでに遅し。1馬身1/4の差を残してゴール。

 メイショウドトウは5度の2着を経て悲願のG1制覇。「メイショウ」の冠馬としても 初のG1勝利となった。安田康彦騎手の「もうやめてもいい」いうほどの喜びようも印象的だった。

 しかし、この勝利はこれからの「2強時代」のはじまりではないだろうか。4歳馬が今ひとつだらしない 現状を見ると、この2頭での決着はまだまだ続くような気がする。そして、この宝塚記念ではじめて着順が逆転、 脇役だったメイショウドトウが主役の座を奪ったことで、秋以降、この2頭の対決がさらに盛り上がる。 2000年の宝塚記念ではじまったテイエムオペラオーメイショウドトウの 1、2着が2001年の宝塚記念で逆転、そして新たな展開に入っていく、というときれいすぎるが、 今回のレースで秋以降の2頭のさらなる名勝負への期待が高まった。

連載第29回・2000年宝塚記念グラスワンダー
(2001年6月23日)
 6月24日は宝塚記念(G1)。 最も印象深いレースの1つとなった昨年のレースを思い出した。

 その年の天皇賞(春)(G1)でG1ホースの仲間入りをしたテイエムオペラオーに とっては、G1を2連勝で、歴史的快進撃の足がかりとなったレース。 これが初のG1出走だったメイショウドトウにとっては、このあと丸1年続くことになる テイエムオペラオーに惜敗2着の最初のレース。今度こそ。 そしてなにより、稀代のグランプリホースグラスワンダーの最後になってしまったレース。

 グラスワンダーは、1998年有馬記念(G1)、1999年宝塚記念、 1999年有馬記念とグランプリ3連勝。しかし2000年に入ってからは 日経賞(G2)6着、京王杯SC(G2)9着と精彩を欠いていた。

 1番人気は1歳下のテイエムオペラオー。ファンは天皇賞馬に世代交代を期待。 しかし私はグラスワンダーの単勝馬券を握っていた。 1998年有馬記念のときも、故障明け2走で凡走しながら見事な勝利。 今度も走ってくれるはず、他のレースはともかくグランプリといえばグラスワンダー という時代を築いてくれたのだ、と信じていた。

 雨の中、レースがスタート。サイレントハンターが引っ張る平均ペース。 グラスワンダーテイエムオペラオーよりも後ろにつけて追走。 3角あたりから馬群が動き出すが、グラスワンダーは動かない。直線、 テイエムオペラオーが力強く加速するが、グラスワンダーは動かない。 そして画面から消える。直線半ばで先頭にたったメイショウドトウテイエムオペラオーがクビ差捕らえてゴール。グラスワンダーは 遅れること0秒9、6着でゴール。

 和田騎手が誇らしげに勝ち名乗りを上げるテイエムオペラオーのあとで 画面に飛び込んできたのは、立ち尽くすグラスワンダーと下馬した蛯名騎手、 降り注ぐ初夏の雨。世代交代を象徴するかのようなシーン。馬運車に乗せられる敗者。 その後の検査で骨折と判明。故障とはいえ負けは負け。思えば故障に泣かされた馬だった。

 2000年宝塚記念レース後、雨の中で立ち尽くすグラスワンダーの映像は 忘れられない。毎年宝塚記念のたびに思い出すだろう。

連載第28回・少頭数の夏のグランプリ
(2001年6月14日)
 6月24日は上半期G1のラストを飾る夏のグランプリ宝塚記念。 その最終登録馬が発表になっているが、その数13頭。トゥザヴィクトリーは 帝王賞(G1)への出走をにおわせているので、出走予定は12頭。少ない。

 最近の宝塚記念の出走頭数を見ると、昨年が11頭、それからさかのぼって12、13、12、13 と推移、1995年、あのライスシャワーの悲劇の年が17頭となっている。 別にライスシャワーの悲劇が出走頭数の低下を招いたなどと言うつもりは毛頭ないが、 出走頭数が毎年12頭や13頭というのは、古馬G1の中で、天皇賞(春)と並んで少ない。 天皇賞(春)の場合は3200mという距離のために出走障壁が高いというのはなんとなく わからないでもないが、この宝塚記念の出走頭数の少なさは不可解。

 しかも、この宝塚記念の出走馬選定にはファン投票というものがある。 ファン投票ベスト10で出走予定の馬は1位テイエムオペラオー、3位メイショウドトウ、 4位ステイゴールド、5位エアシャカール、9位アドマイヤボスの5頭。 わずか半数である。いまやファン投票は出走馬を決めるということに関してはまったく機能していない。

