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連載第70回・ダートの功績馬ウイングアロー引退
(2002年2月27日) |
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2月17日フェブラリーSで9着に敗れたウイングアローはその日に引退式を行い、
4年間の現役生活を終えた。ジャパンカップダートの初代勝ち馬になるなど
30戦11勝2着7回(内地方13戦6勝2着3回)の活躍だった。
1998年1月のデビュー戦は3着。特に注目されることもないままダート路線を進んだが、 初のオープン勝ちとなった菖蒲Sからスーパーダートダービーまで5連勝。 ダービーグランプリを惜しくも2着で3歳ダート3冠は逃したが、 いまひとつ注目を浴びないダート界の救世主登場の予感だった。 しかし翌年は脚部の不安などで満足にレースを使えず、大崩れはしないものの5戦未勝利。 2000年のフェブラリーSでペリエ騎手を鞍上にド追い込み勝利で復活。 地方を転戦後、記念すべき第1回ジャパンカップダートをこれまたすばらしい末脚で制して この年のJRA賞最優秀ダート馬に選ばれる。このJRA賞、 1998年は地方での3歳戦のみの活躍だったためか過半数の票を 集められず該当馬なしとなり、その雪辱もなった。 2001年のフェブラリーSはこれまたものすごい末脚で追い込んだが、ノボトゥルー を捕らえることができず2着。ジャパンカップダートではクロフネの 驚異的なパフォーマンスには屈したもののきっちり2着。 年に2回の中央ダートG1を4戦連続連対だったが、ラストランは馬群に沈んでしまった。 フェブラリーSのG1昇格、地方交流重賞増設、ジャパンカップダート新設、 ドバイワールドカップへの注目など、この5年くらいでダート路線が見る見る活性化してきたが、 この時代に、中央G1で活躍し、地方にも積極的に参戦したウイングアローの功績は大きい。 そして2002年フェブラリーSは、ウイングアロー引退で新ヒーローの アグネスデジタルが快勝、中央ダート黎明期から次の時代への転換を象徴するレースとなった。 |
連載第69回・まだまだ健在ナリタトップロード
(2002年2月22日) |
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2月16日の京都記念で、ナリタトップロードが別定60キロの酷量を
跳ね返して11ヶ月ぶりの勝利で6勝目。世代交代に待ったをかけた。
4歳馬のボーンキングとミスキャストがともにAJCCの好走で人気を集め、 ナリタトップロードは3番人気。サクラナミキオーが後続を離して逃げる展開で、 ナリタトップロードは2〜3番手を進む。直線ではマチカネキンノホシ との競り合いになったが、底力と息の長い末脚ではナリタトップロードのほうが一枚上。 最後は叩き合いになったが、安心して見ていられる頭差だった。 少頭数で、前半比較的遅くて3コーナーからぐっとペースが上がるという、 ナリタトップロードのしぶとさが最も発揮できる展開になっての勝利だったが、 そのしぶとさが健在だったことが大きな収穫。3歳時にアドマイヤベガ、 テイエムオペラオーと3冠を分けあい、 4歳以降は何度戦ってもテイエムオペラオーに勝てず、 2番手の座もメイショウドトウに奪われていたが、そのライバルたちが相次いで引退。 その途端に、まるで足かせをはずされたかのような、持ち味を最大限に生かした勝利はなんだか象徴的。 そのライバルたちの引退で明らかに層が薄くなった中長距離戦線。今回の勝利で、 6歳にしてもう一花、と思わされてしまった。ジャングルポケット、 マンハッタンカフェと今回よりも強い相手がいるが、天皇賞(春)、 得意の京都競馬場で今回のような展開になれば、十分可能性はある。 |
連載第68回・アグネスデジタルがフェブラリーS大圧勝
(2002年2月20日) |
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2月17日のフェブラリーSはアグネスデジタルが圧勝、
昨年の南部杯から数えてG1レース4連勝を達成した。
レースはノボジャックが比較的速いペースで引っ張る展開。 アグネスデジタルは好発からじっくり乗って道中は中団待機。 直線を向いてトゥザヴィクトリーが満を持して先頭に立って粘りこみを図るが、 外に持ち出したアグネスデジタルがぐいぐい伸びる。 天皇賞(秋)を勝ったときと同じような末脚で全く危なげなし。 1番人気ながら単勝350円と意外と人気が割れたが、終わってみれば大圧勝、 レースレコードのおまけつき。 地方も中央も海外も芝もダートも1600mも2000mも勝った。 新しいタイプのスターホース誕生である。クロフネがいなくなってしまったことを 忘れさせるパフォーマンスで、次走ドバイワールドカップでの期待も膨らむ。 2着はアグネスデジタルに引っ張られる形で末脚を伸ばしたトーシンブリザードで、 さすが8連勝の南関東最強馬。道中手ごたえが悪かったのに直線よく伸びた。 岩手のトーホウエンペラーも苦手といわれる左回りでよく粘っての5着は光った。 こちらも地方年度代表馬の面目躍如。この2頭はこれからも期待大。 昨年の勝ち馬ノボトゥルーは太かったという敗因があるが、 3着確保がやっとで丸1年勝ち鞍なし。4着トゥザヴィクトリーは次走ドバイで引退だし、 6着以下は何も得るものなし。中央ではアグネスデジタルの天下はしばらく続きそうだ。 |
