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連載第50回・エリザベス女王杯の意義
(2001年11月10日) |
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11月11日のエリザベス女王杯(G1)は3歳馬のトップレベル3頭、
テイエムオーシャン、ローズバド、レディパステルが揃って出走、
条件が3歳以上に変わってから今年で6回目だが、これだけの3歳馬が揃うのは初めてで、
古馬との対決に大いに盛り上がっている。
1995年までは3歳3冠の3戦目というレースだったエリザベス女王杯だが、 1996年に新設された秋華賞(G1)にその役割を譲って、 古馬牝馬のためのG1として生まれ変わった。しかし、 古馬だけではなく3歳も出走可能とし、3歳も交えた牝馬最強決定戦という意味付けも持っていて、 むしろこちらのほうがファンの興味はわくと思う。昨年、 秋華賞から中3週と番組が改編されて3歳馬が出走しやすくなり、今年、このメンバーとなった。 例年、古馬牝馬は強い馬が2、3頭はいるが、層は薄い。 今年はさらにそれが当てはまり、近走高いレベルの成績なのはトゥザヴィクトリーくらい。 それでも7ヵ月半の休み明け。3歳馬3頭が出走していなかったら盛り上がりに欠けていただろう。 その3歳馬の中でも、秋華賞にぶっつけで出走、はやくからエリザベス女王杯への出走を 明言していたテイエムオーシャンの存在は大きい。 3歳馬初の1番人気もありえるし、勝つ可能性も十分ある。 トップクラスの3歳馬が、秋華賞のでがらしではなく、本気で出走してきてこそ、 エリザベス女王杯はそのレース意義を最大に発揮する。 来年以降もこの3頭に加えて、強い3歳馬が揃うことを期待する。 |
連載第49回・秋後半は3歳馬に注目
(2001年11月5日) |
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秋競馬も後半。例年、牡牝の3歳3冠レースが終わったころから、3歳馬が
古馬との対戦で活躍するようになる。今年もまたしかり。11月3日と4日に
行われた3歳以上の平地のオープン戦は、特に際立った。
土曜の東京メイン、ブラジルC(オープン)には3歳馬が3頭出走して、 ノボサンシャイン、ニホンピロサート、オリエンタルシチーの順に 1、2、3着。同日京都ではカシオペアS(オープン)に2頭の3歳馬が出走、 エイシンスペンサーが勝って、メイショウラムセスが2着。 日曜のアルゼンチン共和国杯(G2)の3歳馬2頭は、 ハッピールック2着、シングンオペラ3着。まとめると【2320】という成績で、 3歳馬だけの組み合わせでワイドを買えば全部的中の計算。 3レースともハンデ戦という注釈はつくが、これはすごい。 そして、11月11日はエリザベス女王杯(G1)が行われる。過去の結果を見ると、 3歳以上になった1996年から昨年までの5回で、のべ29頭の3歳馬が出走しているが、 1999年のフサイチエアデールの2着が最高。 3着も1996年のシーズグレイスの1回だけで、あとは5着以下に沈んでいる。 ただし、その29頭の中にはその年の3冠レースを勝った馬は3頭しか含まれていない。 しかし今年は違う。秋華賞(G1)の上位3頭がそろって出走予定。 言わずと知れた3頭、桜花賞(G1)と秋華賞を勝ったテイエムオーシャン、 オークス(G1)を勝ったレディパステル、 オークスと秋華賞ともに2着のローズバド。 3歳の中では力が抜けているこの3頭が出てくるということで、 初めての3歳勝ち馬、もっと言えば上位独占の期待まである。 迎え撃つ古馬勢が例年になく層が薄いので、3歳馬上位独占の可能性は決して低くない。 一応、3歳3強と迎え撃つトゥザヴィクトリーという構図ではあるが、 そのトゥザヴィクトリーは5歳になった今でも無冠の大器のまま。 むしろ3歳3頭の再対決のほうが興味がわく。 |
連載第48回・芝ダート兼用の超一流馬
(2001年11月1日) |
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10月27日と28日の東京競馬を芝ダート兼用馬が席巻した。土曜メイン
武蔵野S(G3)ではクロフネが2着に9馬身差をつけてレコード勝ち。
日曜は天皇賞・秋(G1)でアグネスデジタルが王者テイエムオペラオーを
差し切って快勝。