 なぜ宝塚記念の出走頭数が少なくなってしまったのだろう。前述同様過去を振り返ってみると、 1996年以降、それまでの6月上旬開催から7月上旬開催に移行している。これも一因かもしれない。 夏の暑い時期や梅雨のじめじめした時期は調整が難しい。そこで無理をさせるよりも休ませて 秋に備えたほうがよいという判断はありえる気がする。あるいは、秋戦線との比較で言えば、 夏のローカル開催で力をつけた馬が秋のG1の舞台に登りつめるということはあっても、 冬から春に力をつけた馬が宝塚記念にという例は少ない気がする。 成績を積み重ねる機会が比較的少ないというのもわからなくはない。 単純に3歳馬が出走しにくいというのもあるだろう。そういう秋との比較ならば前述の天皇賞(春) にもあてはまるので、ある程度の説得力は持つ。

 いろいろと理由は考えられるし、実はただの偶然なのかもしれないが、 今年も宝塚記念はフルゲートには遠い頭数で争われることになる。その分まぎれが少なくなって 力どおりの結果になる可能性が高くなるという言い方もできるが、グランプリをうたっていて、 ファン投票もやっているのだから、多くの役者がそろったほうが盛り上がる。 来年以降、宝塚記念の出走頭数が増えることを願いつつ、今年も記憶に残る名勝負を期待する。

連載第27回・好きな馬を買う「思い入れ」
(2001年6月8日)
 6月3日に行われた安田記念は大波乱の決着。 9番人気のブラックホークが大外一気の追い込みで1年3ヶ月ぶりの勝利を飾れば、 2着にはG1初挑戦で15番人気のブレイクタイムが先行粘りこみ。 馬連は120,600円のG1史上2番目の高配当となった。

 さて、この馬券はどうやったら取れるのだろう。たぶん競馬新聞のように理屈をつけた ◎○▲では取れないだろう。こういう馬券を取れるのは、理屈ではなく、「応援」もっと言えば 「思い入れ」な気がする。そもそもこのレースは発売締め切りまで1番人気がころころ変わる 大混戦だった。馬連オッズも10倍以下のものはなかった。どの馬にもチャンスがあったわけである。 そういうときこそ「思い入れ」。

 ブラックホークは一昨年のスプリンターズSを勝ったときは「マイルよりもスプリント」 ということで参戦しての勝利、その後もスプリント路線で活躍し、 今回は距離に不安があっての9番人気だった。しかし現実にG1を勝っているのだから力はある。 「もう一度どこかで勝つはずだ」という「思い入れ」をもってすれば買える。

 ブレイクタイムはG1初挑戦。しかしレース前の関係者のコメントはいずれも 強気なものばかり。昨年夏に葵S(オープン)をハイペースで逃げ切ったときに 将来の出世を期待する声があった。その後は特に大きなレースへの出走もなく勝ち鞍すらなかった のだが、その素質への強い「思い入れ」をずっと持っていた人は買える。

 そうはいってもこの2頭ともに「思い入れ」を持っている人は相当少ないだろうから、 この馬券を取るためには「思い入れ」を基にした総流し。総流しできるほどの「思い入れ」。 競馬新聞のように理路整然としたような予想もいいが、競馬は理屈どおりには行かない。 好きな馬を買うという「思い入れ」。馬だけでなく騎手や調教師や種牡馬などへの「思い入れ」 もあるかもしれない。そして回収できることが前提だが、総流しもできる「思い入れ」。 そんなスタンスでの予想も、時に大的中を生む。

連載第26回・ダービー終わって日が暮れて
(2001年5月30日)
 5月27日の第68回ダービー(G1)は 1番人気ジャングルポケットが後方から鮮やかに差しきって戴冠。 前回このコラムで夏のローカル2歳重賞を勝った馬は大レースに勝っていないという 話を紹介したが、そんなうがった見方をあざ笑う完勝だった。

 今年の3歳牡馬は、昨年暮れの朝日杯3歳S(G1)2着馬タガノテイオーにはじまって、 無敗でスプリングS(G2)を勝ったアグネスゴールド、さらには無敗で皐月賞(G1)を 勝って3冠馬の期待のかかったアグネスタキオンと、超有力馬が相次いでリタイア。 そんな中、ダービーを見据えて馬に無理をさせないローテーションを取ったという ジャングルポケットの勝利と、中2週で関東に遠征したクロフネの失速は 実に象徴的だった。だからといってクロフネのローテーションが誤りだった と言っているわけでは決してなく、相対的な調整の難しさを物語った結果だということ。 今後、NHKマイルC(G1)→ダービー連勝という馬が出るかもしれず、 そこは馬の力と同時に厩舎の力が問われるところとなる。

 無事これ名馬とよく言うが、ジャングルポケットの能力だけでなく、 好騎乗の角田騎手だけでなく、大一番に万全のコンディションを整えることのできた 「ジャングルポケットチーム」全員で勝ち取った栄冠である。

 サラブレッドは消耗品だと形容されることがある。それだけレースとは馬にとって過酷なものだと いうことだろうか。おそらく、外から見たことしかない者にとっては到底計り知れない負担が かかるのだろう。ダービーで最高のパフォーマンスを見せたジャングルポケットが 秋以降も無事にレースに出走できることを願う。

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