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コラム「たかが競馬というけれど」連載第21回〜第25回


連載第25回・夏の2歳重賞馬ジャングルポケットのダービー
(2001年5月24日)
 5月27日は第68回ダービー(G1)。マル外開放元年に ふさわしく外国産馬のクロフネが1番人気確実。迎え撃つ内国産馬の筆頭は 皐月賞(G1)で3着に惜敗したジャングルポケット

 ジャングルポケットは9月に札幌でデビュー。新馬戦、札幌3歳S(G3)と連勝して、 当時から非凡なものを見せていた。ところが、ここで不吉なデータにぶち当たる。 夏のローカル2歳重賞を勝った馬で3歳以降に大レースを勝った馬はほとんどいない。 1997年の函館3歳S(G3)勝ち馬アグネスワールドが古馬になってから 短距離路線で活躍、国際G1を勝っているが、クラシックレースではその成績は散々だ。

 函館、小倉、新潟、札幌の各2歳重賞を勝った馬の桜花賞(G1)、オークス(G1)、 皐月賞、ダービーの成績を調べると、のべ23回の出走があるが、3着が2回あるのみで、 しかも2桁着順が15回。2回の3着というのは2000年の新潟3歳S(G3)の 勝ち馬ダイワルージュの桜花賞と、ジャングルポケットの皐月賞。

 ジャングルポケットは札幌3歳S勝ち後もラジオたんぱ杯3歳S(G3)2着、 共同通信杯(G3)1着と他の夏の2歳重賞馬とは一線を画す成績を収めている。 とはいえ、同様に活躍したダイワルージュもオークスで13着に沈んでおり、 やはりデータからは安心できない。

 ダービー当日はおそらく2番人気になるであろうジャングルポケットが 強力外国産馬クロフネを負かしてダービー馬になるには、 不吉なデータも破らなければならない。

連載第24回・テイエムオーシャンとキョウエイマーチ
(2001年5月18日)
 5月20日はオークス(G1)。下馬評では、阪神3歳牝馬S(G1)、 桜花賞(G1)を圧倒的なパフォーマンスで制したテイエムオーシャンが人気。 そしてこの馬を見ていて思い出すのが、同じダンシングブレーブ産駒、同じようなレース運びをした、 1997年の桜花賞馬キョウエイマーチである。

 キョウエイマーチは5戦4勝で桜花賞に臨み、魔の桜花賞ペースと呼ばれるハイペースを 自分で作り出す逃げを打ち、1番人気メジロドーベルの追撃をかわして戴冠。 そして距離不安を持ったまま初の関東遠征となったオークスでは11着に沈むも、 秋にはローズS(G2)を勝って2000mへの適応を見せ、秋華賞(G1)でも果敢に先行、 メジロドーベルには屈したものの2着。牝馬戦線を見事に盛り上げた。

 そしてこの馬のベストレースに近いのが続いて出走したマイルCS(G1)。 後に稀代の名馬に成長するサイレンススズカが出遅れるのを尻目にここでも先行。 ここを足がかりに競馬史に残る活躍をしたタイキシャトルの圧勝ではあったが、 粘り腰を発揮して2着に残る。その後スプリンターズS(G1)では11着に敗れるも、 3歳のこの年、【5202】というすばらしい成績を収める。

 結局この年がキョウエイマーチが最も好成績を残した年ではあったが、 その後も短距離重賞に欠かせない存在となる。5歳時には阪急杯(G3)、同期が引退していく中の 6歳時には金杯(G3)と勝ち鞍もあげ、6歳春に惜しまれながら引退、繁殖入りした。

 ダンシングブレーブ産駒が2400mをこなせるかどうかということと同義ではあるが、 スーパースターにはなれなかったキョウエイマーチの夢を、同産駒のテイエムオーシャンは はたせるかどうか。今年のオークスさらには今後のテイエムオーシャンを、 そんなちょっとひねった見方で見てみてもおもしろい。

連載第23回・兵庫に見つけた強い馬
(2001年5月11日)
 5月2日、たまたまテレビで兵庫競馬園田開催を観戦する機会があった。 その日はちょうどダートグレードG3に格付けされている兵庫チャンピオンシップ。 3歳馬の中央地方交流戦である。出走メンバーは、 皐月賞(G1)7着のスキャンボーイや3勝をあげているマイネルエーレら中央4頭、 笠松・名古屋で重賞3勝のレタセモアら他地方から3頭、迎え撃つ兵庫勢は4頭で、 その大将格が前走園田ダービーまで5連勝中で【9201】の実績を誇るロードバクシン

 戦前の人気はやはり中央勢。1番人気はマイネルエーレ、2番人気はスキャンボーイ。 地元の期待を乗せてロードバクシンが3番人気。 中央でオープンに毛がはえた程度の馬とはいえ、地方競馬と比べれば格上ということである。 テレビ番組の司会者や解説者も中央勢は強いけどなんとか地元のロードバクシンに がんばってもらいたいという雰囲気だった。

 いざレース。中央マイネルエーレが出ムチを入れて飛ばす。直線200m程度の 中央では考えられない小回り競馬場では先行力が比較的要求される。そのままマイネルエーレが ひっぱって、3コーナーあたりからレースは動く。好位から中央スキャンボーイ、 そして地元期待のロードバクシンがその後方から進出開始。直線入口では マイネルエーレが先頭、外からスキャンボーイが襲いかかる。 やはり中央勢で決まりかと思いきや、大外からロードバクシンが強襲。 あっという間に2頭を差しきってゴールと同時に小牧太騎手のガッツポーズ。