この連載の第16回や第44回でふれたが、条件クラスならまだしも、G1レベルでは、 餅は餅屋、ダートはダート馬というのが最近の傾向だった。そんな中、 アグネスデジタルが南部杯(G1)を勝って史上初の芝ダートでのG1制覇 (ホクトベガの時代は地方にG1という格付けがなかった) で痛く感動、そして次は芝のレースを使うということで、ひょっとしての期待をもっていたが、 本当に勝ってしまった。これで、芝→ダート→芝とG1勝利。 しかも当初は得意距離で比較的メンバが薄いマイルCS(G1) に出走がささやかれていたのに、初距離の天皇賞・秋(G1)で テイエムオペラオー、メイショウドトウといった中距離の強豪撃破。 超一流の芝ダート兼用馬誕生である。 土曜日のクロフネはそのアグネスデジタルのあおりを受けて天皇賞・秋から 武蔵野Sにまわったが、ダートに強いフレンチデピュティの血を受けて、初めてのダート戦で大圧勝。 これまた芝ダート兼用の期待をもたせるパフォーマンスだった。 今後のローテーションはジャパンカップ(G1)もしくはマイルCS(G1)から 東京大賞典(G1)、さらにはフェブラリーS(G1)と、芝ダートでG1に出走予定。 距離や芝ダートで路線が明確に整備され、それぞれにスペシャリストがいる というのが最近の競馬。どんな距離でもどんなコースでも強い馬というのには お目にかかれなくなってきていたが、芝ダート兼用の強い馬が2頭同じ時期に出現。 そして両馬とも距離の融通が広い。今後の2頭のローテーションに注目、そして活躍に期待。 |
連載第47回・ステイヤーが勝った菊花賞
(2001年10月22日) |
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第62回菊花賞(G1)は6番人気マンハッタンカフェが勝利、
11番人気マイネルデスポットが逃げ粘って、馬連46210円の大波乱。
スローペースで完全に単騎逃げになったマイネルデスポットの
2着はいわゆる「長距離の人気薄の逃げ馬」だが、勝ったマンハッタンカフェは、
蛯名騎手の内をつく好騎乗があったにせよ、1番人気のダービー馬ジャングルポケット、
重賞2つを含む4連勝中の外国産馬エアエミネムと同じような位置取りからの差し脚で、
単なる展開のあやとは片付けられない。
マンハッタンカフェの菊花賞までの戦績を見ると、7戦3勝で重賞は弥生賞(G2)、 セントライト記念(G2)で4着。平凡な「格下馬」である。 しかし、その3勝の距離が1800m、2600m、2600mというところに注目。 またローテーション的には、クラシック戦線に乗れなかった春はあっさり休養し、 8月に戦列復帰して2600mを連勝。長距離で着実に力を発揮した。 マンハッタンカフェは紛れもなく「ステイヤー」である。 この結果は、中距離偏重になりつつある競馬界に一石を投じるものではなかったか。 近年の菊花賞はエアシャカール、セイウンスカイ、マチカネフクキタルなど、 「長距離をこなせた中距離馬」が勝っている。 (ナリタトップロードは自ら勝負を仕掛けてペースを握り、ステイヤー性を十分発揮した。) マンハッタンカフェは、中距離馬が脚光を浴びる影でステイヤーとして着実に力をつけた。 そしてクラシックの舞台に立ち、中距離馬をねじ伏せた。中距離馬の一角エアエミネム陣営が 距離を理由に直前まで出否を迷っていたということに対しても、象徴的である。 これでマンハッタンカフェが一躍スターダムにのし上がれるかというのは別問題だが、 今回の結果は、来年以降の菊花賞に少なからず影響を与えると思う。 馬券を買う側には「ステイヤー探し」という要素を、 出走させる側には春に実績をあげられなかったステイヤーを菊花賞に出走させることへの モチベーションを。 |
連載第46回・ダイタクリーヴァ復帰
(2001年10月20日) |
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富士S(G3)でダイタクリーヴァが復帰する。今年2月の中山記念(G2)
後に骨折が判明、春シーズンを棒に振ってしまったが、競走馬にとって最も大切
といわれる4歳秋にはなんとか間に合った。
ダイタクリーヴァは昨年、重賞連勝で臨んだ皐月賞(G1)でエアシャカールの 2着。ダービー(G1)は12着に沈んだがその後はマイル路線に進み、 富士S3着、マイルCS(G1)ではあわやの2着に健闘、以降の活躍に注目が集まった。 そして休まずに鳴尾記念(G2)、京都金杯(G3)と連勝、期待通りの活躍で、 戦国時代の続くマイル路線に新星、という格好となった矢先のアクシデントだった。 ダイタクリーヴァのいない間、安田記念(G1)では人気の落ちた ブラックホークが勝って伏兵ブレイクタイムが2着。 しかしそのブラックホークは引退。昨年のマイルCS勝ち馬アグネスデジタルは 南部杯(G1)を勝って連覇に挑戦かと思いきや残念ながらというか 天皇賞・秋(G1)に出走とのこと。マイルCS(G1)は再び王者不在。 マイル路線で夏に台頭してきたのは2歳チャンプ復活のエイシンプレストン、 せん馬のマグナーテン。未完の大器クリスザブレイヴも戻ってきた。 さらに、アグネスデジタルのあおりを受けた格好のクロフネがマイルCSに 参戦予定。スプリンターズS(G1)を快勝したトロットスターも出てきそうだし、 ジョウテンブレーヴも前走毎日王冠(G2)でなんとか格好はつけた。 牝馬のスティンガー、ビハインドザマスクあたりも出てくるだろう。 いつにもまして混戦になりそうなマイルCSで主役を張るためにも、 ダイタクリーヴァには富士Sでいい形で復帰を飾ってほしい。注目。 |
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