連載第67回・フェブラリーSは見どころ満載
(2002年2月15日) |
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2月17日に行われる今年最初のG1、フェブラリーSにはなんと10頭のG1馬が出走予定。
列挙すると、アグネスデジタル、イーグルカフェ、ウイングアロー、
ゴールドティアラ、トゥザヴィクトリー、トーシンブリザード、
トーホウエンペラー、ノボジャック、ノボトゥルー、リージェントブラフ。
ここにクロフネがいないのが残念だが、それはそれで見どころ満載。
アグネスデジタルは、南部杯、天皇賞(秋)、香港カップとG1を3連勝中。 全く異なる舞台で好走を続けていて、今回またダートに戻ってきた。 このコラムで何度も絶賛しているが、これを勝ったらほんとにすごい。 ドバイワールドカップへのたたき台という話もあるが、 過去に例を見ない芝ダート兼用馬の走りにはとにかく注目。 そして地方の強豪、トーシンブリザードとトーホウエンペラー。 無敗で南関東3冠を達成したトーシンブリザードは故障で秋を棒にふったが、 暮れの東京大賞典で復帰、3着。その東京大賞典を勝ったトーホウエンペラー は昨年10戦5勝2着3回で地方競馬年度代表馬。 地方競馬を代表する2頭が中央のG1でどんなパフォーマンスを見せるか。 トゥザヴィクトリーは昨年、出走レースはすべてG1で3、2、1、14、3着 と自身過去最高の成績。大器がようやく開花。今回も超一流牡馬に混じってどこまで食い込めるか。 ウイングアローは前走10着大敗で人気を落としそうだが、一昨年1着、昨年2着。 ジャパンカップダートでも一昨年1着、昨年2着。このレース3年連続連対、 G1の5戦連続連対なるかどうか。 連続といえばペリエ騎手には外国人騎手初の同一G1レース3連覇がかかっている。 こういった、馬券を少し離れた視点で見どころを探すのもまた楽しい。 |
連載第66回・個性派ビハインドザマスク引退
(2002年2月8日) |
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芝1600mのレコードホルダー、ビハインドザマスクが1月27日の
京都牝馬S勝利を最後に引退した。通算成績23戦10勝、なんと掲示板をはずしたのが4回のみ。
G2を1つとG3を2つの勲章を持って、繁殖入りした。
デビューが3歳夏と遅く、当時は特に注目されることはなかったが、確実に勝ち上がって 約1年後の9戦目で準オープン勝利、そこから初重賞のセントウルSまで4連勝。 その内容は後方待機から直線ド追い込み。馬群をこじ開けてのレコード勝ちで短距離界の新星として 脚光を浴びる。そのままスプリンターズSに参戦したが、内枠から馬群に包まれてしまい、 不完全燃焼のまま初めて掲示板をはずして11着と大きく負けてしまった。 休養後、高松宮記念、マイラーズCと続けて2桁着順と調子を崩してしまったが、 3走目の都大路Sで直線ラチ沿い一気の差しで1600m1分32秒1の驚異のレコード勝ち。 しかし安田記念は5着、1走はさんで2度目のスプリンターズSではまたも 内枠から馬群が開かず6着。G1にはなかなか手が届かなかった。 重賞2勝目となったスワンSで切れ味がまだ衰えていないところを見せて、 5度目のG1出走となったマイルCSでも、きっちり末脚は伸ばしたものの先行有利の流れで、 大混戦の4着争いを制するのがやっと。惜しいレースだった。 引退レースとなった京都牝馬Sでは別定で58キロの酷量と重馬場ということで人気を下げたが、 直線ではそんな条件とは思えない末脚。ぐいぐいと力強く伸びて重賞3勝目。有終の美。 ビハインドザマスクの戦績は追い込み馬の宿命そのもの。内をついてはまれば圧勝、 しかし道が開かずに脚を余すこともしばしば。外に持ち出してみて届かなかったり、 ペースが遅くて届かなかったり。しかし、ほとんどのレースできっちり末脚を繰り出していて、 脚を余すことはあっても、末脚不発というレースは少なかった。 あれだけ高速決着のレースで上位にからみながら、大きな故障をしなかったのもすばらしい。 残念ながらG1を勝つことはできなかったが、好位差しの馬が多い短距離路線の中で、 追い込み一手の個性派として、記憶に残る名牝。産駒が出てきたらきっと思い出すだろう。 |
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