 この強烈な追い込み脚にはしびれた。地の利があるとはいえ、小回りの競馬場で後方から 大外ぶん回しの差しきりは尋常ではない。しかも格上の中央勢が相手である。

 ロードバクシンはこれで6連勝。園田ダービー、そして兵庫チャンピオンシップにも勝ち、 兵庫競馬の歴史に名を残す馬となることは間違いない。 そうはいっても中央の壁は厚く、将来中央の重賞でうんぬんというのは、過去の例からいっても厳しいと思う。 だからこそ、この馬の、おそらく中央ではお目にかかれない強い勝ちっぷりを見られて、感慨深かった。

連載第22回・「ツキ」のないセイウンスカイ復帰
(2001年4月22日)
 長らく休んでいたセイウンスカイが天皇賞(春)(G1)で 復帰する。1999年の天皇賞(秋)(G1)以来、実に18ヶ月ぶりのレースとなる。

 セイウンスカイといえば1998年の菊花賞(G1)でのレコード勝ちが印象深い。 皐月賞(G1)を持ち前のスピードで勝ったあと、ダービー(G1)ではゴール前で失速の4着。 しかし、秋緒戦の京都大賞典(G2)で並居る古馬の追撃を封じて、 ダービー後にささやかれた距離不安説を一蹴。そして臨んだ菊花賞は、果敢に逃げて主導権を握ると、 最初と最後に2度スパートする「2段ロケット」走法で、 ダービー馬スペシャルウィークを3馬身半後ろに見てレコード。 1週前に非業の死を遂げたサイレンススズカを彷彿させる快速ぶりだった。

 次走有馬記念(G1)では道悪にスピードを殺されて4着敗退。思えばこのあたりから、 3冠に足りなかったもの、ダービー馬に必要とされる「ツキ」のなさを感じさせる。

 翌年は日経賞(G2)を楽勝のあと、天皇賞(春)へ。ここでは同型のサンデーセイラの 執拗なマークにあってスムーズなレース運びができず、3着。 逃げ馬の宿命ではあるが、能力を十分に発揮するだけの「ツキ」がなかった。 そして秋、さらに「ツキ」のなさがセイウンスカイを襲う。逃げ馬には致命的な、ゲート難。 中団から4角で先頭に進出する競馬でなんとか勝った札幌記念(G2)でその兆候が見られ、 続く天皇賞(秋)では1番人気に支持されたが、ゲート入りを極端に嫌って、 案の定後方からの競馬。にわか仕込みの差し競馬では超一流馬には歯が立たず、5着敗退。 スタート遅延のペナルティでジャパンC(G1)が出走停止となってしまう。

 そして最も「ツイてなかった」できごと、左前脚故障。何度か復帰のうわさがありながら、 1年半、レースから遠ざかることとなった。

 ようやく復帰の天皇賞(春)。これまでの休み明けは【3000】だが 当然そんなレベルではなく、休んでいる間に、最強馬テイエムオペラオー、 その好敵手メイショウドトウという後輩たちが台頭。 長期休養明けでいきなりのG1ということもあって、戦況は厳しい。 ここで好成績を収めるには、「ツキ」が必要である。 「はやい馬の勝つ皐月賞」「強い馬の勝つ菊花賞」を勝ち、 「ツキのある馬の勝つダービー」を勝てずに3冠を逃したセイウンスカイ。 生まれ持ったもののように見える「ツキ」のなさを克服してこそ、真の復活である。

連載第21回・春天戦線異常ありやなしや
(2001年4月3日)
 4月1日の大阪杯(G2)で、前年5つのG1を含む8戦無敗で 最強馬の名をほしいままにしたテイエムオペラオーが、単勝120円の1番人気を裏切る まさかの敗戦。休み明けにもかかわらずマイナス4キロと状態面で今ひとつだった。

 これで天皇賞(春)(G1)をうらなう一連の重賞戦線が終わったわけだが、 阪神大賞典(G2)でナリタトップロードが復活のレコード勝ち、 日経賞(G2)ではメイショウドトウが貫禄の競り勝ちで外国産馬の天皇賞への出走権獲得と、 テイエムオペラオーのライバルと目される同世代馬が活躍。 京都記念(G2)および件の大阪杯は伏兵の一発が決まったが、 前者で2着のアグネスフライト、後者で2着のエアシャカールと 昨年クラシックを沸かした4歳馬2頭も意地を発揮。一転して混戦の様相。

 そうはいってもテイエムオペラオーが3度連続の天皇賞馬になる可能性が最も高いだろう。 大阪杯の敗因は体調面に求められるし、早めに仕掛けて踏ん張りきれなかった負け方は ステイヤーのそれ。昨年の今ごろは、ステイヤー血統ではないから天皇賞(春)は無理という 声もあったが、一蹴。年齢を重ねてズブくなった分、距離延長は好材料だろう。1番人気になるはず。 ただ、一度負けたことでいくらか人気は落ちる。そうなれば馬券的楽しみは増すし、 穴党にはひょっとしての余地が広がる。テイエムオペラオーに死角ありと見るか、 一度の敗戦に惑わされないか。4月29日のあなたの馬券はどちらですか?

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